STEAM Lab 活用事例

STEAM Lab活用の目的、ねらい

本校は開校当初よりSTEAM教育に注力してきました。生徒の自由な学びや探究を推奨し、各自が持ち込むBYODのPCと併用しながら、STEAM Labを活用しています。
各種機器を活用した制作工房として、当初導入された3Dプリンターに加え、レーザーカッターやガーメントプリンターなど、生徒が必要に応じて機器を使用しています。
本校では、STEAM Labをデジタルデザイン室に設置しました。必要に応じて3Dプリンターやレーザーカッターは作業場所に移動するなど柔軟に活用を広げています。また、大型の画面を活かし、映像制作や作品展示の場としても使用しています。


活用実績事例(サマリー)授業での活用

教科 学年 単元名
探究 高1・2 STEAM Lab· Media Arts
理科 中2~3 生活の科学プロジェクト
理科 中2~3 ものづくりプロジェクト
美術 高1 メディアアートの種
探究 中1~高2 テーマラボ・水中ロボット制作
探究 高1~2 ドキュメンタリー映画制作ラボ

活用実績事例(サマリー)授業以外での活用

学年 概要
中1・中3・高1
高1
全学年
DaltonExpo·授業作品展示·上映
DaltonExpo・アジア研修報告のためのTシャツ制作
各自課題のための利用

1.STEAM Lab· Media Arts 教科:探究 学年:高1・2


【授業の目標】

Adobe Creative Cloudのさまざまなアプリケーションを駆使し、AR(拡張現実)のデジタルアートを制作しながら次の4つのカを身につけます。
①プロクリエーション・ツールを使用できるようになる
②メディア芸術の作品をつくることができる
③学校や世代を超えた「交流」「学び」の場を創出できる
④学んだことを自発的に発展させていく

【展開計画】

後期(10月~3月) 使用ツール ・Adobe Creative Cloud

授業の様子
毎週新たなAdobe Creative Cloudのソフトウェアを1から学び、自分の作品制作につなげられるよう演習を行いました。日常目にするCM、Music Video、映画など、どこにどんなソフトウェアが使われているのか、技術が使われているのかを学びながら、プロが使うソフトウェアを用いて学習に取り組みました。授業では、初めて使うソフトウェアに難しさを感じる生徒もいましたが、講師にすぐに聞ける環境があり、また生徒同士もお互いに分かる部分を教え合い、補いながら授業が進んでいきました。Media Artsに特化した授業だからこそじっくりと、取り組むことができ、最後の発表では、学んだ技術を用い、それぞれが自分に合った表現方法で作品制作ができました。

2.生活の科学プロジェクト 教科:理科 学年:中2~3

中学理科のプロジェクト「生活の科学(2023年度)」では生徒自らが考案した実験用具や構造モデルを作成しました。
使用ツール  ・レーザーカッターHAJIME、HARUKA

ものづくりプロジェクト 教科:理科 学年:中2~3

「ものづくり(2023年度)」は、誰かのためのものづくりを意識して制作をしました。センサーやモーターを利用したピタコラ装置を作成する際に、オリジナルレールやパーツを出力したり、自分の考案したものづくりにおいて必要なパーツを出力しています。 MDF材·アクリルともに材料の特性を利用して工夫している姿が見られました。
使用ツール ・レーザーカッターHA」|ME、HARUKA
      ・30アプリケーション:Minecraft、Tinkercad、Blenderなど

4.メディアアートの種 教科:美術 学年:高1

『メディアアートの種』という単元では、グラッフィック・デザインを選択した生徒がガーメントプリンターを使って制作しました。
使用ツール ・RICOH Design Software

5.テーマラボ・水中ロボット制作 教科:探究 学年:中1~高2

水中ロボットのパーツ作成に3Dプリンターを活用し、コンペティションを行いました。
・今年度は、3Dプリンターは主に最終課題で使っていました。
・1年生から積極的に使っていたことが印象的でした。

6.ドキュメンタリー映画制作ラボ 教科:探究 学年:高1~2

映画監督から指導を受けながら、本格的なドキュメンタリー映画を制作しました。この中で、Adobe Premiere Proの編集時に大画面と高性能のPCが役立ちました。

7.DaltonExpoで授業作品展示·上映


学年 概要 使用ソフトウェア
中1・中3・高1   3月のDaltonExpo(学習成果発表会)で、中学・高校の情報の授業で
  生徒が制作した作品を展示·上映する場として活用しました。
• Google Chrome

8.DaltonExpoでアジア研修報告のためのTシャツ制作


学年 概要 使用ソフトウェア
高1   アジア研修の報告活動のために、Tシャツをデザインし、
  ガーメントプリンターで印刷しました。
• Canva
• Adobe Photoshop
など..

9.各自課題のための利用


学年 概要
全学年   生徒たちは各自のiPadやノートPCを使用して制作していますが、映像編集や3D制作、
  プログラミングなど、全体を見て制作する時に、大きな画面を利用できるSTEAM Labの
  PCを利用して作業の効率をあげていました。

今後の課題

今後の課題は、自律度の高い学習渫境をどう進化させるかということです。
教科や担当によらず、生徒が必要に応じて機器を使用していくために、追加機器の購入と並行して、動画マニュアルなどの準備を進めていく予定です。
また、次の利用に向けて片付けまで貴任をもって行う流れを作るために、掲示や報告など複数の工夫が必要になると考えています。また、来年度に向けて、Windows 11へのアップグレードが必要なので、環境設定復元アプリケーションや機器設定の見直しは、管理面での大きな課題になっています。
生徒が自ら進んで取り組める環境を作り、活用を広げていきたいと考えています。

STEAM Lab 実証研究校インタビュー


東京学園高等学校を前身とし、 2019 年に開校されたドルトン東京学園 中等部・高等部は、 東京都調布市に位置する男女共学校です。「自由」と「協働」の 2 つの原理に基づく「ハウス」「アサインメント」「ラボラトリー」を軸とし、一人ひとりの知的な興味や旺盛な探究心を育て、 個人の能力を最大限に引き出す「ドルトンプラン」と呼ばれる教育メソッドを取り入れた教育が大きな特徴。予測不能な現代社会において主体的に課題と向き合い、 他者と協働して解決する力を養うための教育の一環として設置された「STEAM Lab」活用について、西澤講師にお話を伺いました。

従来のカタチにとらわれない学習空間 「STEAM 棟」を新設

全校生徒が個人所有の端末を持ち込む BYOD(Bring Your Own Device)を採用した同校では、BYOD 環境を補完する場として、STEAM Lab が設置されました。さらに、 同校では教科や授業のカタチにとらわれないクリエイティブな学習空間を持つ 3 階建てとなる新校舎 「STEAM 棟」 を2022 年に新設。1 階は 「クラフト ・ ラボラトリー」 としてデジタルデザイン室、 技術室、 美術室といった創作に関わる設備を設置。3 階は「サイエンス ・ラボラトリー」として物理、化学、生物などの実験室などを設置。そして、学習活動の基盤となる 2 階にライブラリーをはじめ、展示やプレゼンテーションの場となる 「ラーニングコモンズ」 を設置。大人数での学習や少人数のグル ープ、 個人といった具合に、 それぞれの学びに適した環境を持たせ、 授業はもちろん自由学習などで活用されています。高性能 PC や 3D プリンターなど最新鋭の設備を備えた STEAM Lab は、 芸術 ・ 工芸系の特別教室を構える 1 階に設置。生徒たちの知的好奇心の刺激はもちろん、 探究に関する授業や創作活動を支える存在としての一端を担っています。

BYOD 端末と STEAM Lab を併用し、複数作業の効率化を実現しています
探究授業で発表するパーツ作成など、 3D プリンターが中学 1 年生から積極的に活用されています

独自の教育メソッドに STEAM を取り入れる。その輪に STEAM Lab を活用

同校では、学習者である生徒が自身で「学びを設計し、深め ・ 広げ、発信する」といった一連のプロセスを習熟させる教育メソッドが取り入れられており、 主体性のある学び、探究 ・ 挑戦し続ける姿勢をサポートしています。西澤講師は「本校では、 これから社会と関わるための手掛かりとして STEAM 教育を捉えています。とくに Art が大きなポイント。だからこそ、表現力の育成が非常に重要で、それを主体的に学べるのが STEAM 教育だと感じています」と STEAM 教育への想いと重要性を語ります。そんな同校の STEAM Lab は、 生徒が中学 1 年生から使用する BYOD 端末と併用しながら活用。西澤講師は「STEAM Lab の PC は高性能で 3D プリンターも設置されているので単なる学習だけでなく “モノ” として残せるのが大きいです。専門学校や大学などでしか使えないようなアプリケーションにも触れられます。さまざまなテクノロジーの情報が手軽に入手できるいま、刺激を受けたらすぐに試せる環境があるのはありがたいですね」と語ります。

机の上だけの学びではなく、モノとして残して習熟度を高める

生徒の主体的な学びを重んじる同校は、 “いつ、 どういう学習をするのか” を組み立てて行く、 いわゆる自由進度学習を取り入れています。とくに理科に関する授業で大胆に取り入れられ、 生徒自らが設定した課題の実現に向けて学習を進める中で STEAM Lab が活用されています。その取り組みのひとつが、 中等部で行われた「生活の科学プロジェクト」や「ものづくりプロジ ェクト」。生徒が自ら考案する実験器具や構造モデルをカタチにする。誰かのためのものづくりを意識した制作活動を行う。そんな実践的な授業において、STEAM Lab の 3D プリンターをはじめ、同教室に設置されたレーザーカ ッターなどが利用されています。また、 高等部の探究学習の中には、 Adobe Creative Cloud を駆使し、AR のデジタルアートを制作する講座があります。この講座では、「プロ ・ クリエーション ・ ツールを使用できるようになる」「メディア芸術の作品をつくることができる」 「学校や世代を超えた 『交流』 『学び』の場を創出できる」「学んだことを自発的に発展させていく」といった 4 つの力を育成。こういった学びの場として STEAM Lab が活用されました。

プロの現場で広く使われる Adobe Creative Cloud を駆使して制作された AR のデジタルアート
学校行事の DaltonExpo で着用する T シャツの制作にも STEAM Lab が活用されました

AI 時代を生きる生徒の STEAM 教育。そのプロセスの共有が重要

独自の教育メソッドに STEAM 教育を積極的に取り入れる同校ですが、 西澤講師は今後の展望について「本校は、 先生方が生徒のためになる学習であれば生徒たちとともにチャレンジしていく学校です。その中で、今後は AI をどう活用するかが課題になると思います。年齢制限でセーブが掛かっている状態ではありますが、すでにかなり生成 AI を使っている生徒もいるので、 このあたりをどう STEAM Lab の中で取り組んでいくか。そこを考えるフェーズに来ていると思います」と語ります。また「本校だけでなく、 多くの学校において STEAM 教育は、 プロセスが残りにくいといった一面があると思います。最初の目的やゴールとしての成果物や発表については共有されていても、教員が個々に記録しているプロセスについては、共有する時間が取れないといった課題があると思います。本校では学習成果発表会として「DaltonExpo」を開催しており、そこで各教員の取り組みを知ることができるのですが、 プロセスがより共有できると STEAM へのアプローチがもっと見えてくると思います」と現在の STEAM 教育が抱える課題、アプローチの広がりについても言及し、締めくくりました。

STEAM Lab 導入機材


• 株式会社日本 HP
 EliteDesk ・ Elite One シリーズ
 HP EliteDesk800 G6 TWR/CT 15 台
• 27 インチ液晶モニター、3D プリンター