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「生徒一人につき1アカウント」と「学校共有の Chromebook 」で都立高校が実証実験を実施。その中身とは?~東京都立雪谷高等学校の事例(前編)~

2020年01月24日 記事

 東京都立雪谷高等学校は、2018年10月から2019年9月末の1年間で、 Chromebook™ を活用したICT活用の実証研究に取り組んだ。高等学校は今、2022年度から始まる新学習指導要領の全面実施に向けて、ICTの活用が求められているが、その一方で環境整備など課題も多い。公立高校におけるICT活用はどのような可能性があるのか。雪谷高等学校の実証研究の内容をレポートしよう。

東京都立雪谷高等学校(東京都大田区)

これからの社会を見据えて、高校こそICT化に対応すべき

東京都立雪谷高等学校(東京都大田区 / 以下、雪谷高校)は、創立106年目を迎えた伝統校だ。文武両立を教育目標に掲げ、 生徒の学力向上と部活動の充実に取り組んでいる。なかでも、硬式野球部とチアリーディング部は強豪校として知られており、特別推薦枠を設けるなど力を入れる。学業と部活動の両立を重んじる環境の中で、社会に貢献できる人材育成をめざしている。  雪谷高校は、以前からICT 活用にも積極的に取り組んでいる。2011年度には ICT推進校に指定されたほか、2019 年度には情報モラル推進校にも選ばれた。同校の池田茂樹校長は、「新学習指導要領も示している通り、これからの教育はICT化が必須だと考えています。大学の入試制度も変わり、生徒たちが活躍する社会においても情報活用能力が求められるなか、家庭だけのICT 利用で必要とされるスキルを伸ばすことはむずかしいです。やはり、学校できちんと対応していく必要があると考えています」と語る。

東京都立雪谷高等学校 池田茂樹校長

東京都立雪谷高等学校 石川達也副校長

また同校の石川達也副校長もICTを学習に活かすメリットについて語る。「クラウドの活用やオンラインの学習教材については、今まで把握しづらかった生徒たちの学習状況が分かることにメリットを感じます。学習到達度を比較したり、家庭学習の時間を把握したりと、より細かな指導ができるほか、学校としても保護者に対して説得力を持って話ができる点が良いと思います」(石川副校長)。学習内容を見える化することによって、生徒一人ひとりに寄り添った指導が可能になるというのだ。

生徒一人につきG Suite を 1 アカウント配布 Chromebook を共有端末で使う環境

雪谷高校が取り組んだICT 活用に関する実証研究の概要を説明しよう。実証研究の期間は、2018年10月から2019年9月までの約1年間。当初は2019年3月末で終了する予定だったが、現場での稼働率が予想以上に高く、半年間ほど延長されたという。使用したデバイスは、NTTドコモのLTE回線を利用する4G LTE対応の「Acer Chromebook 11」。ちなみにこのLTE回線を利用した導入には特別な設備を設置していない。2018年度は160台の端末を使用し、2019年度は60台の端末で実証実験が行われた。これらの端末を保管カートに収納して、使用時に移動しながら使うスタイルで進められた。

Chromebook を利用した授業風景

導入されたAcer社の Chromebook11

雪谷高校の実証研究で注目したい点は、教師51名に加えて、高校1年生から3年生までの全生徒841名に対して、教育機関向けのコラボレーションツール「G Suite for Education™(以下、 G Suite )」 のアカウントが配布されたことだ。これにより、 Chromebook の台数には制限があるものの、生徒のアカウントでログインさえすれば、いつでも自分のコンピュータとして活用できる環境が整った。同校で情報を担当する新海雅輝教諭は「 G Suite のように自分のアカウントさえあれば、学校の端末であろうが、自宅の端末であろうが、 いつでも自分のコンピュータとして使えるのはメリットです」と語る。いつでも、どこでも、インターネットにつながるデバイスさえあれば、生徒たちは必要な情報にアクセスできる。こうした環境は、生徒の学習の選択肢を広げるというのだ。

東京都立雪谷高等学校 情報科 新海雅輝教諭

一方で、心配になるのはセキュリティ面だろう。学校で、学習用途として Chromebook を使うときは、安心・安全面への不安がつきまとう。もちろん、今回の実証研究においては、セキュリティ対策が万全な端末が使用されたが、デジタルネイティブの高校生がどのような使い方をするのかは気になるところだ。これに対して新海教諭は「生徒たちは学校から配備された端末だということもあり、不適切な使い方をする生徒はいませんでした。私もあまり心配せずに使用していました」と語る。新海教諭は同校における従来のPC環境と Chromebook を比べて、授業中の使いやすさをメリットに挙げた。今までは、教師が端末と可動式のAPをカートで教室まで持参し、そこから無線LANにつないで授業で使用していたという。「今回はLTEの Chromebook だったので、教室に端末を持って行き、グループに渡せばすぐに使える状態でした。起動も早いのでスムーズに使うことができ、授業の流れも作りやすかったです」と話す。LTEモデルや、Wi-Fiモデルの端末に関わらず、いつでもインターネットにアクセスしやすい環境が授業のICT活用には必要だというのだ。

Chromebook と G Suite は、学校生活や行事のあらゆる場面で活用できる!

雪谷高校では、 Chromebook や G Suite をどのように活用していたのか。まずは、学校生活や学校行事での利用を紹介しよう(授業の活用事例は後半で紹介)。生徒一人ひとりに G Suite のアカウントが配布されたことで、今まで紙ベースで行われていた情報共有やコミュニケーションは変わる。これだけでも、学校生活や学校行事に与えるインパクトは大きい。たとえば文化祭では、執行部の情報共有や連絡事項の伝達が効率化された。今までは、昼休みや放課後に各クラスから代表の生徒が集まって連絡事項を伝えていたが、生徒が G Suite を持つようになってからは、集まる回数が減ったという。執行部の生徒と教員は「Google Classroom™(以下、Classroom」)を通して情報共有を行うようになり、場合によっては、生徒に直接メール(ドメイン内のみで利用可能)を送って要件を伝えることも可能になった。また新海教諭は「Classroomで情報共有したことで、生徒たちの活動状況も把握できるようになりました」と語る。作業や連絡が滞っている部分や上手く進んでいない部分が見えるようになり、早めの対応が出来るようになったというのだ。 もうひとつ、修学旅行での活用も紹介しよう。雪谷高校は毎年、沖縄でグループごとに民泊を体験するが、その点呼に Chromebook と G Suite が活用された。今までは、教師が全てのグループに電話をかけていたが、今回はG Suiteが提供するコミュニケーションツール「Googleハングアウト(以下ハングアウト)」を利用。 教師は Chromebook からアクセスし、生徒たちは個人端末を使用したという。新海教諭は「実際に顔を見ながら、生徒たちとコミュニケーションが取れて良かった」と述べた。

 Chromebook は合宿でも活用され、教師は「ハングアウト」を利用して生徒とテレビ電話で点呼を取るなどした。

ちなみに、「ハングアウト」の利用については、事前に学年全体で使い方を練習したという。その方法も斬新で、新海教諭は7クラス同時に「ハングアウト」を使用して学校内で遠隔授業を実施。生徒たちは、グループに配備された Chromebook から新海教諭にアクセスし、コミュニケーションを交わす練習を行った。「こうした形がもっと自然にできるようになれば、学年集会で利用するのも一つの方法でしょう。生徒たちが移動することなく、教室に居たまま話を聞くことも可能です」と新海教諭。ひとつの活用から、さまざまなアイデアが膨らむ。社会科百瀬雅治教諭が所属する雪谷高校の進路部では、希望者対象の勉強合宿で Chromebook を活用した。高校1・2 年生を対象に、企業が提供するサービスを用いて、eポートフォリオ作成に向け自己の活動を振り返り、まとめる活動を実施。生徒たちは、今までeポートフォリオを記入したことがない生徒もおり、実際活動をまとめる経験をする場を提供したいと考えていたという。「合宿は学校外で実施されますが、 Chromebook を持っていけばネットにもアクセス可能なので、eポートフォリオの練習ができると思いました。一緒になって取り組むことで、進学意識が高まったというアンケート結果もありました」と百瀬教諭は語る。eポートフォリオについては、“各自でやっておくように”という言葉がけで、生徒が出来るものではない。どのような学習成果や記録を蓄積していくのか。こうした指導も今後は必要になってくるというのだ。

東京都立雪谷高等学校 社会科(公民科)百瀬雅治教諭

後半では、雪谷高校での授業における Chromebook の活用事例について紹介する。生徒たちの学びに変化があるのか、都立高校におけるICT活用の課題点は何か、 さらに深堀りしていく。

 

 

 

 

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