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導入フェーズ

本格導入が進むデジタル教科書。
普及の課題と販売店がすべきこととは?

2023.01.13

GIGAスクール構想により1人1台端末のICT環境が整備されたことで、端末や大型表示装置を活用する授業の方法としてデジタル教科書を使用する自治体が増加しています。しかし、児童生徒が活用する学習用デジタル教科書の普及率はまだまだ低いのが現状です。本記事では、デジタル教科書普及に向けた課題や取り組みについて解説したうえで、販売店が提案できることについてご紹介します。

学習用デジタル教科書の普及率はまだ低い

デジタル教科書とは、個別最適化された学びや協働的な学びの充実を推進するために、紙の教科書と同じ内容をデジタル端末で表示できるようにしたものです。大きく以下の「学習者用」「指導者用」の2種類に分かれており、デジタルの強みを活かして他の学習支援ソフトなどと連携できます。

・学習者用デジタル教科書
児童・生徒が使用するためのデジタル教科書。児童生徒が1人1台のタブレット端末を使用して学習することが前提とされています。

・指導者用デジタル教科書
教員が使用するデジタル教科書。電子黒板やプロジェクターなど、授業の中で情報提示を行う際に活用されることが想定されています。

文部科学省が2021年(令和3年)6月に行った「デジタル教科書の今後の在り方等に関する検討会議」では、各教科書メーカーのデジタル教科書への対応状況は、2021年(令和3年)において小中学校ともに約95%に達しており、順調とされています。また、デジタル教科書の普及率については、文部科学省の「令和2年度学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果」によると、指導用デジタル教科書の普及率は小中学校では70%以上となっており、こちらも比較的順調といえる状況です。

一方、学習者用デジタル教科書は小学校で6.4%、中学校で5.9%と課題が残る結果となっています。学習用の普及率が低い要因としては、紙の教科書が無償化対象であるのに対して、デジタル教科書が無償化の対象ではないことが挙げられます。そのため、紙の教科書の無償化を今後も続けるべきか、それともデジタル教科書も無償化の対象とすべきか、有識者会議にて議論されています。
また、紙とデジタルを併用する案も検討されていますが、その場合、学校・教育委員会側がどのようにしてコストを捻出するのかが大きな課題となっています。

参考:文部科学省「デジタル教科書の今後の在り方等に関する検討会議(第一次報告)」

出典:文部科学省「令和2年度学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果」

次章では、このように普及が進まない学習用デジタル教科書を普及させていくうえでの課題について解説します。

学習用デジタル教科書の普及に向けた3つの課題

学習用デジタル教科書を本格的に普及させるためには、以下3つの課題解決が求められます。

課題①:ネット回線にかかる負荷(クラウド配信の場合)

デジタル教科書を活用する際には、Windows 10に加え、GIGAスクール構想で導入が進んだChromebook(Chrome OS)やiPad(iOS)など複数のOSへの対応が求められますが、OSごとにアプリを開発しインストールするのは現実的ではありません。そのためOSに依存せず、デジタル教科書の中身(コンテンツ)を必要なときに配信することができるクラウドの利用が想定されます。
しかし、その場合、同時に多くの児童生徒が利用するため、ネット回線に過大な負荷がかかる可能性があります

課題②:徹底したセキュリティ対策が必要

デジタル教科書を活用する際には、1人1台端末からネットワークに接続することが一般的となるため、セキュリティ対策は不可欠です。
セキュリティ対策が不十分だと、デジタル教科書から児童生徒の学習データや宿題などの個人データが漏えいする可能性があります。このような情報が漏えいした場合、児童生徒のプライバシーに重大な影響を及ぼすため、徹底したセキュリティ対策が必要です

教育現場の情報セキュリティ対策については、こちらの資料でも解説しています。ぜひ、あわせてご覧ください。



課題③:負担費用

学習用デジタル教科書が普及しない最大の原因と考えられるものが、費用面の課題です。
2022年における、義務教育課程の「教科用図書」の購入費は年間約460億円といわれていますが、無償化の対象は紙の教科書のみです。
学習者用のデジタル教科書は無償の対象外となっており、購入に係る費用は市町村や教育委員会が負担することになっています。つまり、学習用デジタル教科書の普及には金額の負担が生じるため、財政事情により導入が進まない自治体が出てきているということです。

なお、デジタル教科書の今後のあり方について、文部科学省は、次の小学校の教科書改訂時期である2024年を見据え、有識者会議にて検討を行うとしています。現状では、上記のような課題からまだまだ普及していない状況ですが、近い将来本格的な普及が目指されていくと予想できます。

参考:文部科学省「『GIGAスクール構想』の実現ロードマップ(イメージ)」

2024年度デジタル教科書本格普及に向けた取り組み

デジタル教科書を普及するために費用面の課題解決が求められる中、文部科学省は2024年度のデジタル教科書の本格普及を目指しています。

そこで、2022年8月に開催された「教科書・教材・ソフトウェアの在り方ワーキンググループ(第5回)」では、デジタル教科書を小学校5年生から中学校3年生を対象に「英語」に導入し、その次に現場ニーズの高い「算数・数学」に導入する方向性が示されました。
実際に、普及に向けた実証事業として、全国の国・公・私立の小学5・6年生と中学生にデジタル教科書が無料配布されています

参考:文部科学省「個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実に向けた教科書・教材・ソフトウェアの在り方について(案)」

次章では、このような取り組みを踏まえたうえで、販売店ができることをご紹介します。

今後の課題から販売店ができることとは?

先述のようなデジタル教科書の普及に向けた取り組みが進む中で、販売店ができることとして以下2つがあります。

インターネット回線の強化

先述の通り、デジタル教科書が普及した場合にはクラウドを利用したコンテンツの配信が想定されます。その際、多くの児童生徒が同時にアクセスしても問題ないよう、通信方式の変更などインターネット回線の強化を提案することが効果的です。

セキュリティ対策

デジタル教科書はインターネットに接続して活用することになるため、セキュリティ対策は必須です。特に、校務系情報端末のセキュリティを高めるため、学習系ネットワークと校務系ネットワークを分離して学習用端末から校務用端末にアクセスできないようにするネットワーク分離や、クラウドの環境に対応するため「ゼロトラスト」型のセキュリティ対策などが求められます。

「ゼロトラスト」の概要については、以下記事で解説しています。ぜひ、あわせてご覧ください。



販売店は上記2つのことを行う他に、デジタル教科書が教育現場で多く活用されるようになった場合に迅速に対応できるよう、情報収集をすることが重要です。また、デジタル教科書を有効的に活用するためには、オンライン学習を行うための公的プラットフォームであるMEXCBT(メクビット)と連携する「学習eポータル」の導入も必要となります。学習eポータルを介してデジタル教科書を活用することで、教育の進捗状況や改善点の把握などができるようになります。

デジタル教科書を有効活用するための「学習eポータル」とは

学習eポータルとは、デジタル教科書・教材やMEXCBT(メクビット)、学習用ツールなどが連携するための「ハブ」の役割を持つ、教育機関向けプラットフォームのことです。シングルサインオン機能があり、1度ログインするだけで複数のツールを利用できます。また、学習eポータルは、児童生徒の学習の窓口機能や、1人ひとりの学習記録を表示する機能などを持っています。
2023年1月現在では、民間企業から5つの学習eポータルが提供されており、今後順次機能が拡大される予定です。

学習eポータル経由で「デジタル教科書」を利用する際は、別途費用が発生する場合があるため注意が必要です。以下資料では、学習eポータルの概要や機能などをまとめてご紹介しています。ご関心のある方はぜひご覧ください。

関連資料のご紹介

「MEXCBT」と「学習eポータル」について

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