STEAM Lab 活用事例
STEAM Lab活用の目的、ねらい
本校では工業技術科の科において3年前にものづくりコースとデザインコースに再編をしました。再編後はこれまでの学習形態よりも多く実習を取り入れたカリキュラムとなりました。STEAM Labでの提供設備、ソフトウェアのリソースを最大限に活用しながら、生徒の主体的かつ教科横断型の学びを促すことを目的に取り組みました。
1つの大きなねらいとしては、これまで本校で導入したコンピューターでは、性能の面などからソフトウェアの使用に制限が出ることが多々あり、学びが制限される場面がありました。今回のこのLabの導入により制限がない学びができるのではないかというねらいがありました。
活用実績事例(サマリー)授業以外での活用
教科 | 学年 | 単元名 |
工業 | 3年 | 3DCAD·3Dプリンター(機械実習) |
工業 | 1年 | Adobe Illustratorによるポスター制作 |
工業 | 1年 | Adobe Photoshopによるレタッチと画像編集 |
工業 | 2年 | デザイン企画(マーケティングとデザイン) |
活用実績事例(サマリー)授業以外での活用
学年 | 概要 |
1~3年 | 情報研究会(eスポーツ)でのロケットリーグの練習に使用 |
1.3DCAD・3Dプリンター(機械実習) 教科:工業 学年:3年
【授業の目標】
0~3歳児に対して喜んでもらえるおもちゃを製作する【展開計画】
区分 | 学習活動 | 活用ツール |
導入 | [1~4時限目] ・企画するための調べ学習、グループワーク |
|
展開 | [2~5時限目] ・CADデータ製作 |
·SOLIDWORKS |
まとめ | [13~16時限目] ·3Dプリンター出力、プレゼンテーション・シート製作 |
·3Dプリンター、Canva |


2.Adobe Illustratorによるポスター制作(実習) 教科:工業 学年:1年
【授業の目標】
Adobe Illustratorの基本操作について習得し、得た知識を用いてイベントポスター作成の課題に取り組む。【展開計画】
区分 | 学習活動 | 活用ツール |
導入 | [9時限目] ・スライドを活用した講義、· Adobe Illustratorの操作方法 |
•Adobe Illustrator |
展開 | [9時限目] •Adobe Illustratorを活用した作品制作(イベントポスター制作) |
•Adobe Illustrator |
まとめ | [9時限目] ・スプレッドシートでの振り返り、ドライブを活用した作品提出 |
•Adobe Illustrator |

3.絵はがきの制作(実習)Adobe Photoshopによるレタッチと画像編集
教科:工業 学年:1年
【授業の目標】
Adobe Photoshopの基本操作についてレタッチと画像編集の面から習得し、事前に取り組んでいたAdobe Illustratorの技能を用いながら、絵はがきの作成に取り組む。【展開計画】
区分 | 学習活動 | 活用ツール |
導入 | [9時限目] ・コンセプトシートの作成 |
・schoolTakt |
展開 | [9時限目] ・Adobe Illustrator、Adobe Photoshopを活用した絵はがきの制作 |
・Adobe Photoshop ・Adobe Illustrator |
まとめ | [9時限目] ・スプレッドシートでの振り返り、ドライブを活用した作品提出 |
・Adobe Photoshop |


4.デザイン企画(マーケティングとデザイン)(デザイン実践)
教科:工業 学年:2年
【授業の目標】
パッケージ製作とデザインはどのような工程で行われているか。実際に取り組みながら考えをふくらませる。【展開計画】
区分 | 学習活動 | 活用ツール |
導入 | ・スライドを活用した講義、schoolTaktを活用した アイデアスケッチ・ラフスケッチ・コンセプトシートの作成 |
・schoolTakt |
展開 | ・Adobe Illustratorを活用したパッケージデザインの制作 | ・Adobe Photoshop ・Adobe Illustrator |
まとめ | ・制作製品の提出および、ドライブを活用した作品提出 | ・Adobe Photoshop |

5.情報研究会(eスポーツ)でのロケットリーグの練習に使用
学年 | 概要 | 活用ツール |
1~3年 | 放課後のeスポーツの活動で、今年度横浜F·マリノスのプロ選手と 契約をし、ロケットリーグの技術指導を週1回受けています。 |
・提供PC |

その他、活用の成果
【教員の感想・変容】
・今までCADでデータを製作して終わっていたものが、実際に物となってできあがっていく様子を見て、生徒の興味関心が上がったように感じた。
・Adobe Illustrator、Adobe Photoshopを活用したことがなかった生徒も、3テーマの実習を経て、操作感に慣れていき、作品を作る際にどのようなツールを使用して作っていくべきか考えながら各自の作品を仕上げていくようになった。
・1年で学んだAdobe Illustratorを活用してパッケージデザインを行ったが、1年次よりも実際の製品にするためにはどうすればよいかを考えながら、デザインの検討ができていたように思う。
【児童・生徒・学生の感想・変容】
・いいアイデアが浮き上がってきて、それを具現化できた。
・2年生のCADと違って完全に自分のオリジナルで作ってみてたくさんの三スなどしたけどその分もっと良いものを作ろうと思ったし、それが実際に形なるのですごく楽しかったしあっという間でした。
・初めはパソコンで作ると言われてできるか不安でしたが、高校1年生で習ったことがしっかり身についていて思った通りの作品が作れたのでよかったです。また、私が作ろうとしているものは本当にAdobe Illustratorで作れるのか心配でしたが作り終えられてよかったです。しかし、時間が思っていたより足りなくて時間配分を間違えたことが今回の反省点でした。妹にはがきをあげたら予想以上に喜んでくれたので作ってよかったと思いました。この実習は1年間の中の実習で一番楽しかったです。そして、パソコンの使い方など高校1年生の初めより上手くなれたので良い経験になったと思いました。とても楽しい実習でした。
・何か作る時に雰囲気とかイメージとかをしっかりと絞ることで、統一感も出るしニーズを捉えることで、作品も作りやすくなると学んだから、これからはこの学んだことを生かしながら何かを作っていこうと思った。
今後の課題
2年間ご協力をいただきありがとうございました。あっという間に2年間が経過してしまい、STEAM教育に十分に取り組めたか疑問が残るところではあります。しかしながら、高性能PCをはじめ、Adobeの活用、3Dプリンターの充実などソフトウェア、ハードウェアともに充実し、生徒のより高度な学習活動に大きく還元できたと考えています。
このSTEAM Lab実証研究の実施により、本校としても3Dプリンターの新規導入、Adobe Creative Cloudライセンスの追加購入など設備ソフトウェア面においても大きな影響がありました。
今後は学内で探究学習である課題研究を中心にSTEAM教育の定義も含めて試行錯誤を繰り返しながら取り組んでいきたいと思います。
STEAM Lab 実証研究校インタビュー

学校法人三浦学苑高等学校は、神奈川県横須賀市衣笠栄町に所在し、より良い社会を築くために、 あらゆる社会で活躍できる人材を育成することを目標とした私立の高等学校です。地域に根差した学校として、 「自主独立」「質実剛健」 の精神を大切にし、目指すべき 10 の学習者像や、「個性と自主性を持った国際人の育成」を学校の具体的な教育目標として掲示されています。 ICT の利活用が学校全体で進められる中で、自身も工業技術科の担当教員として ICT や STEAM 教育に臨んでいる伊東亮教諭にお話を伺いました。
STEAM 教育の導入で時間的・技術的に制限されない実習を実現したい
専門課程において IT 系のカリキュラムを取り入れたコースの導入や、一人一台の端末導入をし、 生徒が 1 日の中で端末を使用して何らかの活用を行うなど学校全体で ICT の利活用を進めてきた同校。 STEAM 教育について情報収集を行う中で、 比較的学力の高い学校がハイレベルな授業を行っている事例が多く出てきてしまい、 本校で STEAM 教育がどこまで実施できるか不安になり、 展開するまでは至らなかったという経緯があると伊東教諭は語りました。そんな中でも STEAM 教育を導入することで、生徒たちが工業技術科の枠を超えて、より幅広い分野での学びに挑戦する機会が持てることに期待した同校では、 まず担当教員に複数の生徒が紐づくといった、大学のゼミのような形式から導入をはじめています。伊東教諭は「さまざまな情報を収集し知見を広げた中で、 他校が実施してきた事例などを本校で実現したかったのはもちろんですが、 PC の性能に左右され、 制限されていた活動の幅を広げたいと考えました」 と STEAM Lab 実証研究に応募した背景を振り返りました。


STEAM Lab によって、一方的な授業から生徒主体の授業に
同校には一人一台端末以外にも、PC や 3D プリンター、Adobe Creative Cloud などがすでに設置されていましたが、 マシンの性能やソフトウェアの本数が限られていたため、 学習活動において充分に活用できていたわけではないと伊東教諭は振り返ります。そういった課題のなかでも、 STEAM Lab で導入した機材のおかげで授業という限られた時間の中で動画の編集 ・ 書き出しなどが完結できるようになり、 今までは自習でしか使えなかった Adobe Creative Cloud を座学ベースの授業においても活用できるようになったと、 機材導入による恩恵についても語られました。さらに、 今までは設計図の製図だけで終わっていた機械設計の授業で、 プロトタイプの出力が 3D プリンターの導入により実現。STEAM Lab について伊東教諭からは「一方的な授業ではなく、 生徒たちの手を動かす機会が増え、 学校として推進している生徒主体の授業が実現できるようになりました」と評価をしていただきました。
多岐にわたる活用方法が生徒 ・ 教員に変化を生み出す
STEAM Lab が授業での活用を進める一方で、 授業時間外での活用も進んでいるという同校。放課後に資格取得講座を開催するほか、クラブ活動では STEAM Lab の機材を活用した動画編集やイラストの制作が行われ、 2019 年から活動がはじまりましたeスポーツ部では、 大会への積極的な参加やプロ選手を招いた活動を行うなど、 多岐にわたって STEAM Lab が活用されています。こういった活用に関して 「PC で作ったものをアウトプットできるようになったことや、 実践的な学習機会が増えたことによって、生徒たちが成功体験を多く積めるようになり、生徒たちの学習への意欲が明らかに向上し、 学びに対するアプローチが変化しはじめています」 と STEAM Lab の効果について語りました。さらに STEAM Lab の活用は、 今まで PC の使用に否定的だった教員の意識を、 遊びであっても使いたい時に PC が自由に使えることで、 生徒の気付きが生まれるのであればいい。と、 生徒主体の動きを信じるような意識に変えたと伊東教諭は振り返りました。


学内に留まらない学びと外部との連携で、 さらに高品質な教育へ
伊東教諭は今後の展望として 「生徒たちが多様な分野での学びに触れ、 自分たちの興味や将来のキャリアにつながる経験をさらに積むためにも、 工業技術科だけではなく、 一般教科での活用を広げるほか、 学校内で完結せずに外部の専門家や近隣大学との連携を深め、 外部からの学びを取り入れていきたい」 と語ります。 しかし、 その一方で伊東教諭は、 STEAM 教育とは何かを永久に探求しなければならないように、外部からの学びを取り入れて終わりではなく、 教員自らも学び、 研究し、 スキルアップを計る必要があると、教員側に潜む課題も挙げました。 「STEAM Lab の活用だけではなく、 さまざまな学びに活かせる可能性のあるインテル® Skills for Innovation といった外部の教材を活用しながら、 授業を実践したいと考えています」 と伊東教諭は締めくくりました。
STEAM Lab 導入機材

• 株式会社ヤマダデンキ(TSUKUMO)
G-GEAR シリーズ G-GEAR GA7J-H214/ZB 10 台
• 27 インチ液晶モニター、 3D プリンター
• Adobe Creative Cloud 小中高校サイトライセンス
【学校法人三浦学苑高等学校】STEAMLab活用事例集 (PDF 10.7 MB)