Google のWeb会議ツール「Google Meet™」は、コロナ禍のオンライン授業をきっかけに活用が広がり、授業だけでなく、朝礼や集会、学校行事、さらには職員会議や教員研修など、さまざまな場面で使われています。

そんな Google Meet ですが、Google Workspace for Education の有償エディション「Teaching and Learning Upgrade」を導入することで、ブレイクアウトルームやビデオ録画など充実した機能が利用できます。しかも、必要な教員分のみライセンス購入ができるのもメリット。実際に同サービスを利用する兵庫県立教育研修所に話を聞きました。

冒頭画像:兵庫県立教育研修所における教員研修の様子

ブレイクアウトルームが Google Workspace for Education Fundamentals だと利用できない。教員同士が交流する機会を作りたい

兵庫県立教育研修所は、同県の小中学校、高等学校、特別支援学校の教員に対して、年次研修や選択研修など様々な教員研修を行う機関です。1人1台端末の効果的な活用や、学習指導要領が求める資質・能力の育成をめざして授業改善に取り組んでいます。

 同研修所が、教員研修のスタイルを大きく変えるきっかけとなったのは、2020年のコロナ禍のこと。当時、兵庫県も他県と同様に、オンライン授業やタブレット端末の活用に関する教員研修を頻繁に行っていましたが、集合研修ができない状況だったため、オンライン研修に切り替えて実施していました。Google Meet を使った講義形式のオンライン研修や、同研修所が作成した動画をVODや YouTube™ に限定公開でアップロードし、各自で視聴するといった研修形態に変えました。このことはコロナ禍の休校措置やGIGAスクール構想の推進にもつながりました。

ただし、この研修スタイルも最適な方法ではなく、やっていくうちに課題が出てきたと話すのは、兵庫県立教育研修所の安本靖史氏。「Google Meet はコロナ禍当初、制限なく使用できていましたが、G Suite for Education から Google Workspace for Education に代わり、Education Fundamentals では100人以上が参加する会議やビデオ録画機能が使用できなくなりました。特に困ったのが、ブレイクアウトルームが Education Fundamentals では利用できなくなったことですね。初任者研修等では、同期採用の者同士が顔を合わせながら、授業の作り方について意見交換をするなど、新たな気付きを得る貴重な場です。コロナ禍であっても、なんとか教員同士が協議できる研修が実施できないかと考え、ブレイクアウトルームの導入を検討するようになりました」(安本氏)。

兵庫県立教育研修所の安本靖史氏

Teaching and Learning Upgrade、必要なライセンス数分を購入できるのがメリット

教員同士が交流できるように、ブレイクアウトルームを活用した研修を実施したい。こうした研修サイドの要望を受けた兵庫県立教育研修所の原口攻一郎氏は、Google for Education の窓口に直接問い合わせ、Google Workspace for Education が提供する教員対象の有償エディション「Teaching and Learning Upgrade」を導入すれば解決できることを知りました。同エディションでは、ブレイクアウトルームが利用できるだけでなく、最大250人が参加できるビデオ会議やビデオ録画なども可能。さらには、アンケート機能やノイズキャンセリングなどオンライン授業や研修を充実させる機能が網羅されています 。

▽Google Workspace for Education エディション

Google Workspace for Education は、全部で4種類のエディションを用意。うち、多くの教育機関で利用されているのが、無償エディションの「Education Fundamentals」。残りの「Education Standard」「Teaching and Learning Upgrade」「Education Plus」は有償になる

「Teaching and Learning Upgrade は有償ですが、料金は1ライセンスあたり月額480円で、年間でも5760円(※2023年11月末時点)です。金額的にも許容される範囲であったため、導入まではスムーズに進みました」と原口氏。また、「同じ有償エディションの Google Workspace for Education Standard / Education Plus は、生徒全員の契約が必要であるのに対して、Teaching and Learning Upgradeは必要とする教員のみ契約できるのもメリットでしたね」と語っています。同研修所では、義務教育研修課の指導主事10人分のライセンスを購入し、活用をスタートさせました。

兵庫県立教育研修所の原口攻一郎氏

Teaching and Learning Upgrade の導入以降は、ブレイクアウトルームを活用したグループワークが教員研修で大いに役立ったといいます。教員同士がオンラインでつながり、互いに顔を合わせながら、デジタルホワイトボード「Jamboard™ 」(※)を使って共同編集を行ったり、自分のワークシートを画面共有して意見交換をしたりとコロナ禍であっても交流の場を作ることができました。また Google Meet の録画機能も使用可能になり、教員自身が体調不良などで研修を欠席した場合も、後日、録画を見て、レポートを提出してもらうことで出席扱いにできるようになったといいます。

※Jamboard は、2024年12月31日を以て全面的にサポート終了。

ほかにも、教員研修では Google Meet 以外に、Google Classroom や YouTube といったGoogle のサービスが利用されています。研修ごとに Google Classroom を作成し、関連する資料や研修で使用するワークシートを共有。研修を受講する教員は期間限定で発行された Google アカウントを使って Google Classroom にアクセスし、必要な資料をダウンロードしたり、自分のワークシートをアップしたりします。コロナ禍に入り、資料もペーパーレス化がかなり進み、勤務校からでも教員研修の資料にアクセスできるようになりました。

Google Meetを活用したオンライン研修の様子

教員研修で体験したオンラインによる協働的な学びは、児童生徒に還元される

このように Teaching and Learning Upgrade の導入を通して、充実したオンライン研修の環境を築いた兵庫県立教育研修所。原口氏は結果として、授業改善や教員の働き方改革につながっていると話しています。

「オンライン教員研修で教員自身がブレイクアウトルームを体験することで、自分の授業でも実践しやすくなり、児童生徒に多様な学び方を還元できるようになりました。現在、コロナ禍は収束していますが、学校現場ではインフルエンザによる学級閉鎖も出ており、いつ、オンライン授業が必要になるかわかりません。その時に備えて、普段からオンライン授業で協働的に学べる環境を実践しておくことは大切だと考えています」と原口氏。また教員研修においても、現在は研修内容によって対面とオンラインを使い分けている同研修所ですが、遠方に勤務する教員の研修所までの移動時間を考慮すると、オンライン研修は有効な手段です。教員の働き方改革を促進する手段として、今後も効果的にオンライン研修を実施していく考えです。

GIGAスクール構想も3年が過ぎ、兵庫県全体としては、学校現場におけるICT活用もずいぶん進んできました。多くの教員が「端末を使う」「ICTを活用する」といった使う段階から抜け出し、現在は、学習指導要領が求める児童生徒の資質・能力の育成をめざして、個別最適な学びや協働的な学びをどのように実践していくのか、その部分に研修テーマも変わってきているといいます。

原口氏は、「授業でも、資料の提示や意見共有などICTを活用することで効率化が進み、児童生徒が話し合う時間も増えてきました。1人1台端末はあくまでも子どもたちが学ぶツールで、大事な部分はICT活用を通して、周りの意見を参考にして自分の考えを広げたり、さまざまな情報に触れたりしながら、課題解決できる力を伸ばすことです。そんな学びを多くの教員に実現してもらえるよう、私たちの研修でサポートしていきたいですね」と話しています。

コロナ禍当初から、すべての研修機会を通して、授業や校務における教職員のICT活用力の向上に力をいれてきた兵庫県立教育研修所。その取り組みが学校現場に浸透し、現在は、本来取り組むべき課題である授業改善や児童生徒の資質・能力の向上に取り組めるようになりました。ここから、どのように兵庫県の教育が発展するのか、これからの教員の活躍が期待されます。

Google Meet 、YouTube 、Google Jamboard は Google LLC の商標です。