STEAM Lab 活用事例
STEAM Lab活用の目的、ねらい
STEAM Labの活用を通じて、生徒の創造性や協力する力を育み、技術革新や社会問題の解決に貢献する人材を育て、持続可能な社会の創造に貢献することが大きな目的です。まさに「よりよい学校教育を通じてよりよい社会を創る」を具現化しようという決意です。さらに、教員・生徒がSTEAM Labを自在に使いこなすことで、授業の可能性を広げ新たな学びを創造しようとしています。
活用実績事例(サマリー)授業での活用
教科 | 学年 | 単元名 |
総合 | 1学年 | ともに生きる~ユニバーサル・デザイン~ |
活用実績事例(サマリー)授業以外での活用
学年 | 概要 |
ICT部 | 合唱祭におけるクラスごとの練習動画の制作 |
1.ともに生きる~ユニバーサル・デザイン~ 教科:総合 学年:1学年
【授業の目標】
「共生社会の実現」をテーマにした単元です。ユニバーサル・デザインの視点で久喜中学校の校含を捉え、課題を見出し、解決策を考察・構想します。実現可能性の高いものについては実物や模型を製作しました。
①意図や目的を明確にしながらデザインを考え、ものづくりの計画を立てる。
②学習を通して疑問に思ったことを積極的に調べたり、思いついたアイデアを進んで試そうとしたりする。
・教材、使用ツールなど
①PC ②Tinkercad ③3Dプリンター
【展開計画】
区分 | 学習活動 | 活用ツール |
導入 |
・前時までの振り返り。(UDのデザインの仕方を学んだ) ・本時の見通しを立てる。(解決策の構想·製作) |
・Chromebook |
展開 |
・解決策の構想の続き。 ・4人グループになり、課題の解決策を構想する。(ドキュメントほか) ・構想する際、以下の視点を意識する。 *UDの7原則/*デザインの意図や目的/ *期待している効果 ・解決策のアイデアがまとまったグループから製作を始める。 |
・Chromebook ・PC ・Tinkercad ・3Dプリンター |
まとめ |
・グループの活動を共有し、3Dプリンターの活用により、 表現の幅が格段に大きくなることを知る。 |
・Chromebook |
授業の様子
・3次元空間の感覚や素材の操作など、Tinkercadの基本操作を楽しみながら身に付けることができました。
・実物を作製することができないものを、3Dプリンターで模型製作することにより、大きさや傾斜などを具体的に捉えることができ、多くの気づきを得られました。




2.合唱祭におけるクラスごとの練習動画の制作 学年:ICT部 活用ツール:PC、Adobe Premiere Pro
活動の様子
・Chromebookで撮影した画像・動画を編集して10分程度の「練習風景動画」の制作、音楽編集を行いました。
・生徒のノートパソコンでは限界のある高品質の動画が、STEAM Labのパソコンを使用したことによりストレスなく編集することができました。
・授業以外でもSTEAM Labを開放することにより、生徒による課題活動の範囲が広がり、生徒の活動の主体性をより高めたと言えます。
その他、活用の成果
教員の感想·変容
課題を発見し解決する学習活動が最近の主流ですが、とかく中学校段階においては解決策を構想する段階にとどまることが多いです。その要囚は解決策の実現可能性というソフト面や、授業時数や金銭の問題というハード面が関係し、複合的です。しかし、生徒が自在にTinkercadや3Dプリンターを駆使することで、表現の幅と可能性が大きく広がりました。さらに、これらの操作に小学校から慣れ親しむ生徒の方が、教員よりも長けている点が、否が応でも生徒の主体性を高めることになった点を指摘しておきたいです。そして、これまで構想段階にとどまっていた学習活動を、実行段階に進むことを自明視することができるようなったことが私たちに教員にとっての大きな変容でした。
生徒の感想·変容
当時の指導の記録を引用します。
そのときの様子…ある生徒が、3Dプリンターが印刷している様子を見て言いました。「なんか、小さくね?!」そして「えッ?本当のサイズが90cmx7cmで、それの10分の1なんだから、90mmx7mmで良いんじゃないの??」「ん…なんかよく分かんないけど…でも実際に定規を当てて測ってみたじゃん!」…とすったもんだした結果、「やはりサイズは合っていた」ということになりました。というよりも、実寸の10分の1に設定した模型のサイズが小さいのでは?ということに気づいたのでした。
このように、模型を作ってみることによりサイズ感をよりリアルに感じなら試行錯誤する様子が見られました。
保護者・地域の声
小学校の時以上に積極的に活用し、ワクワクするような授業をしてほしいという要望があります。特に動画制作の実践では、教員の手を借りずに生徒が主体的に動画を制作する姿に大変感心していただけました。
今後の課題
数学で立体模型を作ったり、社会科で山岳の稜線を表現したりと、教科への日常的な活用をさらに推し進めていきたいです。
STEAM Lab 実証研究校インタビュー
埼玉県東部に位置する久喜市は、ICT 教育の柱として「誰一人取り残さない教育の実現へ NEXT GIGA を見据えた『久喜市版未来の教室』実現に向けて」をスローガンに掲げ ICT 教育に取り組んでいます。その功績が認められ、2023 年に全国 ICT 教育首長協議会および日本 ICT 教育アワード実行委員会主催の第 6 回「日本 ICT 教育アワード」で「経済産業大臣賞」を受賞。さらなる深い学びに向け、STEAM 教育にも精力的に取り組む久喜市の中心部に学び舎を構える久喜市立久喜中学校の「STEAM Lab」活用について同校の校長と教諭、そして同市教育委員会にお話しを伺いました。
ICT は慣れ親しむから、当たり前に使いこなし “使い分け” のフェーズへ。
同校が居を構える久喜市では教育委員会が、次代の世界で活躍する「未来を拓く力」を育むために、「オンライン教育の実施」「個別最適な学びの提供」「STEAM 化された学びの提供」「校務の効率化」といった 4 つの柱に加え「教師の研修」を加えた独自の 4 + 1 のコンセプトを打ち立て、最先端の取り組みを実施しています。そういった取り組みを受け、同校では GIGA スクールの実施に伴ってタブレット端末による 1 人 1 台環境を整備。加えて、2022 年には、生徒の創造性や協力する力を育み、技術革新や社会問題の解決に貢献する人材を育て、持続可能な社会の創造に貢献することを目的に「STEAM Lab」が設置されました。同校の木村校長は「本校では、コロナ禍以降から授業はもちろん課外活動や連絡事項などでも ICT 環境を活用していたので、すでに 1 周回っている感があります。そのなかで、生徒たちの力を育てるために、ICT が得意な分野、アナログでやることの重要性といった “使い分け” を考えながら教員が授業デザインを行っています」と ICT 環境が学校生活に根付いていると語ります。
学校が抱える課題の解決、社会貢献への応用にも STEAM Lab を活用
同校の駒田教諭は、STEAM Lab の活用状況について「本校では総合的な学習の時間を使い、ユニバーサルデザインの視点で校舎を見直し、誰もが過ごしやすい学校を考えようというテーマで学習を進め、STEAM 教育を取り入れました」と語ります。この取り組みは、生徒たちが視覚障がいを持つ人や小さな子ども、高齢者といったさまざまな人の立場になり、校舎を見て回って学校が抱える課題を発見し、その課題を克服・解決するための手だてを考えて解決に導くといったもの。「解決方法を構想するにあたって、一部の班では CAD で設計したものを 3D プリンターで出力していました。本校は、災害時に避難所にもなりますので車椅子に乗っている人がスムーズに動けるように段差を解消したい。そういった課題に対し、スロープにはどれくらいの大きさや角度が必要かなど、シミュレーションしながら作成しました」と、社会貢献のひとつとしても STEAM 教育が活用され、その一助として STEAM Lab が活用されたと語ります。


STEAM Lab の設置によって新たに「ICT 部」を発足。先端技術をより身近な存在に
総合的な学習を中心に活用される同校の STEAM Lab は、課外活動にも広がりを見せています。そのひとつが、STEAM Lab の設置に伴って新たに立ち上げられた「ICT 部」での活用。ほぼ毎日のように STEAM Lab で活動する同部は、高性能な PC と 3D プリンターといった機器に触れながら先端技術を学んでいます。その活動は、動画編集や 3D プリンターを活用した制作、ロボットコンテストへの参加やペンタブレットを用いたイラストの作成、プログラミングなど多岐にわたります。また、合唱祭に向けた各クラスの練習風景の映像を集め、約 10 分程度の動画を制作するなど、学校行事にも貢献。同部の顧問を務める小川教諭は「これらの活動を行うには、生徒のタブレット端末では限界があります。処理性能の高い STEAM Lab の PC が使用できたことでストレスなく活動が行えました。本校の生徒は PC に対して抵抗がなく、目的のために必要なソフトや環境を自分たちで判断しながら使っています。軌道修正が必要な場合は声掛けをしますが、自由に使わせることで活用の幅が広がっていると思います」と語ります。

「ぽぷにゃん」をモデリングし、立体化

学びを “参加” から “参画” へ。そして、いつでも使える場にしたい
STEAM Lab の設置について、同校の駒田教諭は「授業の面においては、これまで ICT 機器を使って何か調べて発表したら終わりということが多かったですね。それが STEAM 教育を取り入れたことで、課題の解決に向けて実際に 3D プリンターで何かを作ってみたり、シミュレーションをしたりと、より生活に入り込んだ発表ができるようになったと感じています。“参加” から “参画” へと生徒の意識も変わったと思います」と語ります。加えて「これまでは PC を得意とし、PC で何かを表現したいという生徒の居場所がなく、その生徒たちの能力を存分に活かしきれていませんでした。しかし、STEAM Lab があることによって、そういう生徒たちが集まって個人の研究やチームで課題に取り組み成果物を作るなど、ICT に関しての多様な学びが行えるようになりました。生徒たちの良さを伸ばす場ができたことは大きいと思います」と STEAM Lab について評価しました。また、同校の木村校長は「STEAM Lab を特別な場所として捉えるのではなく、いつでも解放されている部屋、なんなら廊下に並べるなど、使いたいときにいつでも誰でも使える環境にしたいですね」と、今後の展望について語り、さらなる活用に意欲を見せています。
STEAM Lab 導入機材

• レノボ・ジャパン合同会社
ThinkStation P2 Tower
ThinkStation P3 Tiny
• 28 インチ液晶 4K モニター、 3D プリンター
• Adobe Creative Cloud 小中高校サイトライセンス
• みんなでプログラミング
【久喜市立久喜中学校(久喜市教育委員会)】STEAMLab活用事例集 (PDF 23.8 MB)