STEAM Lab 活用事例

STEAM Lab活用の目的、ねらい

・本校では、STEAMを単純な教科横断とは捉えず、多角的視点から深い学びの実践を目指しています。
 また、関西学院大学との接続の強みを生かし、高大連携授業では大学生と一緒に受講して試験も同様に受けるなど、
 入学前に単位を取得することができる制度が整備されています。
・高校在学中にAl活用に関する最先端の研究に触れることができるなど、さらに高度な学びにもチャレンジが可能です。
・STEAM Labを活用することで、さまざまな分野の探究学習を支えるクリエイティブな環境に期待しています。
 高校情報科の授業では、Adobe Creative Cloudのライセンスが1人ずつ与えられ、Adobe IllustratorやAdobe Photoshop、
 Adobe Premiere Proなどもフル活用しています。これらのプロツールでクオリティーの高いアウトプットを目指すことが
 可能です。そのベースを支えるSTEAM Labは、パワーを必要とする映像処理などでも十分に力を発揮することを期待します。


活用実績事例(サマリー)授業での活用

教科 学年 単元名
情報 高校1-3 コンテンツ・テクノロジー
情報 高校1-3 データサイエンス
情報 高校1-3 デジタル・エンジニアリング
技術 中学1 Tech Basics

活用実績事例(サマリー)授業以外での活用

学年 概要
中高 eスポーツ部

1.コンテンツ・テクノロジー 教科:情報 学年:高校1-3


【授業の目標】

Emotionalコンテンツを通しで情報デザインを学ぶ。

【展開計画】

区分 学習活動 活用ツール
導入   ・感情の科学化
  人々の心を揺さぶる要素を科学的に探究し、それをコンテンツ制作に
  活かす能力を身につけます。「エモーショナルな要素」とは一体なんで
  しょう?

  ・偶然と必然の計算
  偶然と必然の要素を計算し組み合わせ、メディア制作の側面から
  アプローチします。それらを芸術的な表現に結びつける技術を身に
  つけます。

  ・自己表現とクライアントのニーズヘの対応
  自身の世界観や価値観を表現するメディアを制作する一方で、
  クライアントのニーズを理解し、新たな価値あるメディアを提供する
  能力を養います。自己表現とクライアントの要求をバランスよく融合し、
  新しい価値を生み出すスキルを身につけます。
  ・Adobe Express
  ・TouchDesigner
  ・Strudel REPL
  ・Adobe After Effects
展開   『エモい』を探究したコンテンツ制作
  【目標】
  ・ターゲットを明確にする。
  ・トリガーとなる原体験を見つけメッセージを作る。
  ・メッセージを表現として作り込む。

  【条件:次のものを組み合わせること】
  ・画像生成Al(基本はAdobe Firefly)
  ・TouchDesigner(ビジュアル・プログラ三ング)
  ・Strudel REPL(音楽プログラ三ング)
まとめ   「エモい」とは、漠然とした感情表現ではあるが、どのように捉え表現したか、
  また、「画像生成Alはクリエイティビティーを持ちうるか」を議論。

2.データサイエンス 教科:情報 学年:高校1-3


【授業の目標】

データの活用から分析方法を学び、洞察力を身につける。

【展開計画】

区分 学習活動 活用ツール
導入   情報Ⅰ「データの活用」から、情報Ⅱ「データサイエンス」をシームレス
  につなぐ学びについて、探究的な切り口で行う。
  ・jSTAT MAP
  ・XLMiner Analysis
     ToolPak
  ・Adobe Premiere Pro
  ・Adobe Express
  ・Adobe Illustrator
展開   学習者は、GIS(地理清報システム)から各種統計データを可視化展開 して課題を発見し、
  ディスカッションを通じて仮説を構築する。
まとめ   統計的な検証から考察·発表へとつなげる。

授業の構成

・コース:「情報l」の「データの活用」と「情報II」の「データサイエンス」を中心としたカリキュラム。
・目的:データを収集·整理・分析し、情報通信ネットワークや情報システムの活用力を養う。
・内容:基本統計や相関分析、単回帰分析を学ぶ。
    GIS(地理情報システム)を用いたデータの視覚化と分析。
    重回帰分析を通じて複数データの関連性を理解。

授業実践の詳細

・ツールの選定:jSTAT MAP:統計データを地理的に表示し、多様なデータレイヤーを重ね合わせて分析。
        XLMiner Analysis ToolPak: Googleスプレッドシートのアドオンとして、記述統計や回帰分析、
        t検定、ANOVA、相関分析などを行う。
・学習活動:データの収集と分析(イントロダクション、形態素解析、社会における情報システム)。
      jSTAT MAPと重回帰分析の演習。
      データサイエンス探究(前半と後半)と中間発表、フィードバック。
      研究ポスター・プレゼン動画の制作、発表、相互評価。

学生の反応と成果

・探究的学習:学生が自ら課題を発見し、データを収集・分析するプロセスを重視。
・評価の観点:データ収集方法、データの可視化、重回帰分析の適用、結果の解釈、結論と発表、イノベーションと改善。
・反省とリフレクション:学生はデータの採取や整形の大変さ、データの可視化の重要性を学び、研究課題の結果についての
            考察を深めた。

特にGISを活用した分析の場面では、STEAM LabのハイスペックPCを活用。また、プレゼンポスター制作や動画編集なども BYODではスムーズにいかないところで大変活用できた。

jSTAT MAP
XLMiner Analysis ToolPak
プレゼンテーション動画の例
生徒リフレクション
探究ポスターの完成例

3.デジタル・エンジニアリング 教科:情報 学年:高校1-3


【授業の目標】

3D技術を探究した課題解決デザイン

【展開計画】


区分 学習活動 活用ツール
導入   ・3D技術の発展について理解する。
  ・その延長にある「メタバース」の技術的·文化的なバックグラウンドを
     理解考察する。
  ・メタバースにおける3Dコンテンツの柱をなす「ワールド制作」に触れ、
     その手順・スキルから、課題解決の学びにつなげる。
  ・Blender
  ・Unity
  ・cluster
  ・NTTDOOR
展開   『メタバース探究』
  1.テーマ選定の動機(リサーチ・クエスチョン/問い)
  2.テーマについての社会背景
  3.私たちの解決したい問題(Why?メタバース)
  4.検証方法(clusterイベントで解決できること)
  5.今後の課題
  6.参考文献
まとめ   clusterイベントを開催して、レポートする。
Blenderやclusterを使った 3Dモデリング・メタバースのワールド制作

4.Tech Basics 教科:技術 学年:中学1


【授業の目標】

 情報の技術

【展開計画】

区分 学習活動 活用ツール
導入   ●目的の説明
  ・授業の目的は、Tinkercadを使って学校の公共空間(玄関、図書館、
     食堂など)に「あったらいいな」と思うものを3Dモデリングすること。
  ·3Dモデリングの基本概念、他者視点の重要性、課題解決のプロセスに
     ついて簡単に紹介。

  ●ツールの紹介
  ・Tinkercadの基本操作方法をデモンストレーション。
  ·USDZ形式へのエクスポート方法と、iPadのAR機能を使ったプレゼンテ
     ーションの仕方を説明。

  ●アイデア出し
  ・Tinkercadの基本操作方法をデモンストレーション。
  ・ブレインスト一三ング・セッションを行い、生徒たちが「学校の公共
     空間にあったら喜ぶもの」のアイデアを出し合う。
  ・各自が1つのアイデアを選び、モデリングの計画を立てる。
  ・Tinkercad
  ・iPad AR
展開   ●目的の説明
  ・各生徒が選んだアイデアを基にTinkercadでプロトタイプのモデリングを始める。
  ・教師は各生徒をサポートし、技術的な質問に答えたり、デザインのフィードバックを提供。

  ●他者視点の取り入れ
  ・各生徒が他の生徒のモデルを見てフィードバックを提供。
  ・フィードバックを基に、自分のモデルを改善。

  ●課題の洗い出しと解決策の議論
  ・完成したプロトタイプを見ながら、実際にそのアイデアを実現する際のハードル(技術的な課題、
     コスト、実現可能性など)についてディスカッション。
  ・課題をどのように解決するか、実現可能な方法を考える。
まとめ   ●プレゼンテーション
  ・完成したモデルをUSDZ形式でエクスポートし、iPadのAR機能を使ってプレゼンテーションを
     行う。
  ・各生徒が自分のモデルの特徴、改善点、実現可能性について発表。

  ●フィードバックとリフレクション
  ・プレゼンテーション後、クラス全体でフィードバックを共有。
  ・授業全体を通しての学びを振り返り、他者視点、30モデリング、課題解決の重要性について
     再確認。

  ●次のステップ
  ・興味のある生徒には、さらに詳細な30モデリングの学習や、実際にプロトタイプを作成する
     プロジェクトを提案。
  ・学校の他の公共空間や、他の分野での応用についても考えさせる。

中学1年生でも、STEAM Labを活用して、今まで以上にレベルの高いことに取り組むことが可能であると気づいた。この段階から、創造性が制限されないスペック環境で没頭できることは、この先にどのようなよい影響があるか、楽しみである。

5.eスポーツ部 学年:中高 活用ツール:Steam

その他、活用の成果

教員の感想·変容

技術科·情報科の教員だけでなく、理科でのシ三ュレーション・数学での図形理解で3Dプリンターの使用など、まさにSTEAMの中心となる教科での活用が広がった。

児童·生徒·学生の感想·変容

まず、ハイスペックPCに対する生徒たちの興味関心は高く、自分のBYODでは実現が難しい部分について、STEAM Labに行けば、クリエイティブなものを創ることができると感じていたようだ。
また、生徒同士、さまざまなバックグラウンドの違いがあっても、放課後の居場所としての役割にもなっていた。3Dプリンターに興味を持つ生徒も多かった。

保護者・地域の声

PTAでの活動で、PCが必要な時に活用していただいた。このような設備が整っていることに大変驚かれ、また充実した教育環境であることへの喜びの声があった。
また、地域の小学生を招待して、本校生徒たちによる「3Dモデリング体験ワークショップ」や、「eスポーツ体験ワークショップ」が開かれて、大変好評であった。

今後の課題

現在は、故障もなく快適に使わせていただいています。やはり、継続してラボを発展させていく予算について、学校独自では限界があるため、外部の助成金を獲得できるようなことも視野に入れなければならない。
また、3Dプリンターは授業で一斉に使用するには難しい(時間がかかる)。そのため、ラボには「レーザーカッター」が設置されることが望ましい。

STEAM Lab 実証研究校インタビュー

1991 年に設立された関西学院千里国際中等部 ・ 高等部は、 大阪府箕面市に位置する学校です。開校当初から国際バカロレア(IB)の理念を取り入れた対話型および思考型の学習を重視した授業を展開。また、 幼稚園から高校 3 年生までが通う関西学院大阪インターナショナルスクールも併設し 「Two Schools Together」というスローガンを掲げ、多国籍、多文化、多言語という教育基盤を持っているのも大きな特徴です。さらに、 関西学院大学と連携した高度な教育を提供。そんな同校に設置された STEAM Lab を活用した教育事例、そして教職員の活用について、同校の西出新也教諭にお話を伺いました。

さまざまな環境が交錯する BYOD 環境の課題を補い、より高度な学びに

同校は、同じ敷地内に併設されるインターナショナル ・ スクールと 2 校でひとつの存在として、教室や施設を共有し、授業や行事、そしてクラブ活動を実施。中等部以上の生徒からは一人一台の PC 環境実現のため、 BYOD が導入されており、 ほとんどの授業において ICT を活用した授業を展開しています。 Google Workspace for Education が導入されているため、 授業の管理は Classroom で行われ、 普段の授業はもちろん、 コロナ禍でもスムーズな授業運営が行えたと西出教諭は語ります。そんな同校ですが、 BYOD によって生徒が利用している環境もスペックもさまざまであることから、 生徒たちがクリエイティブな表現をしたいと思っても、 アプリを統一することが難しく、 ブラウザーベースで完結しなければならないという課題があったと西出教諭は振り返ります。学校のなかで、 個人の端末を超えるハイスペックな PC と統一した環境を提供したい。 STEAM Lab の設置には、その実現に向けた想いが込められています。

校内の教室は改修が進み、 開放的な空間に。より学習者を中心とした学びの環境が整っています。
Adobe Creative Cloud が導入されているため、 生徒の想像をシームレスにカタチへと変えられます。

BYOD 端末の不足を補うことで、実践的な作業もスムーズに

BYOD によって中等部から一人一台の PC 環境が整っている同校。しかし、 「生徒の創造をカタチにする動画やイラスト作成ツールなど PC に大きな負荷がかかるソフトウェアを利用する場合、 BYOD の端末では動作が重くなる、動かないといった課題を抱えていました。とくに情報科を選択した生徒は、Adobe の Creative Cloud を活用して動画を作成するといった授業も展開されるため、 より高性能な PC 環境が必要とされていますね」と西出教諭は振り返ります。そういった課題も STEAM Lab の高性能な PC で解決し、 快適な授業展開が行えていると評価いただきました。また 3D プリンターは、 数学や理科といった教科で使用する 3D モデルの作成、 そして技術科 ・ 情報科の 3D モデリングに関する授業では、 時間の都合で AR 出力を主に行っていたものの、 希望する生徒に対して STEAM Lab を開放し、 自由にプリントできる環境を整えるなど、 より深い学びに繋げる配慮が行われました。

新たな表現、そして学びの場としての STEAM Lab

教壇に立つ以外にも学内のラーニング ・ テクノロジー ・ コーディターとして活躍される西出教諭に加え、 校内に SE が常駐する同校。 STEAM Lab の機器設置やソフトウェアの設定などはスムーズに行えたものの、機器追加に伴う電源の確保やセキュリティーに関する折衝などに少し苦労したと西出教諭は振り返ります。そういった課題を乗り越え、 従来の BYOD 端末では難しかった 3D の VR モデリングを活用したプレゼンの実施や、 同校のウェブサイト来訪者をデータ分析し、 ウェブサイトの課題や解決までのプロセスを学ぶ 「データサイエンス」 のカリキュラムをAdobe と共同で開発した際にも STEAM Lab を活用いただきました。これらのカリキュラムを通じて企業や官公庁などで必要とされるプレゼンの表現手法を学ぶだけでなく、 データサイエンス分野で実際に使われる「Adobe Analytics」 で課題解決プロセスを学ぶことで、 情報社会を構成するデータ利活用の重要性に対して主体性を持って関われる人材育成が期待されます。

Adobe と共同で開発したデータサイエンスのカリキュラムでは、実践的な学習が展開されています
新たな表現手法の学びにも STEAM Lab の機器が活躍しています

授業だけでなく、学校の垣根を超えた交流の場としても活用

同校の STEAM Lab は、課外活動においても活用が進んでいます。そのひとつが、eスポーツ部の創設です。「キャンパス ・ アクティビティ ・ コーディネーターが各種調整を行ってくれたお陰で、 創設が実現できました。中学生と高校生、 そしてインターナショナル ・ スクールの生徒が一緒になって活動できる機会を得たのは大きいと思います。また、 生徒の居場所が増えたということも実感できます」と西出教諭は語ります。バックグラウンドが異なる生徒であっても放課後のeスポーツ部ならスムーズに参加でき、 友達との交流を深めるだけでなく活躍もできる。そんな生徒の輝ける場所の提供、 そして同校が掲げる、 ふたつの学校は一体であるという理念とスローガンを体現化し、 学校の垣根を超えた交流の中心地となる STEAM Lab の在り方を実践した事例となりました。

2 校の生徒が一緒に活動するeスポーツ部。生徒の居場所となり輝ける場所となっています

STEAM Lab導入機材


• 株式会社ユニットコム(パソコン工房)
 第 11 世代インテル® Core™ i7-11700F プロセッサーとNvidia Geforce RTX Ti 搭載
 ミドルタワー ・ ゲーミング PC LEVEL∞ R-Class LEVEL-R959-LC117F-SAX 10 台
• 27 インチ液晶モニター、 3D プリンター
• Adobe Creative Cloud 小中高校サイトライセンス