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都立高校が Chromebook を活用した授業に挑戦。その中身と課題点とは?〜東京都立雪谷高等学校の事例(後編)〜

2020年02月21日 記事

東京都立雪谷高等学校は、2018年10月から2019年9月末の1年間で、 Chromebook を活用したICT活用の実証実験に取り組んだ。前編では主に、実証実験の概要と学校生活や行事での活用事例を紹介した。後編の本稿では、雪谷高校の授業で Chromebook がどのように活用されているのかをレポートしよう。

東京都立雪谷高等学校 百瀬雅治教諭・新海雅輝教諭・池田茂樹校長・石川達也副校長

多様な情報にアクセスできる学習環境で、課題解決や取捨選択できる力を伸ばす

東京都立雪谷高等学校(東京都大田区/以下、雪谷高校)で、情報を担当する新海雅輝教諭は、高1の社会と情報の単元「問題解決」で、“滞空時間の長い紙飛行機を作ろう”をテーマにした課題解決型学習を実施した。

 

各グループには4G LTE対応の Chromebook が1台配備され、生徒たちはどうすれば長く紙飛行機を飛ばすことができるか、折り方や投げ方などの情報収集を Chromebook で行う。調べた情報を実際に試してみたり、さまざま知識を組み合わせたりしながら、グループで協力しながら試行錯誤を繰り返し、紙飛行機の滞空時間を競い合った。

 

新海教諭は授業のねらいについて、「与えられた課題に対して、自分たちがどう向きあうのか、どうすれば最善を尽くすことができるのか、それを考える手段のひとつとして Chromebook を活用しました。生徒たちには、ネット上にある情報が本当に正しいかどうか、精査する体験をしてほしいと考えていました」と語る。今の生徒たちの傾向として、検索結果で得られた情報を精査せずに、鵜呑みにしてしまうことも多い。情報を精査する体験を通して、自分で判断できる力を身に付けてほしいというのだ。

新海教諭による紙飛行機の授業風景

実際に生徒たちは、紙飛行機の体験から学んだようだ。ギネス世界記録の折り方は再現がむずかしいことや、ひとつの情報よりも、より多くの情報を組み合わせて試行錯誤する方が上手くいくことなどを実感したという。新海教諭は「最初は、“高校生で紙飛行機なんて…”と話していた生徒たちでしたが、実際にやってみることで情報に対する見方が変わったという意見も聞かれました。情報を取捨選択できる力の大切さを学んでくれたと思います」と話す。

 

また新海教諭は、 G Suiteを活用してペーパーレス化にも挑戦した。高1と高3合わせて計14クラスの情報の授業を受け持つ新海教諭にとって、課題プリントの配布、回収、採点、返却のプロセスは膨大な作業量だ。そこで、「 Google フォーム™ 」を活用して小テストを作成し、生徒たちに配布。それを復習課題として期日までに提出するよう求めた。 Google フォーム であれば、生徒の解答を自動採点し、瞬時に集計することも可能。新海教諭は「生徒の解答をリアルタイムに把握し、どこが分かっていないのかを確認できることがメリットでした」と語る。ほかにも、新海教諭は「 Classroom 」に授業の資料をアップして反転授業を行うなど、活用の幅を広げている。

生徒1人1アカウントの環境を活かし、学校では共同作業、自宅では続きを一人で。

高2倫理を担当する百瀬雅治教諭は、世界三大宗教をテーマにした授業で Chromebook を活用した。生徒たちに与えられた課題は、三大宗教の中から興味あるものを選び、どのような宗教なのか、宗教が芸術品にどのような影響をもたらしたのかなどを、自分で探究してポートフォリオにまとめるというもの。生徒たちは、教科書や資料に加えて、インターネットの情報も取り入れながら、一つの成果物を作成した。

 

百瀬教諭は成果物のまとめ方について、紙とデジタルのどちらを使用しても良いと生徒が選択できるようにした。その結果、半分くらいの生徒が G Suiteのドキュメント「 Google ドキュメント™ 」やプレゼンテーションツール「 Google スライド™ 」を使用して、成果物を作成したという。また同課題をグループで取り組んだ生徒たちの中には、学校では共同編集でスライド作成に取り組み、家庭では各自がドキュメントで台本を作成するなど、デジタルのメリットを活かした役割分担も見られたという。百瀬教諭は「生徒たちは、自分の考えを表現するためには、どのようなツールが望ましいのか。それを判断できる力はあると考えて、ツールを選択できる自由度を重視しました」と話す。一方で、情報の扱い方については、生徒たちの意識を高めるために出典の記載を徹底するなど、指導に力を入れたという。

 

ほかにも百瀬教諭は、「 YouTube™ 」の動画を教材として活かしている。たとえば、ディズニーチャンネルが提供するプーさんの動画は、中国思想やギリシャ思想の理解につなげることができるというのだ。「“どの場面がどの思想に関わってくるか”という問いを投げかけて、皆で意識しながら見ると、“ここじゃない?”と生徒同士の対話が生まれます。リアルで身近なコンテンツを使うことで、生徒たちが興味を持ちやすく導入に有効だと考えています」と百瀬雅治教諭は語る。

 

雪谷高校では、新海教諭や百瀬教諭の授業以外でも、多くの授業で Chromebook が活かされている。国語では、各自が作成した俳句の相互評価を行う際に、「 Google ドキュメント」のドキュメントを生徒全員で共有し、リアルタイムで書き込みを行いながら進めた。体育では持久走のタイムを「 Googleスプレッドシート™ 」に記録し、生徒たちが振り返りや自己分析に役立てている。デジタルのメリットを活かすことで、より参加型の授業へと変化しているといえるだろう。

ICTは生徒の学びを深める授業に有効。課題は、教員研修の充実

雪谷高校の池田茂樹校長は今回の実証実験を振り返って、「ICTの活用が情報伝達やコミュニケーションの効率化だけに終始せず、生徒の学びをさらに深める授業づくりに活かせることが分かりました。教員のアイデアとICTが上手く結びつけ、生徒たちが自分たちで答えを見つける授業を作ることができると考えています」と述べた。今、最も教育現場で伸ばしたい力のひとつ、“考える力”の育成においても、ICTの活用は有効だというのだ。

 

また石川達也副校長は、 Chromebook の稼働率の高さに驚きました。正直、こんなにも活用されるとは思いもしませんでした。もちろん、 Chromebook の使いやすさもあるかと思いますが、生徒全員が G Suiteのアカウントを持っていたことが活用の頻度を上げたのではないかと思います」と語った。一人1台の端末整備も大切であるが、それと同時に、場所や時間に囚われず、いつでも使えるクラウドプラットフォームの学習環境を築くことも重要だというのだ。

 

一方、課題点について池田茂樹校長は、「大学も知識の活用やCBTを重視するなか、都立高校はもっとスピーディにICT化を推進していく必要があります。都立高校に通う子が遅れるようなことがあってはならないと考えています。そのためには、教員研修が課題になってくるでしょう。手厚い教員研修が望まれると思います」と述べた。また石川副校長は、「インターネットの使える場所を限定したり、アクセスを制限したりと、生徒の情報モラルを心配する声もわかりますが、だからといってICTの利便性が損なわれては、現場で使われなくなります。どうすれば自由度の高い使い方ができるのか、安心・安全も考慮しながら環境を考えていく必要があります」と語った。

 

さらに、授業で Chromebook を活用した新海教諭や百瀬教諭にも、課題点について聞いた。新海教諭は「教員研修が課題であるが、その場限りになりがちです。ICTで何ができるのかを示していく必要があるでしょう。また小中学校でもICT化が進み、地域によって生徒のITリテラシーに差が出てきたことを感じます。生徒間のITリテラシーの差をどのように埋めていくのかも課題です」と話した。百瀬教諭は「ICTを活用した成果物について、評価の妥当性が課題になると思います。高校のICT活用については、小中学校でやっていることを前提に、次のステップが求められると考えています」と述べた。両教諭ともに、教員研修をさらに充実させていかなければならないというのだ。

 

以上が、雪谷高校における実証実験のレポートとなる。都立高校においてもICT活用が重要視され、今後はさらに環境整備も進められていく。生徒たちが社会に出てから活躍できる人材になるためには、高校時代に経験する学び方も重要であり、雪谷高校の事例を多くの高校に広げてほしい。

 

 

 

 

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