DISの教育ICT総合サイト

子どもたちが広げるICT教育の可能性。求められる「21世紀型スキル」とは? 【後編】

2016年01月08日 記事

21世紀型スキルの育成を目指したプロジェクト型学習とは?

21世紀型スキルの育成を目指した授業とはどのような授業なのか。またどのようにICTが活用されているのか。

山田教諭の授業事例を紹介しよう。

山田教諭は5年生の社会科で情報化社会について学ぶ単元において「健康増進につながる新しい情報端末をつくろう」を課題にしたプロジェクト型学習を実践した。この単元は自分たちや社会にとって情報とはどのようなものか、大人は情報をどのように活用しているかを学ぶ単元だが、山田教諭はグループごとに健康増進に役立つ新しい情報端末を考えてイメージ画にまとめ、最後に説明文をつけリーフレットとして仕上げる学習計画を立てた。「実社会とつながりを意識した学習課題を与えて、5年先、10年先の未来を考えるようにし、情報の咀嚼→思考→提案ができるプロセスにした」と山田教諭は授業デザインを語る。ICTは情報収集とリーフレットの作成時に活用した。

※クリックで拡大します
※クリックで拡大します
※クリックで拡大します
※クリックで拡大します

授業では最初に、情報化社会の把握のため、インテル株式会社の社員がゲストティーチャーとして協力。インターネットビデオ通話での遠隔授業を行い、これからの社会に役立つテクノロジーや情報モラルの正しい知識や考え方などを学ぶことからスタート。その後、それらの知識を活用しながらグループで新しい情報端末について話し合いを進める。山田教諭は「答えがひとつとは限らないプロジェクト型学習では、面白いアイデアを中心に話し合いを進めていけるので子どもが発言しやすく、発想も広がりやすい」と語る。実際、グループのうちのひとつは、スマートフォンに取り外し可能な腕バンドをつけ、その腕バンドを体に装着すれば体調を記録するウェラブル端末の機能を備えた情報端末を提案した。この授業が行われた時点では、まだ世の中には時計型のウェアラブル端末は普及していなかったことを考慮すると、子どもたち主体で進むプロジェクト型学習も探求した方向性が間違っていなかったことが分かる。山田教諭は「正しい知識を学んで現状を把握し、他者と協力しながら情報を吟味したり、活用することができれば、子どもであっても大人と同じような発想を持つことができるのではないか」と分析する。

タブレットやICTを授業で活用するメリットとは?

山田教諭のプロジェクト型学習におけるICT活用は、情報収集や情報活用力、創造性などの育成を目的にしていた。

しかし、それ以外の授業でもICTを活用するメリットはたくさんある。

朝倉教諭と加藤教諭の話を紹介しよう。

朝倉教諭は「今までの一斉授業が子ども中心になり、協働的な学びに発展しやすいことがICTを使う一番のメリットだ」と語る。調べ学習の内容を模造紙などにまとめるグループ活動も以前からあったが、ICTを活用すればより効率的・効果的に行うことができる。紙の場合は、何度も消して書き直したり、友達が書き終わるまで待ったりと編集作業の煩わしさがあるが、ICTを使えば、簡単に修正作業を行うことができるうえ、自分の考えの共有や、友達の考えの比較なども手軽にできる。「何かを学ぶときのひとつの手段としてICTを捉えることができるようになったことは、教師や子どもたちの選択肢を広げる」(朝倉教諭)。実際に朝倉教諭がクラスの児童を対象に実施したアンケートにおいても、“タブレットを使った方が考えやすい、表現しやすい”という意見が多く得られたという。

※クリックで拡大します
※クリックで拡大します

また朝倉教諭は、「タブレットを活用した個別学習にも手応えを感じている」と語る。受け持ちの6年生の学級では、基礎基本の定着のためにタブレットのドリル教材を使用しているが、個人の理解に合わせて学習を進めることができるのがメリットだというのだ。理解が早い子どもは先取り学習で中学3年まで進めていたり、算数が苦手な子どもは学年をさかのぼって学習をするなど、子どもたちが自分で選択して、学習を進めていけることがICTのメリットだと話す。

 

加藤教諭も、「ICTを使った授業は、子どもがひとりきりにならず、みんなでできることが増えるのが良い」とメリットを挙げる。というのも、目の前にある情報を咀嚼してフィードバックし、他の児童の意見を聞いて話し合うといった授業は、これまで手間がかかっていた。しかし、ICTを活用することでより効果的に取り組めるうえ、タブレット上では、写真や動画、音声などさまざまなメディアを扱うことができるので、子どもの表現を豊かにし、コミュニケーションを活発にしてくれるのだ。

 

「小学1年生に対してカラーの資料をタブレットに配布するような使い方でも、十分に子どもの変容が見られる」(加藤教諭)。同教諭は以前、小学1年生が動物園遠足に行く事前学習で、児童に動物園のカラー地図を配り、グループで見学ルートを考える活動を行なったことがある。その際に見られた児童の変容として、カラーで表示された地図は、白黒で表示される紙印刷に比べて情報が豊富で、危険エリアや集合場所なども一目で判別しやすく、子どもたちがグループに分かれて動物園をまわるルートを考える際も、確実な情報をもとに意思決定することができたというのだ。そのため“自分たちの班はなぜこのルートでまわるのか”を明確な根拠を持って相手に説明することが1年生であってもできるという。これは紙に比べて、正しい情報を見せやすいというタブレットの特性ではあるが、単にタブレットを機械として捉えていては、この特性は生かされないだろう。授業のねらいにタブレットをどう生かすのか、その視点でICTを捉えていなければ、子どもたちの成長にもつながらない。加藤教諭は「ICTを生かすために大切なものは、教員の授業力だ」と語る。

21世紀型スキルの育成を目指して授業にICTを取り入れることは、これまでの授業スタイルを大きく変えてしまうかもしれず、最初の一歩が難しいのかもしれない。しかし3名の教諭がインタビューの席で口を揃えて話していたことは、「まずは子どもたちにタブレットを使わせてみる」ということだ。「そこから必ず、児童の変容を知ることができ、その手応えをもとに少しずつ前進していける」。ICTは、今までに知らなかった子どもの変容を知るためのツールであるのかもしれない。

ページトップに戻る