学校紹介

神奈川県は横須賀市に位置する神奈川県立横須賀工業高等学校は、 機械科 ・ 電気科 ・ 化学科、 そして新設された建設科を加えた 4 学科の教育課程を有する創立から 82 年を迎えた横須賀市内で唯一の工業高校です。工業高校らしく、 金属加工機や小型プラントなどをはじめとする専門的な機器を多く保有しています。地域産業や社会に貢献できる人材の育成を掲げた同校では、 ものづくり日本を支える人材を育成するためにどのように ICT の利活用や STEAM 教育を進めているのか、 機械科を担当される中澤清和教諭にお話を伺いました。

生徒たちが使うべきツールが十分に扱えないという課題

同校では Wi-Fi などの問題なく通信できるネットワーク環境の整備はもちろん、 生徒各自がタブレット端末を準備(購入)することで、 授業での ICT 利活用が推進されていたため、 生徒たちが早くから ICT に慣れ親しめる環境が整えられています。しかし、 工業高校としての特性上、 使用頻度の高い 3D CAD をはじめ、 高性能が要求されるソフトウェアの利用においては、 生徒のタブレット端末はもちろん、 学校に配備されていた PC でも性能が不十分で追いつかないという課題を抱えていました。工業に似た部分のある STEAM 教育について興味があったものの、 そういった課題から手が出なかったという同校は、 STEAM Lab の募集を発見し、 応募に至りました。 「普段なかなか使用できないソフトウェアや高性能 PC が使えるという点はもちろんですが、 何より STEAM Lab によって生徒たちが今まで扱いきれなかった 3D CAD を不満を感じることなく扱えるようになってほしかったです」と中澤教諭は STEAM Lab 実証研究に応募した経緯を振り返りました。

STEAM 教育の理念に基づいた、1 つの科にこだわらない授業の実現

そういった課題もあり、 STEAM 教育を意識した科目の導入などはしていなかったものの、 3 年生からはじまる自分でテーマを見つけ課題をクリアする ・ 解決策を見つけるという 1 科それぞれが行う課題研究の授業がSTEAM 教育の理念に最も近いものだったと、 中澤教諭は STEAM Lab導入前を振り返りました。 「STEAM Lab を導入した後の課題研究の授業は、1 科だけでなく、3 科すべてが集合して実施するようになりました。災害時の避難経路の確認などに使用する校舎の模型を制作するという課題を設定し、それぞれの科が持つ特性を活かした内容で研究を行ったものを持ち寄って 1 つの校舎を制作するという形をとりました。もちろん、 模型制作時には高性能 PC を使用して、3D CAD でデータを制作、そして 3D プリンターで出力をし、校舎の中に配置しましたが、そういった時も不満なく扱えたのは嬉しいですね」と STEAM Lab について評価していただきました。

すべての科が課題研究に集まることで内部照明のシステムも実現しました
内部の照明などの細かい部分まで作り込まれ、 教室棟の半分まで完成した校舎

最先端の技術を体感することで見つかった生徒の想い

課題研究の授業の発展に大きく寄与した STEAM Lab の機材ですが、活用は課題研究だけに留まらないと中澤教諭は語ります。例えば、鉄道研究部が鉄道の形を作るといった部活動での活用、 化学科の生徒が大学との連携研究でメッキ加工するための素材を打ち出すといった研究領域での活用、 そして文化祭で配布するキーホルダーの制作と、 同校ではさまざまな場面で STEAM Lab が活用されています。 「STEAM Lab の機材で、生徒の活動の場が広がったことはもちろんですが、 3D データを扱う企業で使う高性能 PC についての説明を授業で行う時も、 今までの動作の重い PC とは異なり、 3D データを扱っても快適に動作する高性能 PC のおかげで、生徒たちはイメージがしやすくなりました。何より、そういった快適に動く高性能 PC が使えることで、 自分たちの将来の仕事について興味を持つ生徒たちが増えてきたことが嬉しいです」 と中澤教諭は STEAM Lab の効果について語りました。

建築図面をトレースして CAD データを作成する際も STEAM Lab が活用されています
Unity や Blender なども快適に動くようになり、 ゲ ーム制作にも手が出せるように

生徒がより主体的に取り組める勉強の方法が課題

中澤教諭は今後の展望として「横断的な考えを浸透させつつ、 制作中の校舎模型を完成させ、 文化祭で展示したり防災教育で活用することを目標としています。また、 新設された建設科を含めたすべての科で 1 つのものを作り上げるような新たな取り組みも考えています」と語ります。しかしその一方で、座学の苦手な生徒に興味をどう持たせるか、 生徒たちの主体性をどう高めるかといった課題も挙げられました。「実技以外でも積極的に取り組める環境を整えていく中で、 生徒から一層レベルの高い内容の提案ができるようになって欲しいですね。また、モニターに選ばれた我々でもこれだけ悩んでいるので、予算の関係で STEAM 教育に取り組めない学校はなおさらだと思います。 STEAM Lab のような素晴らしい取り組みはぜひ継続していただいて、他校の方にも我々のように恩恵を受けてもらえると嬉しいですね」と中澤教諭は締めくくりました。

STEAM Lab導入機材

・株式会社サードウェーブ
 GALLERIA UL7C-R36 5 台
・3D プリンター
・Adobe Creative Cloud 小中高校サイトライセンス

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