はじめに
ダイワボウ情報システム株式会社は、STEAM教育の推進、文化・社会貢献活動の一環として、日本経済新聞社大阪本社主催の『日経STEAM2025シンポジウム』に特別協賛しております。
開催日:2025年8月8日
日経STEAMシンポジウム2025 | NIKKEI STEAM
※STEAM教育とは、Science、Technology、Engineering、Art、Mathematicsの頭文字を組み合わせた造語であり、科学、技術、数学、ものづくりや芸術の領域を重視し、文理を横断した創造的教育の事を指します。
DIS体験コーナー
ダイワボウ情報システム株式会社 教育 ICT 推進グループでは、毎年継続した取り組み(今年で4回目)となる体験コーナーを会場内に設置しました。本コーナーでは、生徒・教職員を中心とした来場者の皆様に、創造力・課題解決能力・論理的思考力などの資質・能力の育成を目的とした最新の STEAM 教育体験コンテンツを提供しました。来場者の皆様には、実際にコンテンツに触れて学ぶ機会を通じて、ICTを活用した教育の可能性を体感していただきました。本レポートでは、体験の様子や参加者の感想をご紹介いたします。
①AR(拡張現実)体験︓製品名 MyWebAR 【DEVAR社】
②合成動画・生成 AI 画像作成体験︓製品名 Adobe Express/Adobe Firefly 【Adobe社】
③CAD&3D プリンター体験 製品名︓作ってみよう 【アバロンテクノロジーズ社】/Bambu Lab P1S、Creality K1シリーズ 【Creality 社】
④ドローン&AI 謎解き・可聴化体験 【インテル社】

1.AR(拡張現実)体験︓製品名 MyWebAR 【DEVAR 社】
AR(Augmented Reality/拡張現実)とは、カメラを通して映し出した現実空間にデジタルの映像や情報を重ねて表示する技術で、教育分野では人体の模型の可視化や地形の立体的な把握、歴史的建造物の再現、図解の空間認識など、理科・数学・地理・歴史などの複数の教科において、理解を深める視覚的な補助や探究学習のツールとして注目されています。こちらのコーナーでは、DEVAR 社の「MyWebAR」というノーコードで AR コンテンツを作成できる Web ツールを活用しました。「MyWebAR」は専門的な知識が無くても画像や動画を使って簡単にAR 体験を設計できることが特徴で、アメリカの教育現場では幅広く活用されています。
今回はこの「MyWebAR」の技術を使い、名刺の上に生徒の自己紹介動画を再生させる体験を行いました。 名刺にQR コードを印字し、スマートフォンで読み込むと AR 技術によって名刺の上に動画が浮かび上がる仕組みです。
今回のテーマは「自己表現とパーソナルブランディング」。参加者は「自分らしさとは何か︖」「他者に伝えたい自分の個性や強みは︖」といったテーマに向き合いながら、自己分析と表現方法を探究しました。動画の構成や伝え方を工夫して、他者に伝えたいメッセージを込めた自己紹介動画を作成しました。「MyWebAR」を使って完成した動画に自分を象徴する3Dモデルや Instagram などの SNS リンクを組み合わせることもでき、紙の名刺にデジタルコンテンツを添付することで、一人ひとりの個性が鮮明に表現された世界に一つだけの“自分を語る名刺”が完成しました。
MyWebAR by DEVAR - ウェブ上でAR体験を制作。マーケティング・教育・ECのためのWebAR




ARに対してのイメージ
「専門的で難しそう」
「身近なイメージが無い」
「思っていたより操作が簡単で楽しめた、またやりたい」
「自由度が高く、色々な事に応用できそう」
参加者の声(抜粋)
「静止画だけでなく動画なども扱えることに驚いた。さらに、Instagramのリンクなども貼れるので、工夫次第でとても便利に活用できると感じた。」(生徒)
「AR 空間で多くの情報を相手に伝えることができる」(生徒)
「名刺から自己紹介動画、SNS へのアクセスができるのがすごく斬新」(生徒)
「AR でもっと色々なものを作ってみたくなった」(生徒)
AR 体験を通じて、参加者の多くが「AR=難しい・遠い存在」という先入観から「自分にもできる」「楽しい」「応用できそう」と前向きな印象へと大きく変化し、AR 技術を以前よりも身近で実用的なものとして捉えるようになりました。 また、名刺に動画や画像・3Dモデル・SNS リンク等の組み合わせ方を考える中で、自分自身をいかに表現するかという主体的に考える場となり、探求的なプロセスを垣間見ることができました。今回の AR 体験は、単なる技術体験にとどまらず、発信力・創造性・自己理解を育む学びの場につながる可能性が見受けられました。
2.合成動画・生成 AI 画像作成体験︓製品名 Adobe Express/Adobe Firefly【Adobe社】
2-1: Adobe Express 動画制作体験コーナー
Adobe Express を使用し、自分の思いやアイデアを動画という形で表現する体験を実施しました。撮影した映像に、背景やテキスト・画像・デザイン素材を自由に追加し、編集を通して「どう伝えるか」「何を伝えたいか」を考えるプロセスを重視しました。自己紹介や学校生活、趣味、未来の夢などをテーマに個性あふれる動画を制作し、主体性・表現力・協働性を育む学びの場となりました。
Adobe Expressについてはこちら
Adobe Expressとは
小中高の教育機関に無償で提供されている教育機関向けの Adobe Express は、画像・動画・Web ページなどを手軽に作成できるアプリケーションです。一般向け機能に加え、セキュリティ面でも教育現場に配慮された設計となっており、児童生徒が安心して学習に取り組める環境が整っています。
2-2. Adobe Firefly 生成AI画像作成体験コーナー
Adobe Firefly を活用し、「理想の未来都市:持続可能性とテクノロジーの融合」をテーマに、画像生成に挑戦しました。
環境問題・エネルギー問題・人口増加といった現代社会が抱える課題を解決する 2050 年の都市の姿を、生成 AI を使 って表現しました。テキスト入力して AI に理想のイメージを伝えるプロセスは、必ずしも一度で思い通りの結果が得られるわけではありません。
生徒は言葉の選び方や構成を工夫しながら、何度も試行錯誤を重ねることで、AI との対話を通じて自分の思考を深めていきました。生成 AI 画像作成体験は、単なるツール操作ではなく「言語化力」「論理的思考力」「問題解決能力」等を育む、創造的な学びの場となりました。
Adobe Firefly クリエイティブのための生成AI
Adobe Fireflyとは
Adobe Fireflyは、テキストから画像を生成できる、Adobeが提供する革新的な生成AIツールです。
直感的な操作で、誰でも簡単に高品質なビジュアルを作成できるため、教育現場でも創造性を育む多様な授業で活用されています。




Adobeに対するイメージ
「動画編集は難しそう・複雑そう」
「どのように操作するのか分からなかった」
「そこまで難しくなく、専門知識がなくても楽しめた」
「自分が思いつかないデザインが生成されて驚いた」
参加者の声(抜粋)
「具体的に言わないと想像している画像生成ができなかった」(生徒)
「言葉を上手くいれることが大切だと思った」(生徒)
「条件を追加していくことで大きく変わったり、理想に近づけたりできて面白かった」(生徒)
「使い方が思った以上に分かりやすかったです、結構語彙力が必要だなと感じました」(生徒)
体験前は、動画編集や画像生成に対して専門的な印象を持つ生徒が多く見られましたが、実際に操作してみることでツ ールへの直感的な使いやすさに触れ、理解と親しみが深まりました。
動画制作体験では、動画と背景・文字やデザイン素材を組み合わせることで、普段はできないような表現に挑戦でき、自分のアイデアを自由に形にする事に楽しさを実感する生徒が多く見られました。
一方、生成AI画像作成体験ではツール自体への親しみはもてたものの、理想の未来都市のイメージをAIに伝える難しさに直面しました。具体的に指示をしないと想像している画像が生成できず、言葉の選び方・構成を工夫しながら何度も指示と修正を繰り返すことで理想のイメージへと近づけていき、言語化の重要性に自然と気づく様子が見られました。
両体験を通して、生徒たちはツールを使いこなすだけでなく、自分の考えを整理し、表現し、伝える力や、課題に向き合う姿勢を自然と育んでいる様子も見られました。
3.CAD&3D プリンター体験 製品名︓作ってみよう 【アバロンテクノロジーズ社】/Bambu LabP1S、Creality K1 シリーズ 【Creality 社】
こちらのコーナーでは、アバロンテクノロジーズ社の「作ってみよう︕」という CAD ソフトでネームプレートの形状・文字・装飾など自由にデザインし、3D プリンターで印刷する体験を行いました。
「作ってみよう︕」は、日本初の教育向け 3D プリンター支援 CAD ソフトであり、初心者でも直感的に操作できる設計が特徴です。豊富なサンプルパーツを組み合わせることで、複雑な形状も簡単に作成できるため、パソコン操作に不慣れな生徒でも安心して取り組むことができます。
作ってみよう! 株式会社アバロンテクノロジーズ (avalontech.co.jp)
今年度は、一部の参加者にネームプレート作成に加えて、作ってみよう︕の演習問題に挑戦していただき、CAD ソフトへのより深い理解と応用力の育成にも力を入れました。また、デザイン段階では複数のパターンを試作し、気に入ったものを選んで印刷する生徒も多く見られました。操作にも少しずつ慣れてきた様子で、より自由に、より深く、自分のアイデアを形にする時間が増え、画面と向き合いながら自分らしさを探す様子が非常に印象的でした。
3D プリンターは教育現場において、自分のアイデアを”かたち”にする体験を通じて、創造力や論理的思考力を育むツールとして活用されています。試作品を何度も出力して改良することで、試行錯誤・課題解決のプロセスを体験でき、失敗を恐れず挑戦する姿勢や、改善・工夫する力が自然と育まれることが期待できます。
K1 FDM 3D プリンター (creality.com)
K1C 3Dプリンター | カーボンファイバー対応・高強度印刷 | Creality公式
P1S 3Dプリンター | Bambu Lab ストア




3Dプリンター・CADソフトのイメージ
「プログラミング関連の為、自分には難しいと思った」
「デザインが難しそう」
「ツールの使い方を理解すると楽しく感じた」
参加者の声(抜粋)
「意外とPC1台で簡単なソフトを用いたおかげで手軽にできた」(生徒)
「自分が想像していた以上に簡単に仕上げることができ楽しかったです」(生徒)
はじめは 3D プリンターに対するワクワク感を持ちながらも操作や仕組みについて少しハードルを感じていた生徒もいました。しかし、ネームプレートという身近な題材を通じて、デザイン・設計・出力という一連の流れを自分の手で行い理解を深めることで、ものづくりの楽しさと達成感を実感する事ができました。デザインの過程では形状やレイアウトを工夫する中で、 創造性や発想力、空間認識力などが自然と引き出される様子が見られました。
4.ドローン&AI 謎解き・可聴化体験 製品名: Tello/ Scratch 等 【インテル社】
インテル社は、DIS特設体験コーナー内で、参加者が楽しく参加できる企画を実施しました。昨年度の開催において好評を博した「ドローン体験」に加え、新たに大阪・東京の 2 拠点を連携させて、協力・協調し合う内容として、AI を活用した「謎解き」と、自身の動きを音に変換する「可聴化」を体験いただきました。
使用した製品紹介
-ドローン体験︓使用したドローンは、インテル社と DJI が技術提供を行い、Ryze-Tech 社より発売された小型ドローンの「Tello」です。インテル社では、PC だけではなく、ドローンのような小型デバイスにも使用できるプロセッサーをはじめ、さまざま技術を提供することで皆様の生活を支えています。
-謎解きチャレンジ︓使用したツールは、インテルが開発・提供をしている AI 推論エンジン「OpenVINO™ ツールキット」と、画像生成 AI モデル「Stable Diffusion」を、無償の画像編集ソフト「GIMP」で利用可能にしたプラグインです。無償で使える同ツールキットは、シンプルなコード記述で動作。数多くの企業の AI 導入や保守に使用されています。
-可聴化セッション︓こちらでも、同様に「OpenVINO™ ツールキット」を使用しました。オブジェクトなどの物体検出で使われる同ツールキットは、交通量を自動測定できる定点カメラや、X 線画像から疾病を判断するシステム、インタラクティブ・サイネージなど幅広い業界・分野で使用されています。
実施内容
-ドローン体験︓ドローン体験では、「プログラミング言語」を使用して、各所に配置された障害物を回避させ、ゴールまでドローンを導くという体験をしていただきました。
プログラミングには、テキストではなく、ビジュアル的にプログラミングが行える「Scratch」を使用。小中学校等でも広く活用される親しみやすいツールのため、参加者から「昔使っていました」という声もありました。
「リモコンではなく、自らが考え、構築したコードで飛ばす」という未知の体験ができたことで、驚きと興味を示し、「もっとプログラミングを学んで、ドローンを飛ばしてみたい」や、「自分でも買って、試してみたい」とった声が参加者から上がりました。
-謎解きコーナー︓謎解きコーナーでは、大阪・東京の2拠点で協力して謎を解き、その答えから AI 画像生成を行い、同一画像を生成するという体験をしていただきました。
謎は大阪・東京で文章が一部異なっていたり、答えが不足していたりする仕掛けがあり、単なるクイズではなく論理的思考力や2拠点での協働を促す内容となっていました。
答えの入力には Python モジュールやコードを使用し、実際にプログラミングをしている感覚を体験可能。
さらに、画像生成時も同じ内容を入力しても細部が異なる画像が生成されることで、「一見完璧に見える AI でも、使用するデバイスなどが違うだけで人間と同じように揺らいでしまう」という新たな発見を参加者に促すことができました。
-可聴化コーナー︓ 可聴化コーナーは、カメラを用いて参加者の手の動きを検知し、それを音に変換。ただ音に変換するだけではなく、大阪・東京で別々の音が鳴るようにしたことで、セッションとしても楽しめる体験になりました。
動けば音が鳴るという短時間でも体験できる内容のため、ドローンや謎解きが満席で待ち時間が発生していたときにも、気軽に参加が可能。さらに常にカメラ前で誰かが動いて音を鳴らすことで、参加者の興味・関心を引くことができ、ドローンや謎解きへと自然に誘導する効果もありました。
8種類の動きに音をつけ、物体を認識させることの難しさや、世の中ではこの技術がどう活用されているかなど、物体認識AIの仕組みを参加者が直感的に理解できる内容となりました。




生徒の様子
「ドローンってプログラミングで動かせるんだ!」
「謎解きと画像生成がどう繋がるのか不思議」
謎解き「AIが生き物みたいで面白かった」
可聴化「カメラで認識できるのがとても面白い」
参加者の声(抜粋)
「ドローン操作は難しいプログラミングを知っていないとできないと思っていた」(生徒)
「風向きによって方向が変わるので物理の知識を使ってみると面白そう」(生徒)
「AIの中の揺らぎというものを知って、さらにAIについての知識を深めることができた」(生徒)
参加者の多くはコーナー名を見て「AI は難しそう」、「何ができるかわからない」という印象を持って、コーナーでの体験に参加していました。しかし、実際に体験を終えたあとには「もっと詳しく学んでみたい」、「AIも完璧ではない点が面白い」といった前向きな感想がいくつも寄せられました。
謎解きやドローンコーナーはもちろん、可聴化のコーナーでも「この動きの音を出したい」というように、参加者自らがトライ&エラーを進んで繰り返す姿も見られ、主体的な学びと、計算論的思考が実践できている様子がとても印象的でした。また、年齢層の異なる参加者同士で協力・助け合う姿も見られ、STEAM 教育の場として大変有意義な体験になったと考えられます。
おわりに
近年、急速に進展するテクノロジー社会において、創造力・論理的思考・問題解決能力を育む STEAM教育は、学校現場におけるデジタル人材育成の鍵の1つとなっています。当社では教育現場における ICT 環境の整備に加え、実体験を通じて学びを深める STEAM 教材・機材の提供にも注力しており、今回のイベントではその取組の一端を生徒の皆様に体験していただきました。
体験後のアンケートでは、参加者の多くが高い満足度と理解度を示しました。 「ワクワク度」は 78%が最高評価の「5」を選択し、「4」も含めると 97%の参加者から肯定的な評価をいただきました。 「理解度」についても、「5」が 58%、「4」が 27%と 85%の参加者に学習内容をよく理解できたと感じたようです。“ワクワクする気持ち”は学びに対する前向きな姿勢に繋がります。興味を持って取り組むことで、内容への理解を深めやすくなり、自然と主体的な姿勢で学習に取り組む様子が見受けられました。


今回の体験コーナーで使用した一部の機材・ソフトウェアは、当社が全国で展開している「STEAM Lab」や文科省の DX ハイスクール指定校など、さまざまな教育現場で利活用されています。
『STEAM Lab』18校の活用事例&インタビュー記事はこちら
2025 年度は、文科省の「高等学校 DX 加速化推進事業(DX ハイスクール)」が昨年度に引き続き展開されており、今後も高度なICT 活用人財の育成が求められる中、こうした取り組みに基づく主体的な学びの促進や探究的な学習の支援はますます重要性を増していくと考えられます。
今回の日経 STEAM 体験コーナーで得られた、生徒・教員の皆様のお声や感想を参考に、今度も最適な学び環境に則した STEAM 教材の導入支援・教員研修・ICT 環境整備の提供を継続してまいります。
日経STEAM2025シンポジウムについてはこちら
製品についてはこちら
■AR(拡張現実)体験︓製品名 MyWebAR 【DEVAR 社】
MyWebAR by DEVAR - ウェブ上でAR体験を制作。マーケティング・教育・ECのためのWebAR
■合成動画・生成 AI 画像作成体験︓製品名 Adobe Express/Adobe Firefly 【Adobe社】
Adobe Expressについてはこちら
Adobe Firefly クリエイティブのための生成 AI
■CAD&3D プリンター体験 製品名︓作ってみよう 【アバロンテクノロジーズ社】/Bambu Lab P1S、Creality K1シリーズ 【Creality 社】
K1 FDM 3D プリンター (creality.com)
K1C 3Dプリンター | カーボンファイバー対応・高強度印刷 | Creality公式
P1S 3Dプリンター | Bambu Lab ストア
作ってみよう! 株式会社アバロンテクノロジーズ (avalontech.co.jp)
■ドローン&AI 謎解き・可聴化体験 【インテル社】
Tello
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ソリューション概要: OpenVINO™ ツールキット
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