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LTEタブレットとフルクラウド環境が支える、つながりのある探求学習(前編)

2018年03月14日 記事

これからの社会で活躍できる人材の育成には、学校のなかだけで学ぶのではなく、社会とつながり、多様な考えに触れることが重要だ。それを可能にするICTツールはすでに社会浸透しており、子どもたちにとっても身近な存在になった。これからの学校はこうした環境を活かし、どのような学びができるのかを考えていかなければならない。グローバル人材育成を掲げる大阪教育大学附属池田中学校では、ICTを活用した教育活動をさらに深めるためにLTEタブレットとフルクラウド環境を導入し、2017年から2年間の受託研究に取り組んでいる。中間地点の1年を終えたその模様をレポートしよう。

シームレスな学習環境をめざして

大阪教育大学附属池田中学校(大阪府池田市 以下、附属池田中学校)の母体である大阪教育大学は、グローバル人材の育成をめざして、中等教育における英語教育向上に力を入れている。国際バカロレアのMYP候補校でもある附属池田中学校はその方針のもと、国際色豊かな校風を活かし、かねてよりアクティブ・ラーニングや探求学習などを取り入れた英語教育を実践してきた。

 

そんな附属池田中学校は2017年より、レノボのYOGA BOOKを用いた「LTEタブレットとフルクラウド環境下における効果的なICT活用方法」の実証研究を受託した。学習者一人ひとりの学習履歴や成果物をeポートフォリオ(OneDriveを使用)に蓄積しながら、いつでもどこでもアクセスできるシームレスな学びに挑戦していくことがねらいである。受託の背景を大阪教育大学の吉田晴世教授はこう話す。

 

「今の時代、もうICTを学習で活用することは当たり前だと認識しています。だからこそ、その次の教育を見据える研究機関としては、いつでもどこでもICTを使える環境でなにができるのかに挑戦したいと考えました。附属池田中学校は以前より、アクティブ・ラーニングや探求学習の取り組みを熱心に進めていましたので、フルクラウド環境がより活かせると思い、実証研究をお願いしました」

 

新学習指導要領においても、"なにを知っているか"よりも"どのように学ぶか"が重要視されている。そのため、附属池田中学校ではタブレットやフルクラウド環境を活かして「学びの選択肢を広げていこう」としている。

 

「50分の授業の中でタブレットをずっと使うような授業をするのではなく、課題解決型学習や反転授業といった新しい学習スタイルに挑戦していければと考えています」(吉田教授)

大阪教育大学 副学長 附属図書館長 教育学部 英語教育講座 教授の吉田晴世氏

データのやりとりも、クラウド環境の方が安心

今回、附属池田中学校が受託した実証研究は2017年4月から2019年3月までの2年間で実施されている。レノボ・ジャパンのLTE対応2 in 1タブレット「YOGA BOOK for Windows」を80台導入し、

フルクラウド環境とLTEモデルを活用した家庭学習

オンラインストレージ「OneDrive」を使ったeポートフォリオの活用やOffice365を活用したコミュニケーション

クラウド型の授業支援システム「SchoolTakt」の活用

といった内容に取り組んでいる。

対象となった中学2年生には、全員にOffice365のアカウントが配付された。eポートフォリオなどのクラウドを使うときは、各自でログインしてアクセスするという。

一方で、学校教育の現場では、データ流出や個人情報の管理などクラウドの利用に対して警戒心もある。これについて吉田教授は「今回はすでに実績も多いマイクロソフトの『OneDrive』を活用するとのことで心配はありませんでした。これから多くの学校でICT活用が進みますが、そのときにUSBでデータのやりとりをするよりも、クラウドを活用するほうがよほど安全に行えると考えています。ログインでクラウドにアクセスできるのも間違いが少なくて良いと思いましたね」と語る。

 

YOGA BOOKについてはどうか? 実際に実証研究に取り組んだ附属池田中学校の石川剛教諭はこう話す。

 

「軽くて持ち運びしやすく、生徒たちも通学の負担にならないことがメリットです。ほかにもバッテリーの持ちが良いこと、手書き入力とキーボード入力の両方が使用できるため、多様な用途で使いやすい」

 

大阪教育大学附属池田中学校 MYPコーディネーター 外国語科教諭 石川剛氏

ちなみに、附属池田中学校における実証研究前のICT環境は、学校共有のアップルのiPad が60台、マイクロソフトのSurfaceが50台整備されており、主に授業で調べ学習を行うなどの利用に留まっていたという。今回の実証実験では、LTE対応のYOGA BOOKであることを活かし、学校のなかだけにとどまらず、反転授業や持ち帰り学習にも取り組む。

附属池田中学校の実証研究で使用されたレノボ製のLTE対応タブレット「YOGA BOOK for Windows」。キーボートを取り外ししなくても、折りたたんでタブレットとして使えるのが特徴。

家でもグループ学習の続きができる、主体性を育てるきっかけに

今回の実証研究では、LTEタブレットを活用してどのような家庭学習を行ったのだろうか。

 

メインで取り組まれたのは英語の反転授業だ。クラウド型のコラボレーションツール「SharePoint」で音声教材や動画教材を共有し、生徒はそれを自宅で何度も聞いてリスニングの予習を行う。しかも、扱われた音声や動画は、英語のニュースやオバマ大統領のスピーチなど、実際に社会で使われている英語の生教材を活用した。石川教諭は「生徒たちには、本物の英語に触れてほしいのですが、このような英語は生徒にとっても難しく、授業中に1〜2回流すだけでは理解できません。そのため、自分のペースで何度も聞ける家庭でやってきてもらえれば良いと考えました」と語る。生教材に触れることで、英語だけでなく、英語が使われている世界や文化も感じてほしいというのだ。

 

また、グループによる探求学習においても家庭でタブレットを活用した。授業中では調べ切れなかったことを自宅で情報収集し、SharePoint上に設けられたグループのノートに共有しておく。誰がどの情報を追加したのか、編集履歴が残るため、グループ全員で進捗状況を管理できるのがメリットだ。

グループで取り組む探求学習で用いられたSharePointの画面。生徒たちは情報共有したり、教師から与えられた教材などを閲覧する。

ほかにも、PowerPointを使ったプレゼンテーションのスライドづくりや、Wordを活用したチラシづくりにも家庭学習で取り組んだ。生徒たちは、石川教諭から与えられた「チラシのつくり方」のファイルを手持ちのタブレットで閲覧し、それを見ながら自宅でチラシを作成したという。石川教諭は「たっぷり時間のかかることは自宅でやり、学校では授業でしかできないことに取り組んでいます」と語る。友達の発表を聞いたり、英語の話す機会を増やしたりするなど、これまでできなかったことができているようだ。

 

一方、タブレットを持ち帰る家庭の反応はどうか。石川教諭は「意外にも、保護者の反応がいい」と話す。先進的な取り組みに共感を示す親や、生徒たちがどのような学習をしているのか興味を持つ保護者も増えた。家庭でも新たなコミュニケーションが生まれているようだ。ちなみに、今回の実証研究ではOffice365のアカウントが全生徒に配付されているため、自宅のPCからもアクセスできるが、PCを持っていない生徒に配慮してLTEタブレットを活用したという。

 

吉田教授は「タブレットを開けば、いつでもどこでも教材があり、学ぶことができる。家庭での学習時間を伸ばしていけるのではないかと考えている」と期待を寄せる。

後編へ続く

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