Windows 11 Pro Education搭載パソコンによるDXで教育現場はどう変わる?

Windows 11 Pro Educationは、デジタル技術を用いた学習が推進される現代の教育環境に合わせて構築されたOSです。学習や校務で活躍するデバイスのデザイン性の高さやセキュリティの強さ、多様な機能などが、教員の働き方や教え方、児童や学生の学び方に対する革新を促し、教員の業務効率化や、児童や生徒のデジタル社会で生きるうえで必要なスキルの習得・育成につながります。

ここでは、Windows 11 Pro Educationを搭載したパソコンによるDXが推進されることで、教育現場にどのような変化が表れるかをご紹介します。

教員の役割がファシリテーターへ移行

教育現場でデジタル技術が活用され、教育のDX化が進むことにより、教員の役割も変化しています。これまでの教育方法では、教員は主に児童や生徒に一方的に語りかけて知識を教える役割を持っていたのに対し、DXの推進に伴いファシリテーターとしての役割が求められるようになりました。

教育現場におけるファシリテーターでは、児童や生徒の発言を促し、それぞれの意見をまとめます。具体的には、事前に設計したシナリオに沿って児童や生徒に質問しながら発言しやすい環境をつくり、子どもたちの意見を聞きます。その後、挙がった意見と議論の内容をまとめながら論点を絞り、子どもたちの話し合いを客観的な立場から円滑に進め、議論のゴールへ促します。

視覚から得られる情報の増加による学習効果の向上

パソコンやタブレットを用いた学習や、デジタル教科書などを推進することで、児童や生徒は黒板や紙の教科書のみでの学習時よりも、多くの情報を視覚から得やすくなります。

デジタル教科書は、動画やアニメーションを使用した解説や、実際に自分で図に触れながら理解を促す工夫などが施されており、視覚から得られる情報が紙の教科書よりも増える点が特長です。また、児童や生徒は重要な部分にマーカーを引いたり、メモを書いたりすることもできますが、書き間違えた箇所を簡単に修正・消去できるため、後から見直した際もわかりやすく教科書を読める点も学習効果の向上に寄与しています。

Windows 11 Pro Educationでは、見やすい表示色に画面を切り替えるカラーフィルターや、デジタル教科書の文字を読み上げたり、行間を拡大したりできるイマーシブ・リーダー(読み取り補助機能)などの機能が含まれるため、あらゆる子どもたちの学習をサポートできます。

学校における働き方改革の推進

文部科学省では、長時間労働が課題視されている教員の働く環境を改善するための、学校における働き方改革を推進しています。「全国の学校における働き方改革事例集」では、Microsoft Teamsによるお知らせの投稿、Microsoft Formsによるアンケート調査など、多くの学校でのICT(Information and Communication Technology、情報通信技術)を用いた働き方改革の事例が紹介されています。

東京都教育委員会でも、2024年3月に「学校における働き方改革の推進に向けた実行プログラム」を策定し、教員の負担軽減や業務効率化を図るための取り組みとして、DXの推進を挙げています。この具体的な取り組み例の中ではTeamsなどを活用した資料共有・配布物の電子配信なども記載されています

AIを活用した業務効率化

Windows 11 Pro Educationでは、AIであるCopilot in Windowsを用いたPDFの要約や、授業で使用する画像の生成、パソコンのウインドウの整理などの業務効率化が期待できます。

さらに、Microsoft 365 Educationをあわせて利用することで、Teams上で活用できるAI学習支援機能であるLearning Acceleratorsにより、児童や生徒の音読・発表のリアルタイムでのコーチングや、心の健康状態のチェックなどが行えます。Learning Acceleratorsでは、これらの学習データや子どもたちの心の状態のデータなどを収集し、分析できる機能も含まれているため、今後の指導方針の策定といった校務も効率化できます。

Windowsパソコンを学校で使用するメリット

Windowsは大学生や社会人になっても使用する機会が多いOSのため、小中学校のうちからMicrosoft Word、ExcelといったさまざまなOfficeツールに慣れておくことで、将来レポートの作成や仕事をする際もスムーズに進められるでしょう。

ディーアールエス株式会社の「企業のWindows 11利用状況は?2023年度版実態調査レポート」によると、勤務先で利用しているOS(複数回答)では、Windows 11の使用が74.0%、Windows 10の使用が70.8%、macOSの使用が16.0%との結果が出ており、Windows OSを使用している企業の割合が大多数であることがわかります。

このように、多くの企業ではWindowsのパソコンを使用しているため、早い段階からWindowsパソコンの操作や、各種ツールの使い方の習得、ショートカットキーの暗記などを行っておくとよいでしょう。

Windows 11 Pro Educationの特長

教育機関向けのOSとして用意されたWindows 11 Pro Educationは、そのほかのOSとどのような点が異なるのでしょうか。ここでは、Windows 11 Pro Educationの特長をご紹介します。

高度なセキュリティ

Windows 11 Pro Educationでは、高度なセキュリティ機能により、児童や生徒、教員の個人情報の漏えいやパソコンのウイルス感染といったリスクから教育現場の安全を守ります。

例えば、Windows 11 Pro Educationで使用できるMicrosoft Entra ID(旧Azure AD)と条件つきアクセス機能により、ユーザーIDの管理や機密情報へのアクセスを強固に保護できるようになります。ほかにも、Microsoft Threat Protectionでは、第三者からのサイバー攻撃といった脅威からパソコンを守り、脅威へのスムーズな対処が可能です。

このような、Microsoft独自の多様なセキュリティ機能を活用することで、学校全体のセキュリティレベルを高め、児童や生徒、教員が安心してパソコンを使用できる教育環境を構築できます。

Windows 10からの大幅なスペックの向上

Windows 11 Pro Education搭載パソコンでは、最新モデルのCPUやコネクトスタンバイ、新型UFSストレージを備えることで、Windowsや標準ブラウザであるMicrosoft Edgeをより素早く起動し、より長時間使用できるようスペックが向上しています。

Windows 11 Pro Educationは、前身であるWindows 10と比較して、Windowsの起動が87%、Edgeの起動が80%高速化されました。このようにOSやブラウザの立ち上げ時間が短縮されることで、授業や個人学習の際も待機時間を減らし、スムーズに学習を進められるでしょう。また、Webサイトの閲覧時のバッテリー寿命は40%延びており、電源につながずともさまざまな場所にパソコンを持ち運んで学習することができるようになりました。

参照:高等学校生徒・先生用Windowsパソコン(Microsoft)

使いやすいデザイン

Windows 11 Pro Educationは、学習に困難のある児童や生徒でも十分な学習効果が得られるよう、視覚や聴覚、読み書きなどのあらゆる場面におけるアクセシビリティ機能を強化しています。

例えば、先述したカラーフィルターでは、色覚障害を持つ子どもでも細かな色の違いを認識できるよう、画面の色味を調整できます。また、読字を支援する拡大鏡や、文章作成・板書を効率化させる音声読み上げツール、ユニバーサルデザインに対応した教科書体フォントの標準搭載といった工夫を多様に施しており、子どもたちの学習環境をよりよいものへとサポートします。

心身の健康維持、学習意欲の向上

Windows 11 Pro Educationでは学習面のサポート以外にも、児童や生徒の心の健康を維持し、学習意欲の向上を図る精神的なサポートにも力を入れています。

例えば、Edgeに適用できるWebコンテンツフィルタリングでは、教員がブロックしたカテゴリに含まれるWebコンテンツに児童や生徒がアクセスできなくなります。これにより、児童や生徒がインターネットを介した不審なWebサイトへのアクセスやセキュリティリスクに遭う可能性を低減したり、児童や生徒が必要な情報を探し出しやすくなるようコントロールしたりできます。

ほかにも、先述したLearning Acceleratorsを利用した場合は、Microsoft Reflect(リフレクト)機能により、児童や生徒の気持ちを簡単なアンケートでデータ収集でき、フィーリングモンスターというキャラクターを通じて、子どもたちからのSOSを素早く確認できます。

マイクロソフトが推奨する生徒用パソコン

ここでは、Microsoftが推奨する生徒用パソコンのスペックと、おすすめ製品をご紹介します。

推奨スペック

Microsoftが推奨する生徒用パソコンのスペックは、次のとおりです。以下はあくまでMicrosoftでの推奨スペックのため、文部科学省から提示されている最低スペック基準とは異なります。

「GIGAスクール構想の実現 学習者用コンピュータ最低スペック基準」に記載されているスペックは遵守する必要があるため、必ずあわせてご確認ください。


【Microsoftが推奨する生徒用パソコンのスペック】

 OS   Windows 11 Pro Education 
 CPU   Intel® Celeron® N4500 同等以上 
 メモリ   4~8GB 
 ストレージ(SSD)   64~128GB 
 バッテリー   8時間以上稼働 
 無線   Wi-Fi 6(無線LAN) 
 画面サイズ   9~14インチ 
 そのほかの仕様  ・重さ1.5kg未満
・アウトカメラ / インカメラ対応
・デタッチャブル型 または コンバーチブル型 
・USB Type-C(充電ポート対応)
・キーボード(Bluetooth接続でないもの)

生徒用のパソコンでは、児童や生徒が持ち運びやすいサイズや重さを考慮し、かつ落下などの衝撃にも耐えられる堅牢性の高い製品がおすすめです。また、授業中にパソコンをキーボードだけでなくタッチやペンで操作できる製品や、ディスプレイとキーボードを取り外せたり、ディスプレイを回転させたりできる柔軟性の高い製品を選ぶとよいでしょう。

なお、Windows 11 Pro Education搭載の生徒用パソコンはGIGA Basic パソコンとGIGA Advanced パソコンの2種類に分けられます。

GIGA Basic パソコンとGIGA Advanced パソコンの違い

GIGA Basic パソコンは、クラウド型での利用を想定したパソコンです。そのため、メモリやストレージの容量を抑えて導入することが可能ですが、安定して大人数の児童や生徒がインターネットに接続できる強固なネットワーク環境を構築しておく必要があります。

GIGA Advanced パソコンは、アプリケーションを直接パソコンにインストールして使用するオンプレミス型での利用を想定したパソコンです。そのため、インターネットへ接続していないオフライン環境でも学習できる点が特長ですが、複数のアプリを立ち上げての作業や、多くのアプリのインストールによってメモリやストレージの消費が激しくなるため、GIGA Basic パソコンよりも容量の大きなメモリやストレージを備えています。

GIGA Basic パソコンのおすすめ製品

GIGA Basic パソコンのおすすめ製品は、次のとおりです。

ASUS BR1104FGA

ASUS BR1104FGAは、ブルーライトの放出が少なく目に優しいディスプレイや、405ccの液体をこぼしても耐えられる防滴キーボードが特長のパソコンです。また、15秒の充電で最大45分間使用できる高性能のスタイラスペンを同梱しており、ペンはパソコンに直接収納できる点も便利です。

Lenovo 300w Yoga Gen4

Lenovo 300w Yoga Gen 4は、耐久性に優れたディスプレイが特長のパソコンです。ゴリラガラスを採用しており、76mの高さからの落下や、最大360ccの水にも耐えられます。画面を360度回転できるコンバーチブル型のため、通常のパソコン使用以外にも、読書や教科書への書き込みなどさまざまな用途で活躍します。

dynabook K70

dynabook K70は、丸みを帯びたデザインが特徴的なパソコンです。これはパソコンの外周をTPU(熱可塑性ポリウレタン)で覆っていることによるもので、落下などからの衝撃による故障を防ぎます。TPUは滑りにくい素材のため、手にもなじみやすくつかみやすいことから、誤ってパソコンを落としてしまうといった事故も防ぎやすくなります。

TravelMate Spin B3

TravelMate Spin B3は、インカメラ・アウトカメラの両方を備えたパソコンです。2つのカメラを活用することで、Teamsを使用したオンライン授業や、実験風景の撮影など、学習のさまざまな場面で役立ちます。ディスプレイにはLenovo 300w Yoga Gen4と同じゴリラガラスを使用しているため、屋外でもパソコンの落下などを気にせず学習できます。

GIGA Advanced パソコンのおすすめ製品

GIGA Advanced パソコンのおすすめ製品は、次のとおりです。

Latitude 3340

Latitude 3340は、キーボードのタッチやクリックパッドの感触にこだわり、快適な使用を実現したパソコンです。キーボードやクリックパッドが優れていることで、児童や生徒の文字入力や操作スピードも向上し、パソコンでの学習の効率化が期待できます。オプションとして指紋認証リーダーやシャーシ侵入検知などの強力なセキュリティ機能も使用できるため、児童や生徒が安全に学習できる環境の構築もしやすいでしょう。

HP PRO x360 FORTIS G11

HP PRO x360 FORTIS G11は、実際に教員や児童、生徒、学校管理者などの教育現場からの声をもとに設計されたパソコンです。バッテリーの強さが特長で、90分間の充電で90%の回復、約10時間15分の長時間稼働、約1,000回の充放電サイクルなど高耐久かつ急速充電を実現しています。

Surface Go 4

Surface Go 4は、キーボード接続時の重さが約770gと軽量な設計が特長のパソコンです。画面が取り外し可能なデタッチャブル型で、本体にはペンが付属しています。キーボードを取り外すと500gほどになるため、児童や生徒が気軽に持ち運べ、屋外でも片手でディスプレイを持ちながら、もう片方の手でペンを持ってメモを取るなどの作業がしやすい点も強みです。

Surface Laptop Go 3

Surface Laptop Go 3は、長時間使用可能なバッテリーが特長のパソコンで、最大15時間連続で稼働できます。また、ディスプレイは一般的なノートパソコンよりも縦幅を18%拡大した3:2の比率での設計のため、Webサイトの文章を読む際に一度に多くの文章を表示できるなどのメリットがあります。また、CPUにIntel® Core™ i5-1235Uを搭載しているため、さまざまなアプリケーションを使用する際の処理能力の高さも強みです。

マイクロソフトが推奨する先生用パソコン

ここでは、Microsoftが推奨する教員用パソコンのスペックと、おすすめ製品をご紹介します。

推奨スペック

Microsoftが推奨する教員用パソコンのスペックは、次のとおりです。以下はあくまでMicrosoftでの推奨スペックのため、文部科学省から提示されている最低スペック基準とは異なります。


【Microsoftが推奨する教員用パソコンのスペック】

 OS   Windows 11 Pro Education または Windows 11 Pro 
 CPU   Intel® Core™ i3 同等以上
 メモリ   8GB以上
 ストレージ(SSD)   64~128GB 
 バッテリー   8~10時間以上稼働 
 無線   Wi-Fi 6(無線LAN) 
 画面サイズ   13インチ以上 
 そのほかの仕様  ・重さ1.5kg以下
・インカメラ、ステレオマイク
・デタッチャブル型 または コンバーチブル型 
・USB Type-C(充電ポート対応)
・指紋センサー、Windows Hello対応カメラなど推奨

教員用のパソコンは、授業外の事務作業でも電源につながず終日利用可能なバッテリーが長持ちする製品や、セキュリティチップ・多要素認証などによる高度なセキュリティを備えた製品がおすすめです。

また、教員用パソコンを選ぶ際は、児童や生徒よりも一回り大きなサイズのディスプレイの製品を選ぶことで、一度に多くの情報を同時に表示できるため、授業中や作業時の業務効率化にもつながります。

Fujitsu Tablet STYLISTIC Q7312/NE

Fujitsu Tablet STYLISTIC Q7312/NEは、キーボードと接続することでパソコンとして使用できるタブレットで、持ちやすく操作しやすい形状・ボタン配置を実現している点が特長です。また、AIノイズキャンセラーを搭載しており、オンライン授業や会議などでの通話時に、工事現場の騒音、ペットの鳴き声、生活音といったノイズをAIが識別し、自動で音をカットします。

VersaPro タイプ VM-H

VersaPro タイプ VM-Hは、14インチの大きなディスプレイが特長のパソコンで、A4ファイルサイズのかばんにも収納できます。児童や生徒の課題を見ながらメモを取ったり、複数のウインドウを開いて授業の準備を進めたりするといった作業も快適に行えるでしょう。また、マイクのON/OFFや画面の明るさの調整など、オンライン授業や会議時に必要となる操作を簡単に行えるキーボード設計も施されています。

Surface Pro 10

Surface Pro 10は、最大約19時間稼働できるバッテリーが特長のパソコンです。Microsoft CopilotやWindows Studio エフェクトといったAIを活用した機能を豊富に備えており、タスク管理やカメラ機能の強化などが効率よく行えます。CPUには最新モデルのIntel® Core™ Ultraシリーズを採用しており、メモリを増やせば画像編集や動画編集などの負荷の高い作業も高速で処理できます。

ASUS BR1402FGA

ASUS BR1402FGAは、メンテナンスしやすい設計や増設可能なストレージが特長のパソコンです。授業で使用する書類や動画、音楽などのデータに加え、校務で使用するデータも加わることで、パソコンのストレージを圧迫してしまうことがあります。ASUS BR1402FGAではオプションで最大1TBの増設が可能なため、空き容量を気にせずにデータ管理ができます。

まとめ

この記事では、Windows 11 Pro Education搭載パソコンの特長や、Microsoftの推奨スペック、おすすめ製品などをご紹介しました。

文部科学省から提示されたGIGAスクール構想により、多くの学校ではパソコンやタブレットを活用した教育のDX化が進んでいます。このような環境下でさらにAIなどの最新技術を備えたWindows 11 Pro Education搭載パソコンを取り入れることで、児童や生徒の学習効果の向上や、教員の業務効率化が期待できるでしょう。