STEAM Lab 活用事例

STEAM Lab活用の目的、ねらい

本校では課題研究を学ぶ学校設定科目「Principia」を通じて生徒の主体的な探究活動を進め、多くの研究機関と連携しながら、日本の科学技術発展をけん引する研究者を育てることを目指しています。その中で、多言語音声翻訳や地震予知、ロボティクスなどを研究するグループがSTEAM Labの効果を最大限に活用し、「科学的リテラシーと国際性を有し、未知の課題を科学的に解決できる人材」を育成することを目指してきました。


活用実績事例(サマリー)授業での活用

教科 学年 単元名
Principia 1·2年 探究活動

活用実績事例(サマリー)授業以外での活用

学年 概要
科学部 文化祭での3Dプリンター・デモンストレーション
eスポーツ同好会 ゲー三ングPCを用いた活動
1·2年 夏期講習3Dプリンター入門講座

1.探究活動 教科:Principia 学年:1・2年


【授業の目標】

・課題解決の手法を学ぶ。
・コンピューターなどを用いだ情報の表現を学ぶ。
・社会課題の解決に向けて取り組む。

【展開計画】

区分 学習活動 活用ツール
導入   ・課題を焦点化する。
  ・仮説を設定し、研究計画を立案する。
展開   ・研究計画に従って探究活動を実施する。
  ・必要に応じて3Dプリンターで部品を作成する。
  ・PC
  ・3Dプリンター
まとめ   ・探究活動の成果をポスターにまとめて発表する。   ・Adobeソフトウェアなど

・3DCADを使用して、試行錯誤しながら必要な部材の設計を行っていました。
・3Dプリンターの出力の特性を意識していました。
・ポスター制作では、カラー・バリアフリーにも気を使いながらデザインしている様子が見られました。

生徒制作のポスタ一例
生徒がCADで作成したモデル
発表会の様子

2.文化祭での3Dプリンター・デモンストレーション 学年:科学部 活用ツール:3Dプリンター

・科学部の情報班が動物の3Dモデルをプリンターで出力し、その様子を実演しました。
・来場者は動作の様子を珍しそうに見学していました。
・放課後も3Dプリンターを自由に使えるようにしたことで、授業中に制作しきれなかった部材などを積極的に作成する様子が
 見られました。

3.ゲ一三ングPCを用いた活動 学年:eスポーツ同好会 活用ツール:ゲーミングPC

・ノート型ゲー三ングPCを活用し、放課後の短い時間でも活動が可能になりました。
・部員数に対しては、依然としてPCが供給不足の状態にありますが、自宅からのオンライン参加を含めることで状況は大きく
 改善されています。
・活動頻度が向上したことで、他校との交流や、外部大会への参加が活発化されました。

4.夏期講習3Dプリンター入門講座 学年:1.2年 
  活用ツール:ゲ一三ングPC、3Dプリンター、3DCAD

・希望者を対象にした夏期講習で、3回シリーズで実施しました。
・ゲ一三ングPCの処理能力を活かして、3Dのモデリングを実施しました。
・初回は3Dプリンターの動作機構等を学習、2回目は単純な図形を組み合わせて3Dピクトグラムのモデリング、3回目はCADの
 機能を使って生徒が希望をするものを作成しました。

その他、活用の成果

教員の感想・変容

【感想】
・PDFの編集がスムーズにできて便利。
・30プリンターを使うことによって、2次元にはない空間的な思考が伴う活動ができてよいと思った。
・モノは素晴らしいが、授業にどう組み込めばよいかなかなか想像がつかない。

【変容】
・以前と比べて、生徒にICTを活用させようとする場面が増加した。

児童·生徒·学生の感想·変容

【感想】
・自分のPCよりも処理が早くで快適。
・学校に3Dプリンターがあるなら、他のみんな(生徒)ももっと使えばいいのに…。
・(3Dプリンターの)動きは意外とアナログなんですね。

【変容】
・放課後などを使って3Dプリンターの使い方を聞きに来る生徒が出てきた。
・探究活動で、ゲー三ングPCを使ってVRトレーニングを行う生徒が出てきた。
・eスポーツ同好会の活動が活発になった。

その他

報告者の体感としては、教員よりも生徒の方がSTEAM Labの環境をスムーズに受け入れて活用していたように思います。 STEAM Labの2年間で、本校のICT環境の改善が一層進み、生徒自ら、その渫境を積極的に活用して学習や課外活動に取り組むようになりました。

今後の課題

・STEAM Lab契約満了に伴って譲渡いただいた物品については、今後も活用させていただきます。一方で、Adobeのソフト
 ウェアは、校内で予算の承認がされなかったため、4月末をもって使用を停止することになりました。これまで予算措置が
 されていなかった事項について、新たに予算建てをすることに現場としては困難があります。
・今年度、県教育委員会の指定事業「STEAM教育研究推進校」の最終年度を迎えますが、依然としてすべての教員がSTEAM教育
 を含め、探究的な活動に対して意欲的、積極的に活動できている状況ではありません。教員に対する意識面での普及活動が今後
 も必要です。

STEAM Lab 実証研究校インタビュー

神奈川県立横須賀高校は、 明治 41 年に開校した神奈川県立第四中学校を前身とする伝統校。卒業生には、 小泉純一郎元首相をはじめとした政財官界、 そしてノーベル物理学賞を受賞した故 ・ 小柴昌俊博士など、幅広い分野で有為な人材を多数輩出してきた学校です。そんな同校は、 平成 28 年からスーパーサイエンスハイスクール事業に指定され、さらに令和 4 年度から STEAM 教育研究推進校にも指定されたことで、 STEAM 教育をさらに加速。それに伴い STEAM Lab を新たに設置した同校の中川玄教諭に STEAM Lab の活用事例についてお話を伺いました。

スーパーサイエンスハイスクール、その学びを支える STEAM Lab

2009 年から ICT 機器の導入を行ってきた同校。しかし、 毎年機器の追加を行っていても概ね 4 人に 1 台程度の台数となっており、 無線通信環境についても 2 部屋に 1 つ程度と決して恵まれた環境ではありませんでした。しかし、 スーパーサイエンスハイスクール(SSH)や STEAM 教育研究推進校としての指定を受けたことにより ICT 機器や通信環境の拡充に本格的に着手。その一部が、BYOD による生徒一人一台 PC の導入や、今回の STEAM Lab の設置で、こういった取り組みによって同校の生徒を取り巻く ICT 環境の整備が行われてきました。また、同校は神奈川県横須賀市に多く存在する研究機関と連携しながら SSH としての教科を横断した探究活動を行っており、 学校独自の設定科目として「Principia」と呼ばれる課題研究が設けられているのが大きな特徴です。STEAM Lab は、 そういった活動の拠点として活用されているほか、 教職員に対する STEAM 教育の研修、 生徒たちに対する夏期講習といったシーンでも活用されていると中川教諭は語ります。

「自学自習 ・ 自主自律」 の伝統のもと、 高い能力を持った生徒たちが日々学習に励んでいます
同校ではさまざまな教室を設置し、 生徒たちの学習活動を支援しています

地元の研究機関と提携し、より深い探究活動を実施

神奈川県をはじめとし、国からの取り組みにも認定される同校は「未知に、挑もう」のスローガンを掲げ、研究機関と連携した探究活動も盛んに行われています。その取り組みのひとつが JAXA (宇宙航空研究開発機構) と連携した探究活動です。生徒たちは、 授業の一環として同機構と連携し既存バルブの留め具を制作。こういった活動を通じて、より深い学びを実践していますが、その留め具の制作に活用したのが STEAM Lab の 3D プリンターであり高性能な PC です。中川教諭は 「生徒が持つ BYOD 端末では、 スペック的に 3D モデリングを行うのも厳しい状況でした。また、 画面のサイズも小さいため使いにくさを感じることもありましたが、 STEAM Lab の PC なら性能が非常に高く、 ストレスのない作業を実現することができました」 と STEAM Lab の機器について評価いただきました。また、 BYOD 端末では行えなかったeスポーツも行うことができるようになり、同好会活動が活発化するなど、さまざまな場面で STEAM Lab の PC が活用されています。

モノがあるから「できる」。その強みが深い探究への繋がりに

中川教諭は、 STEAM Lab の導入について「公立高校の場合、 3D プリンターのような高額な機器は、 目的を明確にしないと導入が難しいケースがあります。しかし、 機器が手元にあれば目的はなくとも “できる” ことが増えますので、 STEAM Lab の存在はありがたいですね」と語ります。また 「3D プリンターの場合、 設計は画面内において 2 次元で行われますが、 出力されるものは 3 次元となります。それによって空間座標の概念という数学的な知識に加え、 造形やアートといった内容にも結びつきます。これも教科横断の探究のひとつですね」と、 機器が手元にあるからこそでき、そして深まる学びについても語ります。また同校では、授業や課外活動以外でも STEAM Lab が活用されています。文化祭でのデモンストレーションをはじめ、週 3 回の活動を行うeスポーツ同好会では、eスポーツに注力する横須賀市とも連携。同市を冠したチーム名で全国大会に出場するなど対外的な活動も積極的に実施され、 スカラシップに選ばれる生徒を輩出するといった実績も残しています。

令和 4 年度の文化祭で 3D プリンターを活用したデモンストレーションが行われました
美術室 (第 2 サイエンスルーム) に設置された STEAM Lab で活動に励むeスポーツ同好会

公立校ならではの課題と向き合い、 さらなる学びにつなげたい

BYOD による一人一台端末の実現に加え、快適な通信環境の整備、そして STEAM Lab の設置といった具合に、 同校では ICT 環境整備が積極的に行われてきました。しかし、 その一方で「カリキュラムに沿って教科書の内容を終わらせる必要があるうえに、 進学校ということで授業を早く終わらせなければなりません。そういったなかで教科横断型の STEAM 教育をどう取り込んでいくのかがひとつの課題ですね」と、 STEAM 教育を進めるうえで、 解決すべき課題があると語ります。中川教諭は続けて「また当然ですが公立校は貸与された機器をなくさない。という徹底した管理が求められます。そのため、機器の管理は厳重になり、生徒が自由に機器を使えないという状況もあります。生徒たちは ICT 機器活用に対して意欲を見せてくれているので、 管理する側の教職員としても積極的に使える環境を整えていくことが大切になると思います。また公立校は年度ごとに教職員が入れ替わるため、 学校としての方針を引き継ぐための枠組みづくりも重要だと思います」と学校としての課題にも触れ、インタビューを締めくくりました。

STEAM Lab 導入機材


• 株式会社サードウェーブ
 GALLERIA UL7C-R36 5 台
• 3D プリンター
• Adobe Creative Cloud 小中高校サイトライセンス