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宮城県教育委員会が取り組んだICT環境整備とは?(後編)

2019年04月23日 記事

宮城県教育委員会は、2018年度から本格的にICTを導入し、「MIYAGI Style」と名付けた教科指導におけるICT活用を進めている。その具体的な内容については前編でも紹介した通りだ。教員用タブレットにiPadを選択したほか、教師によるBYODの環境も築き、まずは教師が使えるICT環境を整備した。またICT活用を推進する教師を「MIYAGI Style スタイリスト」に任命するなど、現場での普及にも力を入れる。実際に、学校ではどのようにICTが活用されているのか。スタイリストのひとり、奥山敏基教諭が在籍する宮城県古川黎明中学校・高等学校の様子をレポートする。

 

まずは一斉学習で活用できるICT環境を整備

宮城県古川黎明中学校・高等学校(宮城県大崎市)は、公立学校としては県内初の中高一貫教育校だ。ICT活用についても積極的に取り組んでおり、宮城県教育委員会が実施した2年間(2015年度〜2016年度)のICT導入に向けた検証事業では実証校にも選ばれた。この検証事業で、学習の向上や情報活用能力の育成にICTが有効であると手応えが得られたことから、宮城県教育委員会では2018年度から全県立学校に対して、本格的なICT環境整備を開始した。

 

宮城県教育委員会が整備したのは、一斉学習で活用できるICT環境だ。同県教委は一斉学習、協働学習、個別学習と段階的にICT環境整備を進める方針を掲げており、まずは授業の中で教師が資料や映像を提示できる環境を整備した。具体的には、無線LAN、大型提示装置(常設型・移動式)、教員用タブレットとしてiPad、それを管理するMacBook、多機能ハブなどである。古川黎明中学校・高等学校にも同様のICT環境が整備されたほか、同校は研究目的や学校予算で購入したiPadも所有しており、「グループで1台」も可能な環境にある。

黒板に大きく写して、授業の効率化と学習内容の理解につなげる!

古川黎明中学校・高等学校では、多くの教科でICTが活用されている。教師たちはiPadが配備されてからまだ3ヶ月というタイミングであったが、自然に授業の中で使っていたのが印象的だ。

 

美術の授業では、授業の作業内容や墨絵の技法を説明する際にICTが活用されていた。教師が実際に墨絵を描く動きを書画カメラで写し、それを前の黒板にプロジェクター経由で映写した。教師は手を動かしながら作業の手順を分かりやすく伝えるとともに、「墨が薄いときはこんな感じ」と言葉で説明しづらい部分も説明した。美術室は広めの教室であるが、後ろの席の生徒まではっきりイメージが伝わり、完成形を頭にインプットできる。

美術の授業風景。教師が描く墨絵を書画カメラで撮影し、前の黒板に大きく提示。

保健体育の授業では、「安全な交通社会作り」の単元で自動運転車が実際の道路を走る動画を視聴し、自動運転のメリットとデメリットを考えた。昨今は、教育的に活用できる動画も増えており、授業で手軽に見せられるのは生徒の理解を深めるうえで有効だ。宮城県教育委員会では、プロジェクターが常設されている教室には映写兼用黒板を導入し、教師が授業スタイルを変えることなく綺麗に映像を写せる環境を整備した。

保健体育の授業で動画を視聴。黒板は映写兼用黒板を採用し、映像が綺麗に写せる環境を整備。晴れの日や夏の時期を考慮して遮光カーテンも整備した。

英語の授業では、教科書の英文を黒板に写したり、フラッシュカードを活用した単語の学習などが行われていた。教師が板書を書く時間を削減することで、テンポの良い授業が行われ、生徒たちの活動時間が増えている。英語で問題を出し合ったり、教科書の単元に関する動画を視聴したりするなど、新たな活動が行われていた。

 

また英語教師のひとりは、私物端末のMacBookとiPadで授業を行っていた。宮城県教育委員会は、一定の条件を満たした教師に対してBYODを許可しており、授業でも使用することが可能だ。校務系と学習系のネットワークは完全に分離されており、教師の私物端末は学習系にしか接続しないため、安心して使うことができるという。

私物端末のMacBookとiPadを使って行われた英語の授業風景。宮城県教育委員会は一定の条件を満たした教師に対してBYODを許可している。

化学の授業では、実験手順を動画で撮影し、実験結果を写真で共有するICT活用が行われた。端末の台数が十分でないため、教師が順番にグループごとの実験結果を撮影する形であったが、イメージで共有することで学習内容の定着につながる。写真共有には、宮城県で生まれた電子黒板アプリ「miyagiTouch」(開発:宮城教育大学安藤研究室と岩沼市立岩沼小学校)が使用された。

教師がグループごとの実験結果を撮影して、全体に共有。共有には電子黒板アプリ「miyagiTouch」が使用された。

グループに1台の協働学習で、生徒同士の意見共有を活発に

古川黎明中学校・高等学校では、グループに1台のiPadを用いて協働学習にも活用範囲を広げている。協働学習には、同校が導入したクラウドベースの授業支援ツール「schoolTakt(スクールタクト)」が使われ、グループの意見共有が行われた。

 

国語の授業では「なめこと山の熊」の単元で、グループごとに作成した問題を解き合った。生徒たちは前時に問題作成まで進めており、本時では他のグループが作成した問題を仲間と協力しながら解いた。解答をschoolTaktに書き込みながら、リアルタイムで意見共有し、他のグループと考えを比較した。

国語の授業。クラウドベースの授業支援ツール「schoolTakt(スクールタクト)」を活用して、グループごとに問題を作成し解き合った。

また生物の授業では、紙のワークシートに書いた解答を生徒が写真に撮影し、schoolTakt上で意見を共有した。ちなみに、ICTがない時はこのような活動は、ホワイトボードを用いて実践する教師が多いという。グループごとに小さなホワイトボードに意見を書き込み、それを黒板に張って意見を共有するという具合だが、文字が見づらい、黒板のスペースが制限されるという課題もある。現在は、意見回収の手間もなく、リアルタイムでスムーズに授業を展開。生徒たちの多様な意見も拾いやすくなったという。

ワークシートの答えを写真に撮影し、授業支援ツール「schoolTakt」にアップして意見を共有。

教師に頼らず、生徒同士で解決できる場面が増えた

古川黎明中学校・高等学校におけるICTの取り組みについて、同校の奥山敏基教諭に話を聞いた。奥山教諭は宮城県教育委員会が任命したICT活用の推進リーダーである「MIYAGI Styleスタイリスト」のひとりだ。

宮城県古川黎明中学校・高等学校 奥山敏基教諭

まずICT全般について奥山教諭は、「教師の意識は高く、iPadを使ってみたいと話す教師は多い」と述べた。学校内では教師らにICTの利用を強制しているわけではないが、実際にiPadやプロジェクターが導入されたことで、使ってみたいと思う教師は増えているという。宮城県教育委員会が整備したICT環境は、教師が授業スタイルを変えずにICTを活用することが可能であり、ICTを使うイメージも持ちやすいのだろう。

 

奥山教諭は「写真や動画を授業中に見せられるようになっただけでも大きな進歩です。今の生徒たちは視覚優位であり、言葉で説明するよりもイメージを見せる方が理解しやすい」と語った。またICTを活用した授業は、生徒の待ち時間を減らすなどテンポの良い展開が可能であるため、生徒の活用時間も長くなったという。「今まで1回しかできなかったことが、2〜3回できるようになってきました。定着に向けた活動ができると考えています」と奥山教諭はICTのメリットを語った。

 

一方で、生徒たちは活動的になってきたと奥山教諭は手応えを感じている。同教諭は「ICTを活用するにつれて、生徒同士のコミュニケーションが増え、今まで教師に頼っていたことも、生徒同士で解決できるようになったと思います」と語った。生徒へのアンケートでも、6~7割の生徒がICT活用を好意的に受け止めており、評価は高い。奥山教諭は、「ICTを使わない授業でもグループで相談したり、話し合ったりする活動が増えました。新学習指導要領の影響もあると思いますが、全体として授業改善が進んでいると思います」と語ってくれた。

今後の課題について奥山教諭は、「教師たちがもっとICTを活用したいと思えるように研修を実施し、教師同士がICT活用を話し合う職員室にしていきたい」と語った。

 

現時点では、一斉学習におけるICT活用に重点を置いて進めているが、最終目標は教師が使えるようになることではない。宮城県がめざしているのも、教師に加え、児童生徒一人1台による学校環境である。宮城県は教科指導におけるICT活用を教師から児童生徒に段階的・発展的に展開するMIYAGI Styleによって、児童生徒のための授業改善を実現していくのだ。

 

前編はこちら

 

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