STEAM Lab 活用事例

STEAM Lab活用の目的、ねらい

本校は、平成27年度にはChromebookのBYOD/ BYADを行っています。その端未の選定において、安心して保護者に購入していただくために、丈夫で安価な端末導入を行ってきました。しかし、端末の利活用を進めていく中で、購入した端末のスペックでは、取り組みが困難なものがあると感じました。そこで、本事業で貸与されたような高スペックPCを活用した教育実践を行うことで、より探究的で創造的な活動を行うことができると考えました。特に、Chromebookなどではスムーズな活動が難しい、映像編集などの活動を目的としています。


活用実績事例(サマリー)授業での活用

教科 学年 単元名
美術家 3年 題材名「クレイ・アニメーションに挑戦」

活用実績事例(サマリー)授業以外での活用

学年 概要
異学年 学校祭でのパフォーマンスでの動画制作

1.題材名「クレイ・アニメーションに挑戦」 教科:美術家 学年:3年


【授業の目標】

【A 表現・(1)ア】
対象や事象を深く見つめ感じ取ったことや考えたこと、夢、想像や感情などの心の世界などを基に主題を生み出し、単純化や省略、強調、材料の組み合わせなどを考え、創造的な構成を工夫し、心豊かに表現する構想を練ることができる。
【A 表現・(2)ア(イ))】
材料や用具、表現方法の特性などから制作の順序などを総合的に考えながら、見通しをもって表すことができる。
【B 鑑賞・(1)ア(ア)】
造形的なよさや美しさを感じ取り、作者の心情や表現の意図と創造的な工夫などについて考えるなどして、美意識を高め、見方や感じ方を深めること。
【共通事項(1)ア]
形や色彩、材料、光などの性質や、それらが感情にもたらす効果などを理解することができる。
【共通事項]
美術の創造活動の喜びを味わい、美術を愛好する心情を深めるともに、主体的に学習活動に取り組むことができる。

【展開計画】
■全体指導計画

時数 学習活動
1   オリエンテーション
  ・クレイ・アニメーションについての基礎的な知識を知り、どのような自分の思いを作品にしたいかを考える。
  ・長期休業中の課題として作品のプロットやキャラクターなどを考案する。
  ※教師は生徒から提出された課題から、作品への思いが近いものでのグルーピングを行う。
2   企画書作成①
  ・グループ編成を間き、それぞれの思いを元に作品の企画書となる絵コンテを作成する。
3   企画書作成②
  ・企画書を元に、粘土での造形や背景・セットの作成などの役割を決めるとともに、それらを円滑に行うための
      資料を集める。
4   制作①
  ・粘土でのキャラクターづくりや、背景·セットづくりを行う。
5   制作②
  ・粘土でのキャラクターづくりや、背景·セットづくりを行う。
6   制作③
  ・粘土でつくられたキャラクターを背景·セットに置き撮影を行う。
7   制作④
  ・粘土でつくられたキャラクターを背景·セットに置き撮影を行う。
8
(本時)
  制作⑤ 動画制作①
  ・粘土でつくられたキャラクターを背景·セットに置き撮影を行う。
  ・写真加工および動画編集について知る。
  ・動画編集を行う。
9   制作⑥ 動画制作②
  ・粘土でつくられたキャラクターを背景·セットに置き撮影を行う。
  ・動画編集を行う。
10   動画制作③
  ・動画編集を行う。
11   鑑賞 振り返り
  ・映像を共有し鑑賞する。   ・活動の振り返りを行う。

8時間目(本時)

区分 学習活動 活用ツール
導入   本時の学習目標の確認する。
  ・各グループで、撮影班と編集班に分け取組を行う。
  ・クレイ・アニメーションに必要な写真を撮影する。(撮影班)
  ・動画編集の基礎的なやり方を知り動画編集に取り組む。(編集班)
展開   <撮影班>
  ・撮影計画に沿って、撮影を行っていく。
  <編集班>
  ・Adobe Premiere Proの動画作成方法の動画を共有・視聴し、
      本的な使い方を知る。
  ・これまでに撮影した写真を整理する。
  ・動画作成を行う。
  ・PC
  ・Adobe Premiere Pro
まとめ   次時に向けて見通しを持つ。
<撮影班の様子>
キャラクターの微調整などを行いながら、自らの計画に沿って撮影を行っています。
<編集班の様子>
生徒は事前に作成している絵コンテや、個人端末に保存している撮影中に変更した内容を記録したメモなどを確認し、撮影した画像の整理・調整・編集を行っています。

2.学校祭でのパフォーマンスでの動画制作
  学年:異学年 活用ツール:PC、Adobe Premiere Pro

活用の様子
・本校の学校祭では、学年の垣根を越えたグループを作成し、ダンスや動画制作、寸劇などの各自が考えたパフォーマンスを競う行事を行っています。
・今年度は、異学年集団で作られた2組(ともに1、2年生で作られたグループ)が動画制作を行いました。
・Adobe Premiere Proの基本的な使い方の指導や、効果的な動画作成についてアドバイスを行いながら制作を行いました。

<作成動画>
動画にフリー素材のグラフィック効果や効果音を入れて作成。

その他、活用の成果

教員の感想・変容

<美術担当教諭>
本題材「クレイ・アニメーションに挑戦」では、個人での企画書作成、グループでの企画書作成·制作・写真撮影・動画編集を行いました。個人の企画書を確認後、同じジャンルもしくは近いジャンルの生徒でグループを作り、新たにストーリーを考えるよう指導しました。各班、1名の企画書を選び進めるグループもあれば、何人かの企画書を上手く合わせるなど工夫しているグループもいました。新たな企画書を基に粘土やほかの材料を使用し、キャラクターや背景、内容に必要なものを制作し、見通しをもって制作を進めていました。
制作後、写真撮影を行う際には、撮影位置に関する注意点の確認や加工した映像が滑らかになるように、1秒につき12~24枚撮るように指導しました。どのように撮影すると、映像にした時によりいいものになるかグループで相談しながら作業を行っていました。普段の授業でICTを活用する場合はChromebookを使用していますが、今回は動画編集にAdobe Premiere Proを使用しました。事前にスライドで説明を行いましたが、最初は機能が多く戸惑う生徒も多くいました。出だしは恐る恐るという感じで機能を使っていました。使用していく過程で、使い方が少しずつ理解できてくると、場面に応じて表示される画像の時間を調整し、エフェクトや音を入れるなど各グループで工夫する姿が見られました。Adobe Premiere Proは作業速度も速く、1コマ 50分という中学校の授業の中で、効率よく編集を進めることができるため、短い時間の中でも充実した授業内容となりました。今回の授業では、1グループ約6名で構成し1つの作品を作成しましたが、パソコンの台数が増えれば個人での画像編集が可能となるため、授業で扱う題材の幅を増やすことが可能であると考えます。

児童·生徒·学生の感想·変容

<生徒A中学3年生女子>
クレイ・アニメーションを製作・編集する経験は非常に楽しかったです。また、初めてクレイ・アニメーションの制作に関わったため、いくつかの問題が発生しましたが、工夫によって解決することができました。クレイ・アニメーションを製作する上で難しかったことは大きく3つあります。
1つ目は、粘土を使ってキャラクターや背景を作る際に、写真撮影のために安定して自立するかつ動かしやすいものにする必要があったことです。私の班のクレイ・アニメーションには人や怪獣が登場したのですが、重心の位置を調整することで自立した状態を維持できるように工夫しました。
2つ目は、撮影の細かさです。できるだけ滑らかなアニメーションを作るために、1コマごとの動きは表現できる最小限にしました。また、絵コンテを見ながら、動画を作ることをイメージして必要なカットを考えて撮影しました。
3つ目は、編集全般です。編集作業自体普段あまり行っておらず不慣れであったため、操作に手間取ってしまうことが多々ありました。
しかし、今回使ったデバイスはスムーズに動き、動画編集をしても、たくさんの画像を読み込んでも動きが重くなることなく快適に作業をすることができました。今回は動画編集ソフトを使いこなすことができなかったため、今後は字幕のフォントやアニメーション、BGMなどの細部にもこだわり、編集ソフトの機能をさらに活用したいと考えています。

<生徒B中学3年生男子>
クレイ・アニメーション制作および編集に関して、自分は動画編集ではCanvaやCapCutなどの動画編集ソフトを使用した経験はあったのですが、Adobe Premiere Proを使用した経験は少しある程度でした。
クレイ・アニメーションの制作過程に関しては、グループのみんなで役割分担をし協力することで粘土の制作や時間などの要因により難しいところがありましたが、できました。
また、撮影に関しても自分はコマ送りの撮影はしたことがなく苦戦する部分があったのですが、結果的に動画編集で時間を調整をするなどしてうまく行ったので良かったです。
動画編集に関しては、Chromebookより編集機能が多く迷う部分が多くありましたがデュレーションを調整したり、撮影時に鮮明に映らなかった写真に関してはAdobe Photoshopの自動編集機能にてコントラストの調整などをすることで鮮明にしたり、場面切り替えのところではエフェクトをつけるなどのエ夫をすることで、クオリティーの高いクレイ・アニメーション動画を作ることができました。
やはり、Chromebookより高スペックな蝶境かつWindows 11を使用することでより高い操作性や編集機能の農富さを感じる
ことができ、CanvaやCapCutなどではできない高品質で自分の思うような編集をすることができました。
今後の課題点としては、動画編集の説明資料の詳細さが1番にあげられると思います。今回の資料ではクレイ・アニメーション動画制作で重要なデュレーションの説明がありませんでした。資料では1個1個長さを編集するような感じでやっていましたが、実際はデュレーションで1個あたり0.1~0.4秒にし「変更後に後続のクリップをシフト」にチェックを入れることで一瞬で終わります。
このように、実際触ってみないと分からない点はありますが、基本的なところは資料に載せなければ難易度がとても上がってしまうと思いました。
総論としては、クレイ・アニメーションはグループと協力し苦戦はあったものの作成することができ、Adobe Premiere Proは Chromebookより編集機能は豊富でしたが操作性が難しく、また資料の詳細性が必要と思います。

保護者・地域の声

ICTを効果的に使い、生徒の学びの世界がより大きく広がっていくことを願っております。これからも、地域の教育をリードしていって欲しいです。

今後の課題

今回のSTEAM Labの活用頻度は自分が想定していたよりも少なくなってしまいました。その原因としては以下の点が挙げられます。
・教員のPC機器(ハード・ソフト両方)の知識・技能の習得
・上記をサポートする仕組みの構築
・限られた授業時間内での機器の技能習得への対応
これらを解決するために、教師が今回使用させていただいたツール(特にソフト面)を普段使いして技能を高めておくこと、ICT支援員などを配備すること、総合的な学習の時間を活用し情報活用能力をひとつにして機器の活用を取り組ませること、などが考えられます。ただし、こういった取り組みには予算が必要となるため、学校全体で必要性を共有し進めていく必要があります。

STEAM Lab 実証研究校インタビュー


北海道函館市に位置する北海道教育大学函館校の附属学校、 函館中学校は、「自主 ・ 明朗 ・ 知徳」という校訓のもとに 5 つの学校目標を掲げ、他地域に先駆けて ICTを教育に取り入れてきました。この学校は、 教育施策の拠点として、 地域教育のモデル校として、 最先端の教育への挑戦を続けています。生徒の自主性と創造性の育成、現代社会の変化への対応、 そして生徒たちが幸せに生きるための教育の実施方法について、 ICT や STEAM 教育の活用法を含め、 同校の金子智和教諭からお話を伺いました。

生徒が幸せに、そして豊かに暮らすための STEAM 教育

北海道教育大学函館校の附属、 函館中学校では、 平成 25 年から一人ひとりに端末を配布し、 平成 27 年には BYAD (Bring Your Assigned Device) の導入を実現するなど、 他地域よりも早期に ICT 教育の導入と展開を進めてきました。金子教諭によると、 教員間では 「生徒がどう幸せになって豊かに暮らせるか」というテーマについての議論が活発に行われており、 STEAM 教育の重要性が特に強調されていたといいます。このような背景があって、教員たちからは ICT を活用した教育アイデアが積極的に提案されていました。しかし、 より先進的な教育を実現しようとすると、学校で使用している端末の機能や性能では限界に直面しているという課題も浮上していました。そのため、 金子教諭は、「高機能かつ高性能な PCや専門的なソフトウェアを導入することで、教育活動をどれだけ効果的に進めることができるのだろうという大きな期待感がありました」 と振り返りました。

STEAM Lab の導入により、学習の幅が大きく広がっています
教育活動への熱意は、 校内に掲示される標語にも表れています

問題解決型の学習形態で生徒の願いを実現

変化の激しい現代社会において、生徒たちが幸せに生きるためには、ICT 教育や STEAM 教育を含む多様な学習方法が不可欠です。同校では平成 29 年度から総合的な学習の時間を中心とした、 生徒たちが主体的に学びを深めるカリキュラム ・ マネジメントに取り組んでいます。「総合的な学習の時間で実施される探究活動と STEAM 教育は、 生徒の情報活用能力や仲間とどう協調的に取り組むかという点で大きな相乗効果を発揮しました」と金子教諭は語りました。また、 この取り組みを支えるためには、 高性能 PC が不可欠であり、動画編集や 3D プリントなどの活動を通じて、 生徒の創造性を刺激しただけではなく、 知りたいという思いの引き上げやそれぞれが直面する課題を解決する力を養うことに成功しました。金子教諭は、 STEAM Lab の設置が学習内容の幅を広げ、生徒一人ひとりの個別の学びの願望を実現する助けとなったと評価しています。

将来の仕事のキッカケとなりえる STEAM Lab

「将来を見据えた教育では、ICT スキルの習得に留まらず、それらを活用してどのように社会に貢献できるかを考えることも問われています。本校では、 生徒たちが自らの興味や特技を活かし、 さまざまなプロジェクトに挑戦することで ICT 教育をさらに推進しています。例として、 総合学習の時間を活用し、医学をテーマに探究する生徒は、教員の指導の下、遠方の専門家へのインタビューの設定から実施といった活動のほか、授業で使用する腎臓モデルの制作、 パフォーマーへの取材に基づいた文化祭で使用する動画制作など、 多岐にわたる活動を展開しています。STEAM Lab では、専門的な機材やソフトウェアが積極的に使用され、生徒たちが将来の職業への具体的なイメージを形成する手助けをしています。 STEAM Lab導入を通じ、 生徒たちから自らの将来について考えた発言が積極的に出てくることは、教育者として非常に大きな喜びです」と金子教諭は STEAM Lab の意義を語りました。

自宅で動画制作をしていた生徒が、他の生徒に使い方を教える場面も
専門的な内容が快適に扱えることで、 生徒が自分の将来について明確なビジョンを持つようになりました

生徒の思いが遂げられる学びをどう実現していくのか

「このように STEAM Lab の活用が多方面にわたっている本校においても、 未来への展望を考えると課題が見えてきます。例えば、教員の力量や技術力不足によって導入した機材の授業への活用が妨げられたり、限られた授業時間を学習指導要領とどのように融合させて生徒の思いが遂げられる時間計画を立てるかなど、解決すべき課題は山積しています。さらにeスポーツ部のように生徒に多彩な学びを提供できる活動も、 教員 ・ 保護者の理解を得られにくいだけでなく、 生徒指導上必要になる顧問の存在という永続性を解決できずにいます」と金子教諭は指摘します。「このような課題を克服するためには、 教員研修の強化、 教育環境の改善、 ICT 教育のさらなる推進が必要です。そして、 生徒たちが ICT を活用して社会問題に取り組むプロジェクトに挑戦したり国内外の学校との交流を深めるためには、 教育現場や社会全体の理解と支援が不可欠です」と金子教諭は最後に締めくくりました。

STEAM Lab 導入機材


• 株式会社日本 HP EliteDesk シリーズ
 HP EliteDesk800 G6 TWR/CT 15 台
• 27 インチ液晶モニター、3D プリンター
• Adobe Creative Cloud 小中高校サイトライセンス