STEAM Lab 活用事例
STEAM Lab活用の目的、ねらい
自作したツール群を用いながら、体験的に情報セキュリティーサイバー・セキュリティーを学ぶ授業を展開したいと考えていました。各自のGIGA端末で行うことも検討していましたが、「高性能なSTEAM Lab導入端末と比較して、GIGA端末は処理に 3 ~ 4倍の時間が掛かってしまう」「各種ツールを生徒の端末で利用できるようにすることに対するセキュリティー上の懸念」といった理由から、STEAM Labを利用しました。
活用実績事例(サマリー)授業での活用
教科 | 学年 | 単元名 |
技術科 | 1年 | 情報セキュリティー/サイバー・セキュリティー |
1.情報セキュリティー/サイバー・セキュリティー
教科:技術科 学年:1年
【授業の目標】
セキュリティーを取り巻くさまざまな技術的要素を知る(知識・技能)とともに、情報セキュリティー/サイバー・セキュリティーについて考える際には、防衛側と攻撃側、両方の立場で考える必要があると気づかせ(思考カ・判断カ・表現力など)、セキュリティーを 科学的な原理・法則に基づいて分析しようとする態度を育む(学びに向かう力、人間性など)。【展開計画】
区分 | 学習活動 | 活用ツール |
導入 |
セキュリティーを取り巻く、ネットワークなどの技術的要素について、 子どもにとって身近なオンラインゲームの例や、CSアンプラグドの 考え方を用いて説明する |
|
展開 | 自作ツール群(ハッキングラボ)を用いて、ハッキング体験を行う | ・PC(自作ツール群) |
まとめ |
セキュリティーがさまざまな立場の人々による、いたちごっこによって、 成り立っていることを説明する |
・自作ツール群は、事前にデスクトップヘショートカットを作成するなどして準備を行っていたため、スムーズに、かつ固まることもほとんどなく利用することができました。
・実際の授業では、電子黒板を用いた説明の時間と、実際にPC操作を行う活動の時間を交互に行いました。多機能な電子黒板も導入されていたため、生徒の意見を聞きながら、授業を進めることが容易でした。
・総じていえば、STEAM Labを利用することで、生徒がストレスなく活動を行うことができ、また、対話を通じた学びを促進することができたと考えられます。




その他、活用の成果
児童・生徒・学生の感想·変容
・パスワードのハッシュ値を調べるためのパスワード解析ツールはすごくハッカー側には便利だなと思いました。でも、そのパスワード解析ツールはどこのだれがつくっているのかがとても気になりました。パスワード解析ツールはネットにはないのかということも気になりました。もしも、ネットパスワード解析ツールがあるのだとしたら、それをネットから消せばハッカーは少しでも減るのではないかと思いました。
・セキュリティーについて、前回よりも知識を増やすことができました。特に記憶に残っているのは「情報の技術はハッカーと企業などのいたちこうこで発展している」ということです。対策をすれば攻撃の技術を上げてくる・・と終わりのない戦いになってきそうだなと思いました。
・スマホのパスワードとかを4桁とか普通にしている人もいると思うけど、一瞬でバレると分かって少し怖くなりました。すぐバレないように、今日からは、数字、アルファベット小文字、大文字、記号もいれて16文字にしたいなとおもいました。
今後の課題
STEAM Labを用いて授業を行った際に、技術室で授業を行う場合と比較し、2点不便であると感じました。1点目は、すべてのPCに対し、デスクトップにショートカットを作成するなどの一括操作ができないことです。そのため、事前の準備に大変時間が掛かってしまいました。2点目は、STEAM Lab内のレイアウトです。自己調整学習などを行うには適しているレイアウトではありますが、やはり一斉教授したい場面もあり、そういった場合には適していないレイアウトであることが分かりました。こういったことは、今後の課題として引き継ぐ必要があるでしょう。
2.総合的な問題解決 バリアフリーに貢献するロボットの開発
(レーザー加工を用いた機構モデルの設計製作とコンピューター制御)
教科:技術 学年:3年
中学校学習指導要領解説では「A材料と加工の技術」における問題の解決にて、解決策を具体化する手立てとして3DCADや30プリンターを活用し試作させることが例として示されています。本単元においてもデジタル・ファブリケーション機器の活用が考えられます。デジタル・ファブリケーション機器としては30プリンター以外にもレーザー加工機があります。本単元では、解決策を具体化する際にデジタル・ファブリケーション機器としてレーザー加工機を活用することとしました。
活用実績事例(サマリー)授業での活用
教科 | 学年 | 単元名 |
技術 | 3年生 | 統合的な問題解決 |
【授業の目標】
生活や社会の中から技術に関わる問題を見出して、解決策を構想し、製作図などに表現し、試作などを通じて具体化し、実践を評価・改善するなど、課題を解決する力を身につける。【展開計画】
区分 | 学習活動 | 活用ツール |
導入 |
・本時の目標を知る。 ・前時に発表したグループの製作した試作および構想を振り返る。 |
・デスクトップPC |
展開 |
・グループ毎に設定した目標や制約のもとで、折り合いをつけて改善 および修正する方向性を決定する。 ・グループで決定した方向性を確認しながら試作の製作に取り組む。 |
・レーザー加工機 |
まとめ |
・本時のまとめ ・振り返りの記入 |










その他、活用の成果
・班のメンバーと協力して問題解決にむけて作業していくことができました。レーザー加工の知識を深めることができました。
・自分たちがこれまで技術の授業で学んできたプログラ三ングや木材の加工などのできることを多く利用することも意識して取り組みました。
・ロボットをつくるきっかけは自分のすぐ近くにあって、問題解決のためにさまざまな道具、知識を用いて作成することが大切だと思いました。また、利用者の気持ちを考えることも大切だと思いました。
・人々が何を解決したいのか人視点から見ることも大切だけど、ロボットになってみてロボット目線から考えて直さないといけないところなどを考えました。コスパや大量生産できるか、環境は良いかなどさまざまな条件を考えるのはとても難しかったけど、どれが最善なのかしっかり考えることができました。
・今までは、ロボットを作る側ではなかったので、改めてロボット1つ作ることが、こんなにも大変だと学ぶことができました。また、ロボット作りの中で、プログラ三ングを使って機構を動かしていったので、プログラ三ングの知識はこれからの人生で必要だと感じました。その知識をつけるために、高校でも学び続けたいと思います。
今後の課題
今回の実践では、デジタル・ファブリケーション機器として、レーザー加工機を使用しました。今後はレーザー加工機に加えて3Dプリンターを用いるなど、用途に応じてさまざまなデジタル·ファブリケーション機器を使い分けるなどの工夫を行いたいです。
3.材料と加工の技術 リバース・エンジニアリング 教科:技術 学年:1年
3DCADを用いて木取り図をつくる活動を通して、設計や製作を行う際に注意すべきことや製作の手順などを理解する。
活用実績事例(サマリー)授業での活用
教科 | 学年 | 単元名 |
技術 | 1年 | 材料と加工の技術 |
【授業の目標】
設計や製作を行う際に注意すべきことや製作の手順などを理解する。【展開計画】
区分 | 学習活動 | 活用ツール |
導入 |
・木材で製品を作る際にどのような手順が必要か確認する。 ・ペンスタンドの製作を例とした製作の手順についてアニメーショ ンを用いて学習する。 |
・デスクトップPC |
展開 |
・Tinkercadを用いて木取り図を作成する。 ・4つの作品例を分解する。 ・製作する際と使用する際に生じる問題を見つけてグループごと にまとめる。 ・使用する際の問題については3Dプリンターで作成した1/2サイズ の模型を活用する。 ・グループで発見した問題を全体に共有する。 |
・デスクトップPC ・3Dプリンター |
まとめ |
・まとめ、作品例を再設計するとしたらどのようにするか考える。 |






その他、活用の成果
・製作する際にどれくらいの材料で作れるのか、時間はどれくらいかかるか、使用するときのことなどを意識して取り組めばよいと思いました。
・製作する際にあらかじめ、作業工程・設計、製作するときを想定しつつ取り組むことが大切だと思いました。
・実際に起きる問題を見つけ、改善した方が良い所、改善しなくても大丈夫な所を見出しました。製作する上で設計すること、サンプルを作ることがとても大切だと実感しました。
今後の課題
今回の授業では生徒が活動を行う際に事前に準備した3Dプリンターで作成した模型を使用しましたが、今後は問題解決を行う際に生徒が設計した作品のプロトタイプを3Dプリンターで作成し製作に向けて改良や再設計を行うなどさまざまな活用方法について検討したいです。
4.総合STEAMスキル学習(全6回) 教科:美術 学年:1年
活用実績事例(サマリー)授業での活用
「総合的な学習の時間」と連携した美術科の実践として、地域の魅力を伝えるパッケージデザインを実施した。教科 | 学年 | 単元名 |
美術 | 1年 |
総合STEAMスキル学習(全6回) 第1回STEAM Labの使い方と環境設定 第2回Adobe Illustrator① 第3回Adobe Illustrator② 第4回Adobe Illustrator③ 第5回Adobe Photoshop① 第6回Adobe Photoshop② |
地域の魅力を伝えるパッケージデザイン
■ 題材の指導と評価の計画(全13時間)
第1次 | 学習課題を把握し、魅力ある地域のお土産のパッケージを調査する |
第2次 | 企画書を作成する |
第3次 |
アイデアスケッチをしながら構想を練る ①アイデアスケッチを立体に起こしてみる ②友だちから意見をもらいブラッシュアップする |
第4次 |
アイデアスケッチを基にパッケージデザインを制作する(本時1/5) ①もち麦のパッケージを制作する ②もち麦粉のパッケージを制作する |
第5次 | でき上がった作品のプレゼン資料を作成 |
第6次 | クラスで作品の発表 |
第7次 | マルヤナギや加東市もち麦活用協議会ヘデザインを提案する |
【授業の目標】
・Adobe Illustrator、Adobe Photoshopの特性を生かしながら、見通しを持って創造的に表す。・Adobe Illustrator、Adobe Photoshopの基本操作を学び、友だちと教え合いながらスキルを高める
【展開計画】
区分 | 学習活動 | 活用ツール |
導入 |
・前時までの振り返りをする。 ・本時の目標を確認する。 |
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展開 |
アイデアスケッチを基にデザインをAdobe Illustratorに起こしていく。 ・Adobe Illustratorのツールを使い、パッケージをデザインする。 内容や雰囲気にふさわしい構成や配色、文字の取り入れ方など、 Adobe Illustratorの機能を効果的に表現するよう伝える。 ・操作方法を互いに教え合う。 教え合いを勧め、友達から学んだスキルを自分の表現活動に生かすよう 助言する。 |
・デスクトップPC ・Adobe Illustrator |
まとめ |
・授業を振り返り、学んだことや感じたことを記入する。 ・用具の片付けをし、次回の制作に向けての見通しを立てる。 |
STEAM Lab 実証研究校インタビュー

兵庫県加東市に位置する兵庫教育大学附属中学校は、「教員養成フラッグシップ大学」に指定された国立大学法人兵庫教育大学の附属中学校です。教科指導における ICT 活用などの取り組みがいち早く認められ、日本教育工学協会が定める学校情報化優良校にも認定されています。そんな先進的な ICT 教育に取り組む同校に設置された STEAM Lab の活用事例について、兵庫教育大学の森山潤教授と永田智子教授にお話を伺いました。
生徒の主体的な学びをサポートする拠点となる STEAM Lab
GIGA スクール構想の一人一台端末として Chromebook を貸与している同校は、 フラッグシップ大学に指定され将来の教員を育成する兵庫教育大学と足並みを揃える形で STEAM Lab が設置されました。 STEAM Lab に含まれる高性能 PC 31 台が設置されたことで、 授業でも一人ひとりが高性能 PC に触れられる環境となった同校では、 空調をしっかりと管理することで機器の安定した動作環境も整備。さらに、 STEAM Lab 内に設けられたフリースペースでは、 意見交換や協働作業の場としても活用されるなど、 生徒が主体性を持って学習が行えるような工夫がされていることが大きな特徴です。そんな同校は、所属する教職員に対してフラッグシップ大学に指定された兵庫教育大学が持つ STEAM 教育のノウハウや考え方を学ぶための研修会を実施。将来を担う生徒たちの興味と学習意欲を駆り立てる授業デザインを行うことで、 深い学びへと結びつける取り組みにつなげています。
異なる 2 機種の活用と、新たな動きも芽生える
同校の STEAM Lab には、 生徒の数に合わせた高性能 PC だけでなく、教育実践を研究する大学の附属校という強みを活かし、 大学から支援を受けて 3D プリンターの追加や薄い MDF 素材ならカッティングも可能なレーザー加工機の導入など、 充実した機器環境を実現しています。こうした恵まれた環境下において、技術科のカリキュラムに含まれる 3D プリンターに関する知識や技術を磨き、 作品を作り上げていくことでより深い学びへとつなげています。また、 3D プリンターで出力するためのモデリングや Adobe Illustrator のようなソフトを活用したポスター制作といった高性能 PC が求められるシーンでは、同校で貸与される Chromebook を片手に STEAM Lab の PC を操作する生徒も現れるなど、 異なる 2 機種それぞれの長所を生かした活用をするといった動きも芽生え始めています。


世界や未来を変えられるかも。自己肯定感の向上も成長の糧に
同校の STEAM Lab は、 技術科の内容「D. 情報の技術」の授業を中心にさまざまな単元で活用していますが、 それだけでなく社会貢献にも活用されています。そのひとつの取り組みが中学 3 年生の技術科の 「総合的な問題の解決」 という単元で行われた “バリアフリーのお助けグッズを開発しよう” というプロジェクト。例えば、3D プリンターやレーザー加工機、そして micro:bit やギアを組み合わせる教材を使用して、 車椅子の人が開閉しやすいドアノブを作ろうという取り組みもそのひとつです。こうした取り組みを通じ、 森山教授は「世の中の課題解決など、 誰かのためにチャレンジする経験を通じて自己肯定感が高まり、 同時に自分が社会や未来を変えられるのかもしれないという気持ちを持ってくれます」 と語ります。また「こうした取り組みを行っていくうえで、教職員に対しても社会の問題解決に使える道具であることを理解していただくために、 機器活用に対するハードルを下げていくことも重要ですね」 と永田教授は、 さらなる活用に向けた取り組みの重要性についても語られました。


教職員のスキル向上。 それが STEAM 教育の質を高めることに直結する
2023 年度から本格的に導入された STEAM 教育ですが、 森山教授は 「STEAM 教育を行っていくにあたり、 STEAM Lab が活用されなかったケースもありました。 2024 年度以降は、 Lab 活用をメインとしたカリキュラムを取り入れたいですね」と意欲を語る。その一方で、「社会の課題を取り上げる STEAM 教育は、従来の総合的な学習の時間と入口が異なるということを教職員に理解してもらうことが重要になります」 と課題についても言及します。さらに、森山教授は続けて「例えば、課題解決に向けた取り組みの中で生徒からさまざまな意見が出ると思います。教職員の引き出しが多いほど、 生徒から出たアイデアに対して解決に向けたツールや機器の提案がしっかりと行えます。逆にそこができないことによって、 デザイン思考で進めていくことに対して不安を持たれます」と教職員が抱える不安についても触れ、 「これらのスキルと考え方の部分をセットで養うための研修を続けていきたいです」とインタビューを締めくくりました。
STEAM Lab 導入機材

• エプソンダイレクト株式会社
Endeavor ST50 スタンダード ・ モデル 31 台
• 27 インチ液晶モニター、 3D プリンター
• Adobe Creative Cloud 小中高校サイトライセンス
• 作ってみよう! Windows 版インストール ・ ライセンス(デバイスライセンス)
• mBot2.0_JP(Dongle 付き)(教育版、 ブルーカラー)
【国立大学法人兵庫教育大学附属中】STEAMLab活用事例集 (PDF 4.69 MB)