PC教室はあるものの・・・その課題とは?
えりも町の学校では従来PC教室が設置されており、一部授業では使用されていた。
しかし、授業1コマに1クラスしか利用できないことに加えて、1台のPCを2~3名で使用しており、非効率的な活用となっていた。
インストールされているOS・アプリケーション・ソフトウェアも古いタイプで、使いづらかったり、処理速度が遅かったりして授業を円滑にすすめることのボトルネックにもなっていた。ネットワークの回線速度も十分とはいえず、検索してから結果画面が表示されるまでに時間を要していた状況であった。
上述の通り、児童生徒が十分にICTを活用できる環境ではなかった。また、教員としても、ICT活用を進めたい思いがある反面、活用することで非効率的になってしまうことのギャップに悩まされていた。
このような状況とPC教室の買い替えのタイミングと、GIGAスクール構想とが重なったことを契機に、ICT環境の充実化に踏み出した。
ICT導入時に留意したのは「回線速度」「デバイススペック」「コスト」
ICT環境を充実させるにあたり、意識したことが「回線速度」、「デバイススペック」、「コスト」であるという。
・「回線速度」快適なネット環境
えりも町教育委員会が最も意識したのは回線速度である。児童生徒・教員がストレスなくインターネットによる検索などが行えるように十分な回線速度を確保できるように配慮した。
「デバイススペック」日常的に活用できる品質と量
PCについてはコストや操作性、Google for Education™ の充実度を考慮して、Chromebook™ を導入した。
また、誤操作によるトラブルリスクを軽減させるため、パートナーに依頼し、他校成功事例をもとに誤操作防止のための設定を施した。
PC以外のデバイス・備品としては、PCを管理しておくための保管庫や、PCの画面を大画面に投影できる短焦点プロジェクター及びマグネット収納式のスクリーンを導入した。加えて、PCとプロジェクターとを無線で接続などが可能な Chromecast™ も導入した。
・「コスト」費用とスペックのバランスを重視
コストについては、導入する機器・備品のスペックとのバランスを考慮しながら決定していった。
また、GIGAスクール構想の予算だけではなく、必要に応じて町の独自予算を組み合わせることで、充実したICT環境の構築が実現した。
ICT 活用・浸透に向けた工夫や取組
ICT活用は環境を整えれば自然と進んで行くものではない。えりも町教育委員会では「ICTが身近な道具となる学校環境」、「活用方法を学校単位で進める」、「Google Workspace for Education を委員会やクラブで活用」を念頭に置き、ICTとの利用頻度や接触頻度を高めることで浸透を目指した。
・ICT が身近な道具となる学校環境
ICTの活用が学校内において身近な道具となるように、幅広い場所でインターネット環境を構築した。
ルーター・アクセスポイントについてGIGAスクール構想の予算は普通教室のみに適用されるが、別途予算を捻出し、体育館や特別教室など幅広いエリアでインターネット接続が可能な環境にした。
また、短焦点プロジェクターについても一部の教室だけでは活用・浸透が進まない可能性があったため、教育委員会独自の予算で普通学級に1台を導入した。あわせて先述したように、手軽にスクリーンを設置でき片付けも手間が少ないマグネット収納式スクリーンやワイヤレスで教員PCの映像を、プロジェクターに投影できる Chromecast も導入した。
・Google Workspace for Education を委員会やクラブで活用
Google Workspace for Education を委員会やクラブ活動で利用することで、児童生徒・教員がICTと接する機会を増やした。
具体的な利用方法として学習面では、Google Jamboard™ を活用して意見交換をしたり、教員から課題を出し、児童生徒は各自の端末を用いて提出したりするなどを行った。
委員会やクラブ活動については、オンライン上で集まり、連絡や活動記録を行うようになった。校務面においては、朝の会や健康観察でも利用しているという。
授業や活動が記録されやすくなったため、活動報告などを行う際にも利用できるようになり、作業を効率的に行えるようになった。
・活用方法を学校単位で進める
ICT活用の幅は広いが、実際にどのように活用していけば良いのか悩んでいる学校は多い。そこで、えりも町教育委員会では、学校単位で活用方法を検討・実施するようにした。そこでの進行具合や気づきを共有することで、活用の可能性に関するノウハウを教員間で把握しやすく体制を構築した。
ICT活用による学校間を跨いだ交流の積極化
現在、えりも町教育委員会では、児童生徒・教員にとってICTの利用が身近になるような取組を通じて、ICTに慣れてもらうようにしている。今後は、導入から今までの情報や気づきを整理し、デバイスやサービス( Google Workspace for Education )の操作・活用に関する学習時間を確保し、リテラシーの標準化を目指す。
さらに先の将来像には、子供たち一人ひとりに個別最適化され、創造性を育む教育ICT環境の実現に向けた取組を実施していくという。
また、オンラインを活用した交流の積極化も検討しており、地域の4校合同の修学旅行の事前学習を進めて情報共有ができる仕組みや他校とのオンラインによる意見交換会などを視野に入れていると語った。
おわりに
今回のインタビューを通じて、ICT活用を浸透させるための方針として、学校にいる間であれば、いつでも、どこでも、誰でも(多くの児童生徒・教員)がICTに接続しやすい環境を用意することが重要であることを感じた。
また、多くの学校がインターネットでつながったという状況を活かして、地域や他校を巻き込んだ取り組みを行うことで、よりICT活用の可能性を感じさせられた。
ICTの浸透に悩まれている学校は、接触機会を増やすような環境づくり、活用方法を検討してみてはいかがだろうか。
Google for Education 、Chromebook 、Google Jamboard 、Chromecast は、Google LLC の商標です。