学校紹介

愛知県名古屋市千種区に位置する愛知県立愛知総合工科高等学校は、平成28年間に開校した工科高校です。
「サイエンスに考え、アートに行動せよ」をスローガンに掲げ、今後の日本を担う理工系の研究者や技術者、技能者はもちろん、そのリーダーに担う人材も育成。若年者ものづくり競技大会や技能五輪全国大会などに積極的に参加するなど、同県における工業教育の中核を担う教育が行われています。高校生という早い段階でものづくりの思考と技術を磨く生徒たち、そして指導する教職員の「STEAM Lab」活用について、同校の川田大介教諭にお話しを伺いました。

高校生活でもっとも記憶に残る活動にしたい。それがSTEAM教育に懸ける想い

理工や機械、電気、電子、建設、デザインと幅広い分野の学科を設置する同校は、工科を専門とする学校だけあって生徒一人ひとりに貸与するタブレット端末を活用し、資料の作成や課題の提出はもちろん、連絡事項の確認やアンケートなど、教育のあらゆる面でデジタル技術を活用。3Dプリンターやドローン、アームロボット、電子回路や機械制御の実習装置など最先端の教育機器を配備した実習室を設けることで、実践的な技術の習得に向けた教育、技能に関する大会参加への取組も行われています。そんな同校におけるSTEAM教育の位置づけについて川田教諭は、「STEAM教育は将来的にもっとも記憶に残る活動のひとつとして位置づけられるべきと考えます。理論だけでなく、ハードウェアやソフトウェアの動きを体験しながら学ぶことが重要であり、STEAM Labはその実現に理想的なプラットフォームと考えます」とSTEAM Lab 実証研究に応募した背景を振り返っています。

高性能な PC によって 3D モデリングもスムーズに行えます
生徒の想像力がカタチになる 3D プリンターは、 課題研究などの授業でも活用されています

STEAM Lab が貸与PCの課題を補い、より深い学びにつなげる

同校では、一人一台のタブレットPCを生徒に貸与しているものの、その性能は限られており、Adobe Creative Cloud を用いたデザインや、ゲームエンジンを活用した物理的シュミレーションやゲーム制作、レンダリング作業をスムーズに行うことは難しかったと川田教諭は振り返ります。そういった課題があったなかで、STEAM Lab に導入された高性能PCによって複雑なリアルタイム・レンダリング・ビルドの高速化、効率的なデバックやテスト環境が得られ、そしてデザイン分野においては生徒たちの創造をプロフェッショナル・レベルで作り上げることができたと、恩恵についても語られました。加えて、生物の肉体的構造と動きを再現するモデル作成では3Dプリンターが活躍。「生物学的なメカニズムの理解と同時に3Dモデルで表現する工学的な経験も得られました。学術研究や教育において多様な応用が可能だと思います」とSTEAM Labの機器を評価いただきました。

授業だけでなくイベントや競技、そしてeスポーツへと幅広く活用

「本校では、授業時間外でもSTEAM Labの積極的な活用を行っています」と川田教諭は語ります。その活用の幅は非常に広く、若年者ものづくり競技大会、技能五輪全国大会、組込みソフトウェア技術をテーマにしたETロボコン、そして部活動として近年数を増やしつつあるeスポーツでもSTEAM Labが利用されています。「特に技能を競う競技では、設計から製造、プログラミングといった一連のプロセスを通じて、生徒たちの創造性や問題解決能力を発揮。そして、eスポーツ部においては、戦略的思考やチームプレイに関する能力を育む絶好の機会になっています。生徒たちは、授業で学んだ知識を応用し、自身の興味や専門性を深めることができます。こういった経験は生徒たちの学習意欲を高め、将来的に科学や技術、工芸など幅広い分野で技術者やリーダーとして活躍する人材育成はもとより、基盤の構築に役立つのではないでしょうか」とSTEAM Labの意義について語りました。

ET ロボコンに参加する生徒たちの設計や開発にも STEAM Lab が活躍
部活動としてeスポーツに取り組む生徒たち。 100 名近くの生徒が所属する大所帯

主体性を重視した教育アプローチで幅広いスキル習得に繋げる

川田教諭は、今後の展望として「生徒たちが主体性をもって、近隣の小中学校の生徒や保護者にSTEAM教育の面白さと重要性を伝える取組をしてみたいですね。生徒たちが学んだ知識を他者に伝えていく過程でプレゼンテーション能力やコミュニケーション・スキル、リーダーシップに関する能力を磨く絶好の機会になるのではないでしょうか」と語ります。しかしその一方で、川田教諭は学校予算の制約によって、十分な学習環境が整えられなくなってしまう可能性に加え、独創的な学びと大学受験に必要な学びのバランスを取る事の難しアも課題として挙げられました。「生徒たちがSTEAM教育の機会を最大限に活用できる学習環境の構築。これには政府や教育機関、産業界、入試制度の柔軟性など多方面の取組が必要になりますが、STEAM教育を通じ、生徒たちの能力開発と将来のキャリア形成を支援するための環境が整えられることを期待したいですね」と締めくくりました。

STEAM Lab 導入機材


・日本電気株式会社
 Mate シリーズ Mate MWX33/S-1 10 台
・27 インチ液晶モニター、 3D プリンター
・Adobe Creative Cloud 小中高校サイトライセンス

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