学びの進化に ICT は必要不可欠 1 人 1 台の PC は “文房具” のひとつ

広島県の広島市に位置する修道中学校・修道高等学校は、2020 年 9 月よりダイワボウ情報システム株式会社 (以下、DIS) が提供を開始した「おてがる遠隔授業パック」のモニター校として運用を実施している。県内屈指の進学校である同校は、“1 人 1 台端末環境の実現” が構想の段階だった下村文部科学大臣時代から将来を見据えて ICT 教育の準備を開始。情報機器やインフラに関しては、学びを進化させるために必要な道具であるという信念のもとインフラ整備を着々と進め、GIGA スクール構想が広く叫ばれるようになった 2020 年には、環境整備が完了。同時に PC に関しては生徒が準備すべき “文房具” のひとつという考えのもと、1 人 1 台の BYOD を確立し、遠隔授業や動画配信をはじめ、ブレンディッドラーニングなど先進的な取り組みを実施してきた実績を持っている。いまでは、他校からの視察の受け入れやヒアリングにも協力するなど、一目置かれる存在となっている。

早期からインフラ整備に注力し、いち早くから遠隔授業を行うなどしていた同校で ICT 環境整備に深く携わってきた中学教頭の藏下一成氏は「本校では教員 1 人 1 台の PC 体制が整っていましたが、たまに動作が重いと感じることがありました。しかし「おてがる遠隔授業パック」に含まれる PC は、動作が軽くストレスなく使っています。」と語る。続けて「こういった高性能 PC をはじめとする素晴らしい機材がパッケージ化されているのであれば、これを使ってどういった授業をやってみようか。そんな夢が膨らむといいますか、やってみたいという気持ちが教員の中に芽生えやすくなりました。それが一番良かったところでしたね。」と振り返る。

「おてがる遠隔授業パック」に含まれる機材を活用した家庭科の遠隔授業。この日は、洗濯洗剤の成分についての学習を実施。その様子を地元の大手新聞社に取材された。生徒たちは家庭で使用しているものを手にしているためバリエーションも豊富で製品による成分の違いなどの理解を深めた。
タブレットや PC 、ネット環境さえあれば、自宅でも教室にいるのと同じ感覚で遠隔授業に参加することが可能だ。

環境が整えば自然と利用する教員は増える

DIS の「おてがる遠隔授業 学校まるごとパック」ではインテル®︎ Core™️ プロセッサー・ファミリー搭載 PC、マイクや Wi-Fi ルーターをはじめ、カメラや三脚、動画編集ソフトなどの機材もパッケージとして提供する。藏下一成氏によると、遠隔授業で活用する機会が多かった機材は PC に次いでカメラだという。従来、学校にあったビデオカメラは、PC と接続したり編集用の動画を撮影したりするほどの機材では無かったが、本パックに含まれる 4K 対応カメラの存在によって「私も使ってみようかな。」という教員や「間尺が悪いので編集してみよう」といった具合に、期せずして共通のプラットフォームができたという。そして、この 4K 対応カメラを活用する中で、撮影した動画を編集するなどの負荷がかかる作業を行うには PC の処理性能が必要とされる。だからこそ、ストレスなく使える高性能なPC の存在が重要になる。こういった機材を活用する中で、遠隔授業の良さと対面授業の良さがうまく混ざったブレンディッドラーニング的な活用をする教員も増えていると藏下一成氏は語る。対面授業でありながら、まず教員が作成した動画を視聴して授業を展開。その動画を見ている生徒がメモを残し、問題を解く。教員はその様子を見ながら理解度を見極めるなど、対面授業そのものの有様も変わってきているとのことだ。こういった取り組みは、まず興味を持つ教員が取り入れ、その様子を見た他の教員も「私でもできそう」といった雰囲気が醸成され、利用者が増える。そういった教員のニーズと提供されるパックの内容が上手く合致していた。決してトップダウンで活用を促すのではなく、自然と浸透していくのも同校の風潮であったと続けた。

デジタルはあくまで道具、活用法が大切

修道中学校・修道高等学校では、非常勤の講師を含め、全教員が遠隔授業に対応するなど、非常に高いスキルを持ち合わせている。なかには独自に作成した動画を授業に用いる教員もいるほどだ。こうした質の高い教育の裏には、学校が独自に進める授業デザインの研究や研修、ICT 活用方法の学内共有といった取り組みも深く関わっている。藏下一成氏は「デジタルはあくまでも “道具” です。使い方ひとつで良い方向にも悪い方向にも転びます。私たちは、生徒さんが学んでいく過程で『このアプリを使えばうまくいく』、『ここは紙の方がいいでしょう』といった具合に授業のデザインを研究し、学内に浸透させたいと思っています。また、その研究に基づく研修会も実施したいと思っています。」と語る。またグループウェアによる ICT 活用マニュアルやティップスの共有も実施することで全教員のスキルアップを図っているほか、PC や情報機器の操作に不慣れな教員に対してはキャッチアップ研修を行うなど、スキルの底上げ対策にも余念がない。

同校では、ICT の導入や活用によって教育の質や学力の向上をはじめ、学習やコミュニケーションの効率化など、様々な効果を実感しているとのこと。また、藏下一成氏は「ICT の活用によって、生徒と教員だけでなく、生徒同士のインタラクティブなコミュニケーションが時空を超えて加速していくことにも期待を寄せています。」と締めくくった。

生徒と目線を合わせるため、画面と正対するように自分の座る位置の高さを調節して遠隔授業を展開。生徒に対し真正面から向き合う対応に藏下氏も素晴らしいと絶賛。
ノート PC に内蔵されるカメラの画角から板書がはみ出さないよう、ホワイトボードに配信できる範囲を記す教員も。生徒が少しでも見やすいようにするための工夫だ。
まだまだ授業運営が確立されていない遠隔授業だからこそ教員ごとの様々な工夫が見てとれる。