神奈川県大和市 教育長柿本 隆夫 氏

昭和29年生まれ。都留文科大学を卒業後、昭和51年より大和市立光丘中学校で教員生活をスタートさせる。以後38年間、大和市の教員として勤務し、大和中学校教頭、引地台中学校長、下福田中学校長を歴任。平成26年10月 大和市教育委員会教育長に任命され、現在に至る。

大和市DATA
【都道府県】神奈川県
【人口/世帯数】約23万人 /   約102,000世帯 (平成27年3月現在)
【小中学校数】小学校19校、中学校9校
【児童・生徒数】児童11,500名、生徒5,600名
【備考】神奈川県のほぼ中央に位置し、横浜、相模原、藤沢、海老名、座間、綾瀬、東京都町田の各市に隣接する。丘陵起伏がほとんどなく、市域は南北に細長い。3つの鉄道が東西南北に走り、東京へ1時間弱、横浜へは20分で行くことが出来る。市域のほとんどが駅まで15分以内の徒歩圏内で、道路網の整備も充実しており、交通の利便性に恵まれている。

地域や家庭の実情に即した独自の取組み

―大和市ならではの子どもたちの育成環境について、特徴をお聞かせください。

柿本 神奈川県33の市町村の中、県下2位の人口密度である23万市民の大和市。全国の多くの市町村ともに人口減が大きな課題となるこの時代において、市の面積は小さいながら大和市では他地域からの流入と自然増による人口増加が続いています。

中学校9校に約5,600人の生徒と小学校19校に約11,500人の児童数で、1中学校4小学校の校区から1中学校2小学校の校区まで市内の地域環境は多様です。校区ごとのスタンダードづくりなど、充実した学校連携による現場力あふれる教育活動が展開され、地域に応じた小中連携が実現しています。また、子ども・子育て支援制度の実施にあわせ、放課後児童クラブの受け入れ対象児童を6年生までに拡大するとともに、学習習慣の定着をねらいとした「放課後寺子屋やまと」の導入など、保護者の就労思考の高まりや子どもたちを取り巻くさまざまな家庭の実情に即した独自の取り組みを推進しています。

その礎となる大和市学校教育基本計画において「“自ら成長する力”をはぐくむ学校教育」を基本理念に次の4つの基本目標を設定しています。

 1. 夢や希望に向かってたくましく生きる子どもを育てます
 2. 創意に満ち、活力ある学校づくりを進めます
 3. 家庭との連携を充実し、生きる力の基礎をはぐくみます
 4. 地域の力を生かした活動を充実し、生きる力をはぐくみます

24カ国もの子どもたちが大和市の学校教育でともに学んでおり、グローバルとローカルの融合など、教育環境の変化へのスピーディかつ細やかな対応が大切だと考えています。

ICT活用で学力向上に効果

―今回のDIS School Innovation Project に参加されたねらいと成果をお聞かせください。

柿本 大和市では平成22年度までに全小学校の普通教室と全中学校理科室への電子黒板と実物投影機の導入を完了し、より良い教育活動のための授業づくりの実践を全校で共有しながら、各校に応じた活用を進めてきました。さらに平成25年度からの本実証研究事業での西鶴間小学校における活用実践と「学びのイノベーション事業」での成果を受け、平成26年度中に市内全小中学校への普通教室用1クラス分のタブレットPCの導入整備(大規模小学校3校には2クラス分、特別支援学級には4人に1台)を完了しました。

電子黒板やタブレットPCなどの情報機器を活用する授業改善は、児童生徒の学習意欲・関心を喚起し、思考活動を通して個の意見を構築する協働的な学びはもちろん、個別学習場面での活用による学力向上にも効果的であると感じています。

目標への“チャレンジ”でさらなる教育の充実を

―今後の展望についてお聞かせください。

柿本 平成27年度は、必要とされる学びのスタイルに応じたより良い授業づくりをねらいに、ベテラン教員の経験と若手教員の発想の連携を進めつつ、情報センターとしての学校図書館の活用推進のための研修等の充実を図ります。さらにはこれまでの実践から導き出された情報モラル教育についても保護者を巻き込んだ取組みを推進します。

変化する社会において、教育目標にある学校教育の3つの視点(子どもを中心に据えた学校教育・家庭と共につくる学校教育・地域社会と共につくる学校教育)の『つながり』に、全教員が授業を通してチャレンジし続けることで、大和市の更なる教育の充実をスピード感を持って実現したいと考えています。