小中一貫教育の推進を止めない その使命感が ICT 推進を大きく後押し
千葉県我孫子市立我孫子第四小学校は、2020 年 9 月よりダイワボウ情報システム株式会社 (以下、DIS) が提供を開始した「おてがる遠隔授業パック」のモニター校として運用を開始している。
千葉県の北西部に位置する我孫子市は、人口約 13 万人。宿場町として栄えた同市の南側に位置する手賀沼周辺は、一世を風靡した白樺派の文学人をはじめ多くの文人が住居や別荘を構えた地としても知られ「物語の生まれるまち」として親しまれる街だ。
そんな我孫子市の中心地となる JR 我孫子駅からほど近い我孫子第四小学校は、児童数が約 900 名と市内で一番の児童数を誇るマンモス校。さらに 1 人当たりの面積が市内で一番狭い「密」な学校。だからこそ、学校行事や授業などで児童が密にならないように配慮する必要があった。加えて同市は、「小中一貫教育」を推進し、中 1 ギャップを無くすといった取り組みを行なっているが、その取り組みを止めてしまうとコロナ禍にある 6 年生が中学校に進学した際に戸惑ってしまう。そういった課題も明確に見えていたため、 ICT 機器を積極的に活用し、学びを止めないための仕組み作りをより推進したいと考えたという。
しかし、機材が無ければ仕組みを推進することもできない。だからこそ、高性能な PC とどこでも繋がるWi-Fi、カメラなどの機器がセットになった「おてがる遠隔授業パック」の導入を希望したと同校の校長、小林道治氏は語る。また、大規模な学校であるが故に、休校時の配布物や授業を個別に行うのは負担が大きい。さらに密を避けながら全校集会や終業式のような教育活動もあり方を変えていかなければならない。こういった課題をクリアするために最適だったのが「おてがる遠隔授業パック」だったとも振り返った。
学びのツールとしての ICT 機器は 子どもたちをつなぐツールでもある
我孫子第四小学校では、遠隔授業の考え方を「どこにいても双方向でのやり取りができる授業」と定め、双方向のやり取りが行える「Zoom」と、Web 上で与えられた課題に取り組む学習支援ソフト「schoolTakt」の 2 つを中心として遠隔授業を実施している。しかし、ICT 機器活用スキルが児童や教員の年齢によって大きな差が生じているという課題があったため、ICT 機器を扱うために必要な知識や技能習得への学びが誰でも図れる導入動画を作成し、児童と教員が一緒に見ることで教員の準備期間削減や、クラス間差を埋めるといった工夫が行なわれたという。
同校では、他者とのディスカッションには「Zoom」、自分の考えをまとめる場合は「schoolTakt」を使うなど、学習の質を高めるために作業によって使用するツールを使い分けているだけではなく、より深い学びへつなげるために学習を「見出す」、「自分で取り組む」、「広げ深める」、「まとめあげる」の 4 つのフェーズに分けている。まず、「見出す」フェーズで既に学習したことを振り返り、学習についての疑問や課題を明確化する。つづいての「自分で取り組む」では情報を収集し自分の考えを形成。さらに友達と共に学ぶ、「広げ深める」フェーズでは自分の考えを他者に伝え、共有することで新たな考えを知る。そして、「まとめあげる」では思考の過程を振り返り、学んだことをまとめて確実に身に付ける。それぞれをサイクルすることで、自ら調べ他人と協調するという、受け身ではない深い学びが実現するのである。この取り組みは、保護者の 9 割以上がアンケートで「より意欲的に取り組めた」と評価し、児童からも「友達の様子が見ることができて新鮮だった」、「発表が聞きやすく、黒板も見やすかった」などの声が上がっている。
こういった取り組みをはじめ、導入動画の作成などにも「おてがる遠隔授業パック」のインテル® Core™ プロセッサー・ファミリー搭載 PC が利用されているが、同校が従来から利用していたリース期間末期に近い PC と比べると、操作は非常に軽快だったという。同パックの存在が学校全体の ICT 教育を支えるだけではなく、作業の快適性と業務の効率化を実現している。
また、同パックの導入によって、児童はもちろん教員の意識も大きく変わったという。同校の前教務主任、竹本勇一氏は「コロナ禍において、児童の休校をはじめ教員も出勤を制限していたため、どうしても対面による会話はできませんでした。なので、まずは Zoom から使ってみよう。というのが最初の動きでした。その後、行事関係で動画配信などを活用していく中で、教員たちにも作っている様子を見てもらい、ICT 機器に対する抵抗感を下げていくことを意識しました。実際に『自分でもできるかな?』という教員が出始めたころ、学校としてどう扱っていくかといった方針を出しました。」と ICT 機器活用に向けた取り組みについて振り返った。
さらに、同パックを用いた遠隔授業や動画配信を実施したことにより、不登校児童が授業や学校行事に参加できたという事例もあったという。動画配信であれば自分のタイミングや学校に来たタイミングで見られるため、みんなと同じ情報が得られ、知らないことが減っていく。また、遠隔授業に参加すれば、クラスメイトの顔を見て話すことができる。そういった積み重ねによって、登校に対する不安が徐々に薄れ、登校するキッカケにもなる。ICT 機器は、単なる学びのツールであるだけでなく、子どもたちの心もつなぐツールでもあるのだ。
加えて、同校の現教務主任である高橋和也氏は今後の ICT 教育の展望について「PC1 人 1 台が整備され、個人の ICT 機器活用能力向上が必要となってきます。情報をインプットする技能とともに、学習支援ソフトを用いて自分の考えをアウトプットするための技能をつけていきたいと考えています。」と語った。
ICT 機器活用の経験を積んだこと それが児童に大きな還元をもたらす
遠隔授業や行事の参加、そして動画制作による授業や情報発信など、先進的な取り組みを続ける我孫子第四小学校。これらの教育活動を快適かつ円滑に行なうため導入した「おてがる遠隔授業パック」による成果を同校は以下 3 点のように評価している。
1) 児童の学習意欲の向上
2) つながるためのツールとしての有効性
3) ICT機器の利活用が学校現場で必要だと教員が感じることができた
ひとつ目の「児童の学習意欲の向上」については、ICT 機器を活用することで従来と比べ学ぶべきことが明確になったり学習のゴールがハッキリしたりすることで意欲向上を実感したとのこと。また、教員も ICT 機器をどう活用すれば効果的かという視点を持って活用したことも大きなポイントだという。さらに保護者が ICT 活用に対して好意的だったことも意欲向上につながったと分析している。
ふたつ目の「つながるためのツールとしての有効性」は、始業式や全校集会といった教育活動の多くが遠隔で行なわれるようになったが、学校に居ながらつながるといった利点を活かすことができたと評価している。従来は、会に参加した代表児童が全体に伝達する必要があったものの、動画の視聴に切り替わったことで今まで以上に児童が自分事として捉えることができるようになった。そして教員はつながりたいときに遠隔でつながれるため、他校との意見交換も活発にできるようになったという。
最後の「ICT 機器の利活用が学校現場で必要だと教員が感じることができた」は、感染症対策によって、児童とは密になれない状況下において ICT 機器は非常に有効であると実感したとのこと。当初は、既存のコンテンツを利用するだけだったが、教員自身が作成して活用できるよう取り組むことができた。GIGA スクール構想を進めていくうえで、この経験が児童に還元されるものとなったと締めくくった。