ラーニングアクセラレーターとは

ラーニングアクセラレーター(Learning Accelerators)とは、Microsoft社が提供するMicrosoft 365 Educationに搭載されているAI学習支援機能です。

ラーニングアクセラレーターでは、AIを活用して児童や生徒の音読をリアルタイムでコーチングしたり、数学や調べ学習、情報リテラシーの強化をサポートしたりすることができます。児童や生徒の学習を支えるだけでなく、教員の課題の作成や採点のサポートも行えるため、業務効率化による長時間労働の防止も可能です。

ほかにも、ラーニングアクセラレーターでは、ツール上で収集した児童や生徒の学習記録や心の状態などのデータを分析し、今後の指導方針の策定などにも活用できます。

このように、ラーニングアクセラレーターは児童や生徒の学習や、教員の校務をあらゆる角度からサポートするツールとして注目を集めています。

Microsoft 365 Educationとは

Microsoft 365 Educationとは、教育機関向けに設計されたMicrosoftのサービスで、Microsoft WordやExcel、PowerPoint、TeamsなどのOffice製品を使用できます。

Microsoft 365 Educationは、児童や生徒が小中学校のうちから、大学や専門学校、会社などで日常的に使用する可能性の高いOffice製品に慣れておくことで、スムーズに今後の学習や仕事で活用できるようになることを目的として作られています。

ラーニングアクセラレーターを含むMicrosoft 365 Educationは、教育向けWindows OSであるWindows 11 Pro Educationを搭載したパソコンとあわせて使用することで、より児童や生徒の学習や教員の校務を効果的に行えるようになります。

ラーニングアクセラレーターの価格

無償版のOffice 365 A1や、そのほかのMicrosoft 365 Educationシリーズ(Microsoft 365 A3、Microsoft 365 A5)で使用できます。

それぞれのプランによる詳しい機能の違いや、各教育機関に適したプラン、プランごとの料金についてはMicrosoftの教育向け製品のエキスパートに相談することで、最適なプランや料金を提案してもらえます。

無料で利用できるOffice 365 A1はMicrosoftの公式サイトで学校用のメールアドレスを入力することで利用できます。

ラーニングアクセラレーターの対応デバイス

ラーニングアクセラレーターは、Microsoft Teams for Education上で使用できます。そのため、Teams for Educationが使用できるOSであれば、Windows以外のiOS(iPadOS)やChromeOSなどのさまざまなOSのデバイスで利用可能です。

学校で使用しているデバイスがWindowsのパソコンではなく、MacBookやiPad、Chromebookの場合も、ラーニングアクセラレーターを活用できます。

ラーニングアクセラレーターの機能

ラーニングアクセラレーターの機能は、「基本スキル」「将来必要となるスキル」「Data Analytics」の、大きく3つに分けられます。ここでは、それぞれに含まれる機能について詳しくご紹介します。

それぞれの機能には「Coach」「Progress」と名づけられたものがあり、「Coach」は児童や生徒向けの機能、「Progress」は教員向けの機能です。

基本スキル

基本スキルには、「Reading Coach・Reading Progress」「Math Coach・Math Progress」「Microsoft Reflect」が含まれます。

Reading Coach・Reading Progress

Readinng Coach(リーディングコーチ)は国語や外国語の授業で活用でき、児童や生徒がパソコンやタブレットを使って音読した音声を分析し、AIがリアルタイムで音読の評価や苦手な発音、読み仮名などのコーチングを行います。

Readinng Progress(リーディングプログレス)は、AIによる課題の作成や採点補助が行え、教員が課題の採点を行う際に事前にAIによる簡易評価が行われるため、教員の採点スピードを速められます。

Math Coach・Math Progress

Math Coach(マスコーチ)は算数や数学の授業で活用でき、数式から答えにたどり着くまでのステップをより理解しやすくなるよう、問題や数式を分解し、答えまでの道筋や手順などを詳細に説明することで、児童や生徒をサポートします。

Math Progress(マスプログレス)では、教員の算数や数学の問題作成を効率化できます。子どもたちが難しいと感じるポイントを特定したり、子どもたちの習熟度に合わせた適切な指導方法を検討しやすくしたりできるようサポートします。Math Progressで取得した児童や生徒たちのデータに基づいて、Math Coachで追加の練習問題を作成することも可能です。

Microsoft Reflect

Microsoft Reflect(リフレクト)は、教員が児童や生徒の心の健康を維持するために活用できる機能で、学習に対する感情のアンケートを数クリックの簡単な形式で収集できます。

児童や生徒は「フィーリングモンスター」というキャラクターを通して学習や学校生活への気持ちを表現できるため、記述式のアンケートや直接のヒアリングよりも正確な心の状態を把握しやすく、子どもたちのSOSの素早い発見や解決につながります。

将来必要となるスキル

将来必要となるスキルには、「Search Coach・Search Progress」「Speaker Coach・Speaker Progress」が含まれます。

Search Coach・Search Progress

Search Coach(サーチコーチ)は、児童や生徒が学習に関する検索がしやすくなるよう、最適なクエリ(検索する際に入力する単語)の作成や、情報源として信頼できるWebサイトの特定・確認の仕方などをリアルタイムでコーチングします。広告を除外するなどの細かなカスタマイズも可能です。

Search Progress(サーチプログレス)は、インターネットでの検索を利用した練習問題の作成が行えます。児童や生徒が情報源として利用したWebサイトや課題の進捗状況を確認でき、どのような方法で情報源を探しているか、フィルターを活用して情報を絞り込めているか、なぜその情報源を選んだのかといったチェックもできます。

Speaker Coach・Speaker Progress

Speaker Coach(スピーカーコーチ)は、児童や生徒が発表やスピーチを行う際の話し方や話すスピード、声の抑揚、「えっと」などのつなぎ言葉の使用などをリアルタイムでフィードバックします。Speaker Coachのフィードバックをもとに練習することもできるため、プレゼンテーションスキルの向上が期待できます。

Speaker Progress(スピーカープログレス)では、Speaker Coachで取得したデータを分析し、児童や生徒個人やグループ、クラス全体での主な改善点の把握を効率的に行えます。また、スピーチやプレゼンテーションに関する課題の作成もでき、児童や生徒から提出された動画の確認や、配布した課題の進捗状況の把握なども可能です。

Data Analytics

「Data Analytics」には、「Education Insights」が含まれます。

Education Insights

Education Insights(インサイト)では、Readinng Coachなどラーニングアクセラレーター上で集めた児童や生徒の課題の進捗、学習記録、心の状態や、Teams上でのコミュニケーション状況などのデータを収集し、活用できます。

集めたデータは個人単位やクラス単位、学年、学校などさまざまなくくりで把握できるため、クラスごとの学習状況や学年全体での学習の進み具合など、あらゆる視点で児童や生徒の状況を理解できるでしょう。このようなデータは、教員の指導方針の策定や、学校や教育委員会での適切な投資などにも役立てられます。

ラーニングアクセラレーターを活用するメリット

ラーニングアクセラレーターを教育現場で活用することで、どのようなメリットが得られるのかをご紹介します。

児童や生徒がそれぞれに合った環境で学習できる

児童や生徒は、ラーニングアクセラレーターによってそれぞれの習熟度に合わせた問題を解いたり、学習に関する心の状態によって適切なサポートを受けたりすることで、子どもたちにとって最も適した環境での学習ができるようになります。

また、授業で使用した資料や課題などをファイルとして共有することで、入院中などで学校に通えない児童や生徒も授業内容を把握でき、遅れを取り戻すことができます。このように、個々の状況に合った環境での学習を実現できる点がメリットといえます。

リアルタイムでのコーチングが可能になる

ラーニングアクセラレーターでは、児童や生徒が音読、Web検索、スピーチなどを行った際にリアルタイムでコーチングを行い、その場での改善が可能です。また、コーチング内容も児童や生徒にパーソナライズされたものが提供されるため、直すべきポイントや自身がよくやってしまうミスなどを的確に指摘してもらえます。

アナログ方式の学習環境では、教員が子どもたち一人ひとりに時間をかけて指導する時間が限られていたため、ラーニングアクセラレーターの力を借りることで、より子どもに寄り添った指導を実現できます。

収集データをさまざまな用途に活用できる

先述のとおり、ラーニングアクセラレーターではEducation Insightsを使用することで、児童や生徒の学習状況を把握できます。教員や学校全体で在校生のデータを管理することで、今後の学校全体での指導方針や導入すべきシステム、より効率化が見込める指導内容や校務などを検討しやすくなります。

収集したデータではそれぞれの児童や生徒の苦手分野の把握や早急なサポートに役立ちますが、反対に得意分野も把握できます。得意分野も理解することで、進路相談の場などで子どもの強みを生かせる環境の提案が可能になります。

教員の指導を効率化できる

これまでの教育環境では、教員が普段の授業の様子などを見ながら児童や生徒の課題を作成したり、手作業で課題の採点をしたりする必要があり、業務負担が増えていました。しかし、ラーニングアクセラレーターの「Progress」機能を活用することで、AIによる採点補助や、児童や生徒一人ひとりに合った問題を選定した課題の作成などを自動で行えるため、事務作業の効率化につながります。

また、児童や生徒がどこでつまずいているのか、どのようなペースで課題を進められているのかなどもツール上で把握できるため、今後の指導方針の計画や次回の授業の準備などもスムーズに進めやすくなるでしょう。

ラーニングアクセラレーターの利用開始手順

ラーニングアクセラレーターを利用するには、Teams for Educationを利用していることが条件となります。そのため、まずは次の手順でアプリのインストールやサインインを進めます。

1. Teams for Educationを利用できるパソコンやタブレットなどの端末を用意する
2. Microsoft 365 Educationの利用登録を行う
3. Teams for Educationのアプリをダウンロード・インストールする
4. アプリを起動する/WebブラウザでTeams for Educationを起動する
5. 学校用のメールアドレス・パスワードでサインインする

端末にアプリがインストールされていない場合は、以下のページの「ダウンロード」をクリックしてください。なお、Teams for EducationはWebブラウザでも使用できます。ブラウザ版を利用する場合は、以下のページにアクセスし、「始める」をクリックします。
Microsoft Teams for Education 一緒に学び、成長する

ラーニングアクセラレーターの各機能の使い方

Readinng Coach・Reading ProgressやReflectなどの各機能の使い方は、次のとおりです。

Reading Coach・Reading Progress

Reading Coach・Reading Progressの利用方法は、次のとおりです。




1. Teams for Educationを起動する
2. 任意のTeamsクラスを選択する






3. 課題を作成し、「Reading Progress」を課題に添付する




4. 「Reading Progress」を課題に添付する






5. 「Reading Coach」のオプションを選択し、機能をオンにする

Microsoft Reflect

Microsoft Reflectの利用方法は、次のとおりです。





1. Teams for Educationを起動する
2. 「Reflect」をクリックする



3. 「新しいチェックイン」をクリックする
4. 利用可能な質問から質問内容を選択、または独自の質問を作成する



5. 各種設定をカスタマイズし、投稿場所を決める
6. Education Insightsで、児童や生徒の回答を確認する

Search Coach

Search Coachの利用方法は、次のとおりです。




1. Teams for Educationを起動する
2. 「+」をクリックし、「Search Coach」をクリックする






3. 児童や生徒は、Search Coachを使用して検索結果を絞り込む





4. Education Insightsで児童や生徒の検索結果を確認する

Speaker Coach

Speaker Coachの利用方法は、次のとおりです。




1. Teams for Educationを起動し、会議をスケジュールする
2. スケジュールされた会議に出席する



3. 通話画面で「その他のオプション」をクリックし、「Turn on Speaker Coach」を
   クリックする




4. Education Insightsで児童や生徒の学習状況を確認する

Education Insights

Education Insightsの利用方法は、次のとおりです。





1. Teams for Educationを起動する
2. 任意のクラスを選択する
3. 「Insights」タブをクリックする




4. クラス全体の学習状況を確認する

Teams for Educationの活用例

ラーニングアクセラレーターを使用できるTeams for Educationでは、次のような活用方法が挙げられます。日常的な学校での集会や校外学習、多くの参加者が集まる学校行事などさまざまな場面で活用できるため、ぜひあわせてご確認ください。

全校集会

Teams for Educationを活用した全校集会では、職員室から教室にいる児童や生徒への、1台のパソコンの内蔵カメラでの配信が可能になりました。このような遠隔での配信が可能になったことで、1カ所に全校生徒や教員を集める際の各自の移動の手間や時間などが削減でき、スムーズな集会の進行が可能です。

また、夏場に校庭や体育館で集会を行うことによる熱中症リスクや、感染症の拡大時に1カ所へ集まることによる集団感染リスクなどの防止も期待できます。

校外学習や修学旅行

校外学習や修学旅行、社会科見学、遠足などの場面でもTeams for Educationは活用できます。これまでは直接現地に移動する必要がありましたが、訪問先からWebカメラを搭載したパソコンやタブレットで配信を行うことで、現地の様子を映像で見ながらの学習が可能となります。

現地へ直接赴く校外学習や修学旅行などに対し、配信による校外での学習機会も加わることで、児童や生徒がさまざまな場所の様子を知ることができ、知識を深められるでしょう。

また、校外学習で訪問先へ直接赴いた際も、グループごとに画面共有機能を用いて現在地の映像を共有することで、児童や生徒がどこにいるのか、何を見ているのかなどを教員が把握するのに役立ちます。

卒業式や発表会

入学式や卒業式、音楽発表会など、ステージの様子を映す行事の際にもTeams for Educationは活用できます。Teamsのライブイベント機能を使うことで、学校は多くの児童や生徒、保護者などにリアルタイムでの配信が可能です。このようなケースでは、1台のビデオカメラを三脚で固定し、Teamsライブイベントに接続して配信を行います。

上記のようなイベントは、体育館やホールなどの1カ所に児童や生徒、教員、保護者など在校生以上の人数が集まることが多いです。会場の広さや席数を確保できない場合や、集団による感染リスクの防止対策を行っている場合、ライブイベントでの配信を行うことで、会場外の人たちにも現地の様子を素早く共有できます。

体育祭や学校説明会

体育祭、文化祭、学校説明会などでは、複数カメラでの配信や、プレゼンテーション資料とカメラでの映像を組み合わせた配信などが適しています。このような複数画面での配信も、Teams for Educationでは可能です。

配信時は、Webカメラが搭載されたパソコンを操作したり、タブレットを持って移動したりしながら配信作業を行います。複数画面での配信や、資料とカメラ映像を合わせた配信を行うことで、視聴者が現地の様子をより理解しやすくなることや、資料内容の補完が期待できます。

まとめ

この記事では、ラーニングアクセラレーターとは何かを、具体的な機能やメリット、各機能の使い方などとあわせてご紹介しました。1つのツールで音読やスピーチのサポート、心の健康維持などさまざまな機能が備わっているため、デジタルツールを初めて取り入れる教育機関にも使いやすいツールといえます。

ラーニングアクセラレーターを利用する際は、Windows 11 Pro Educationを搭載したパソコンの使用がおすすめです。生徒用と教員用でそれぞれ多様な製品を用意しており、学習や校務の効率化に役立つ機能がそろっています。