STEAM Lab 活用事例

STEAM Lab活用の目的、ねらい

生徒の探究的な活動や自主的な課外活動において、高性能なPCを用いたシ三ュレーションや、3Dプリンターを活用したプロトタイプ作成を行うことで、課題解決能力を高めるにとどまらず、目に見える効果の検証までを可能にする。


活用実績事例(サマリー)授業以外での活用

学年 概要
全校 3Dプリンター体験 STEAM講座(希望者向け)
高2 ウェブサイトの作成(Life is Techコンテストヘの参加)
高2(個人) ウェブサイトの作成(Life is Techコンテストヘの参加)
中3 総合的な学習の時間(Minecraftでの地域再現)

1.3Dプリンタ一体験 STEAM講座


学年 概要 活用ツール
全校  生徒主体で、3Dプリンターの利用方法を学び、体験したい生徒を対象とした
 120分程度の講座を企画・実施しました。講師役となったのは本校2年生の生徒で、
 学校の休業日などに2回実施し、のべ、30人程度の参加がありました。
• Fusion 360
• UltiMaker Cura

2.総合的な探究の時間(シ三ュレーション・モデル作成)


学年 概要 活用ツール
高2  総合的な探究の時間において、複数のグループがそれぞれ、物理シュミレーショ
 ン、および、交通シ三ュレーションの実験や、3Dプリンターを用いた発電用の
 プロペラの模型作成を行いました。
• Fusion 360
• UltiMaker Cura
• Blender
• Visual Studio Code

3.ウェブサイトの作成


学年 概要 活用ツール
高2(個人)  人の活動としてウェブサイト作成に取り組み、Life is Techコンテストに2回応募、
 2回とも最優秀賞を受賞しました。
• Visual Studio Code

【ライフイズテックレッスンコンテスト2023夏】 【ライフイズテックレッスンコンテスト2023冬】
  SDGs問題解決部門 最優秀賞 SDGs問題解決部門 最優秀賞  

4.総合的な学習の時間(Minecraftでの地域再現)


学年 概要 活用ツール
中3  中学生のグループが、総合的な学習の時間にMinecraftによる商店街の再現を試み
 ました。
• Minecraft

その他、活用の成果

探究活動で高性能PCおよび3Dプリンターを活用することで、マシンスペックが必要なシ三ュレーションの実施や、ラピソド・プロトタイプの作成など、活動の幅が広がり、受益者にとっても分かりやすい効果の検証までができるようになりました。
3Dプリンターについては、活用講座を生徒自身が企画し、他の生徒に利用方法を教えるなど、生徒主体の発展が見られました。その後も、生徒自身が放課後などに利用し、個人的な活動などでも利用する生徒が出てきています。
総じて、生徒が自由に活用できる環境としたことで、ICT活用の可能性を広げることができつつあります。

今後の課題

利用のハードルを下げ、より多くの生徒が主体的に活用できるように環境を整備していきたいです。現在STEAM Labの置かれたPC室は、ラーニングコモンズとして教科横断型の環境にリノベーションされる予定です。アイデアがひらめいたらすぐに足を運んで創作に取り組めるよう、STEAM Labの存在と利用方法を広く周知していこうと思います。
3Dプリンターに関しては、CAD技術の習得がネックとなり、生徒の利用が多くはありません。今回実施したSTEAM講座のような機会を活用し、より多くの生徒にCADの使い方を知ってもらうことで、3Dプリンターでの出力だけでなく高性能PCを用いたメタバース空間の設計·製作など、創作活動の幅がぐっと広がります。今は1台しかありませんが、需要が高まってきたら、増設も検討していくつもりです。

STEAM Lab 実証研究校インタビュー

茨城県立竜ヶ崎第一高等学校 ・ 附属中学校は、 茨城県南部の龍ケ崎市に位置する中高一貫校。民間レベルの公務 DX と高度情報教育の実践に向けた取り組みによって「茨城県 IT 人材スクール」の採択を受た同校は、「全国高等学校 AI アスリート選手権」や 「全国中学生創造ものづくり教育フェア創造アイディアロボットコンテスト」 で全国優勝を遂げるなど、 目覚ましい実績を上げています。文部科学省が指定する SSH(スーパーサイエンスハイスクール)校として探究活動にも力を入れる同校の「STEAM Lab」活用について、同校の亀田教諭にお話を伺いました。

BYOD 端末を補完し、学びの質を高める。それが STEAM Lab の役割

茨城県にある同校は、全都道府県随一の 13 校を誇る中高一貫校の先鋒として、国際社会を見据えた先進的な教育の導入と学校改革を進める進学校。平成 26 年には文部科学省の SSH に指定され、文理横断したサイエンスを駆使して社会課題を解決するイノベーターの育成を目指しています。そんな同校の探究活動は、社会に実在する課題をテーマに、コンサルティングファームで使われる本物の手法を用いて解決に挑む真正性が特徴。また、先端的なデジタル教育を導入し、STEAM 教育を通じた行動力や創造力の育成にも注力しています。その中で、PC 環境の整備として採用した BYOD(Bring Your Own Device)を通常授業や探究学習においても活用。8GB 以上のメインメモリーを要件とし、快適な学習環境を実現しましたが、3D モデリングや動画編集といった高度な作業となると実施が難しいという現実がありました。そういった状況を打破したのが、STEAM Lab の高性能 PC や大画面モニターであり、また、BYOD の “不足” を補い、学びに深みを与える場、それが STEAM Lab だと亀田教諭は語ります。

生徒が主体の学び。その中心的な存在となる STEAM Lab

同校の STEAM Lab は、授業や探究学習、さらに課外活動など、さまざまなシーンで活用されています。そのひとつが、社会課題の解決を目指した探究活動です。高性能 PC や 3D プリンターを活用することで、解決策のラピッドプロトタイピングが可能となり、地域で実際に役立ち、そして効果の伝わりやすい課題解決を実現しています。さらに、3D プリンターを個人所有し、使い方を熟知した生徒が講師を務める「3D プリンター体験」講座といった、ユニークな取り組みも展開されています。このように、同校では生徒同士が教え合うことで、最先端のテクノロジーへの関心の高まりと、その活用技術が徐々に広がりつつあります。亀田教諭は、「この講座を受講した生徒たちが放課後に自主的に 3D プリンターを使って制作を行うなど、STEAM Lab の活用に広がりが生まれてきました。今後は探究学習でも活用する生徒が増えるでしょうし、その流れは非常に良いことだと感じています」と、STEAM Lab の設置による手応えを語っています。

探究活動で制作された発電用プロペラのプロトタイプ
生徒が主体となり、学校の休業日などを使って、3D プリンターの利用法を学ぶ講座が実施されました

受け身の授業から新たな学びの場へ。そして個人の探究活動でも広がりを見せる

「従来のいわゆる PC 教室という概念は、生徒のクリエイティブ活動において対応した形式ではないと思います。クリエイティブ活動ももちろんですが、STEAM Lab を通じ、生徒がもっと主体性を持って活発に活動できる場所にしたいですね」と語る亀田教諭の思いを反映するかのように、同校では生徒の自主的な課外活動の場としての活用が大きな広がりを見せています。3D プリンターを活用した制作以外にも、龍ケ崎市をテーマにしたゲームの制作や、高性能 PC と大画面モニターを活かした動画編集など用途もさまざま。そのほかにも、同校の STEAM Lab は、マインクラフトを用いて同校の敷地内や校舎をリアルに再現し、さらに内部を VR で探検できるといった文化祭の展示で活用されました。また、ウェブサイトの制作でも活用された際には、個人的な探究活動の一環として参加した企業主催のコンテストで、SDGs 問題解決部門において最優秀賞を 2 度も受賞。生徒のアイデアをカタチにする。その一助として生徒を支え続けるクリエイティブな場として浸透していると STEAM Lab を評価していただきました。

学校全体の再現以外にも、付属中の学生が総合的な探究の時間に商店街を再現しました。
企業主催のコンテストでは、社会課題の解決とデザインの双方を同時に学ぶ機会となりました。

アイデアをカタチにする手段を生徒に伝えたい。そのために “仲間” の広がりを

STEAM Lab を設置したことで、より高度なシミュレーションや 3D モデリング、プロトタイプの作成など学びの質を格段に高めてきた同校。亀田教諭は、今度の展望として 3D ゴーグルを絡めたメタバースの作成、そして生成 AI の活用など、先端技術につながる学びについて意欲を見せます。その一方で「いまの学校教育は、どうしてもマーケティングの視点や社会課題を解決するといったソリューションを活用するという視点になっていないと感じますし、そういった視点を学校や社会に広げていくことが、これからの課題になるかと思っています」と課題感についても言及。さらに「例えば、生徒がいいアイデアを持っていても実現するにはハードルがあります。それを補う情報技術の人材はどこも不足しているので、外部との連携が必要だと思っています。また、学校教育において STEAM のアートの部分は、できる教員が少ないので弱さを感じることがあります。生徒の学びの質を上げていくためにも、そういった課題を一緒に解決してくれる “仲間” が増えてくれたら嬉しいですね」と学校教育が抱える課題、そして解決に向けた意気込みについて語りました。

STEAM Lab 導入機材


• 株式会社マウスコンピューター MousePro T シリーズ 10 台
• 28 型 4K 液晶モニター「XUB2893UHSU」、3D プリンター
• Adobe Creative Cloud 小中高校サイトライセンス
• 作ってみよう! Windows 版インストール ・ ライセンス(デバイスライセンス)