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アクティブ・ラーニングで求められるICT活用と指導力とは?〜「教員向け研修サービス」レポート(前編)〜

2017年12月08日 記事

アクティブ・ラーニングの研究や実践に取り組む教師は増えている。しかし、その一方でアクティブ・ラーニングとICTをどのように結びつければいいか、その授業デザインに悩む教師も多い。ダイワボウ情報システムの「教員向け研修サービス」は、こうした教師の声に応えるべく、明日から使えるノウハウを提供している。

2030年の予測困難な時代を生き抜く子どもたちに必要な資質・能力を伸ばす研修

ダイワボウ情報システムが提供している「教員向け研修サービス」は、タブレット活用に取り組んでいる教育委員会や教育機関に対して広く実施されている。タブレットを授業で使うことになれば、操作方法などの基本的な知識が必要になるのはもちろん、なにより重要になってくるのは、教科や授業のねらいに対してICTを効果的に活用できるかどうかだ。そのためダイワボウ情報システムの同研修では、ICTをどのように授業に取り入れるか、授業デザインを学べる研修内容に力を入れている。

 

その中の1つ、8月の夏休み中に実施された「アクティブ・ラーニングを実現する授業デザイン研修  〜タブレットを活用した協働学習指導方法研修〜」という研修の様子を紹介しよう。

 

同研修は、思考力や表現力などの育成を目的としたアクティブ・ラーニングにおいて、その指導ポイントやタブレット活用法を学ぶもの。「明日からの授業実践に活かすヒントを得る」ことを重要視しながら、授業デザインの向上を目指している。当日は、Intel®マスターティーチャーで札幌市立屯田北小学校教諭の朝倉一民氏を特別講師に招き、全4時間のプログラムで行われた。

 

〜4時間の研修の流れ〜(4つのアクティビティで構成されている)

1. 研修概要:新しい時代に必要となる資質・能力と資質・能力を育成する授業デザインへの理解

2. ワークショップ:授業シナリオ分析①「効果的な学習ポイント」

3. ワークショップ:授業シナリオ分析②「効果的な協働学習を実現するためのICT活用ポイント」

4. ワーク:学習活動検討「ICTを活用した協働学習の学習活動検討」

 

最初のアクティビティに登壇したのは、インテル株式会社 教育事業推進担当部長 竹元賢治氏。同氏はアクティブ・ラーニングの必要性とこれからの社会で求められる資質や能力について述べた。インテルは世界70カ国で21世紀型スキルを育む授業デザイン研修『Intel® Teach Program』を実施しているが、ダイワボウ情報システムの「教員向け研修サービス」プログラムも、インテルの研修の教材が使用されている。

 

「今の子どもたちが社会人になる2030年の世の中を、予測してほしい」

 

この投げ方から始まった竹元氏のプレゼンテーション。人間の寿命は100年まで延び、グローバル社会の多様化はますます進む。テクノロジーもさらに進化して、IoT(モノのインターネット)、人工知能、ビッグデータ、自動運転、ドローン、ロボットなどが、当たり前に使われる時代が来る。仕事では、65%の子どもたちが今は存在しない職業に就く時代だと言われており、コミュニケーションもテキストベースだけでなく、動画やVRの活用が広がるだろう。そうした変化が待ち構えている時代の最中において、求められる授業とは何か。

 

「グローバルで予測困難な時代、コンピューティング・テクノロジーとの共存社会を生きる子どもたちにとって必要な資質・能力を育成する授業であることが重要だ」

※インテル株式会社 教育事業推進担当部長 竹元賢治氏。新学習指導要領の方向性も、こうした2030年のグローバル化、多様化された社会を生きる子どもたちの姿が予測されている。竹元氏は講演の中で21世紀型スキルの中でも、国や地域、商慣習や考え方、価値観などバックグラウンドの異なる者同士におけるコミュニケーション能力やコラボレーションが重要だと語った。

ワークショップによる実践と、具体的な活用事例の紹介で授業のイメージを具体化

2つめのアクティビティは、受講者が少人数グループに分かれて行うワークショップ、授業シナリオ分析①「効果的な学習ポイント」に取り組んだ。ここでは2つの異なる授業のシナリオを読み、それぞれの授業で「どのようなスキルが育成されているか」「スキルを育成する授業の特徴はなにか」を考える。各グループでは、受講者たちがディスカッションをしながら1つの答えを導き出す。

 

その後はグループでまとめた内容を全体共有。受講者からは「授業2のほうが、子どもの中で新たな課題が生まれている」「自己評価を設けている」「子どもが主体的になれる部分が多い」など授業の特徴を出し合う一方で、「前提としてICT活用に慣れている必要がある」といった指摘も飛び出した。

 

続いて、朝倉氏が登壇し、アクティブ・ラーニングを実現する授業デザインのポイントとして「学習目標の設定」「問題解決の構造化」「授業の設計」「評価計画」を挙げ、各ポイントを詳しく説明した(下記資料参照)。学習指導要領と21世紀型スキルの照らし合わせ、すぐに答が出ない問題の設定、実社会につながる活動、自己評価のポイントなど、さまざまなノウハウを述べるとともに、自身の実践も紹介した。

※札幌市立屯田北小学校教諭 朝倉一民氏。朝倉氏が解説したアクティブ・ラーニングを実現する授業デザイン。授業の特徴となる4つのポイントを挙げている。

 

3つめのアクティビティでは、「効果的な協働学習を実現するためのICT活用ポイント」をテーマに、先程と同様の授業シナリオの分析ワークショップに取り組んだ。今度は各グループのディスカッションの際にタブレットを活用し、リアルタイムで意見を共有できる授業支援システムを使いながらICT活用も考えていく。受講者の中には勤務校にタブレットが整備されていても、台数が足りないために使用できないケースもあるため、1人1台の環境で模擬授業が体験できるのは貴重だ。

 

朝倉氏は、こうした活動の後に、アクティブ・ラーニングにおけるICT活用の勘所を自身の授業実践の写真を見せながら説明した。またそれに加えて、「たとえタブレットを用意したとしても、いきなり『さあ、考えてごらん』といったアクティブ・ラーニングは上手くいかない」と指摘した。というのも、ホワイトボードの使い方ひとつとっても最初は上手くいかないのが当たり前で、ベン図やピラミッドチャートなどを用いた思考方法の訓練も必要だというのだ。一方で、「子どもたちを鍛えていけば話し合いも上手くできるようになってくる。そうした過程を通して、問題を自分ごととして捉えられる主体性も芽生えてくる」と朝倉氏は実践から得られた知見を述べた。ICTはあくまでもツールであることを強調しつつ、教師がファシリテーションすることの重要なのだ。

研修に参加した受講者の感想は?

最終のアクティビティは、これまで学んだ内容を活かし、「ICTを活用した協働学習の学習活動検討」に取り組んだ。受講者たちは、グループで意見を出し合いながら、ICT を活用した協働学習の内容を考えて、ひとつの授業プランを作成する。その後、全体で共有しながら意見交換を行った。

 

今回の研修に参加した受講者からは「社会や時代の動向など、普段聞けない話を聞くことができて勉強になった」「例示がたくさんあって参考になった」「ワークショップなど実践的な内容が多くて役に立った」「他の地域の教員と交流ができて刺激を受けた」などの感想が聞かれた。なかでも、講話と演習のくり返しで構成された研修スタイルは、内容の理解を深めるのに有効であったとの意見が多く印象的だった。一方的な講義スタイルで行う研修ではなく、受講者自身が考えたり、意見交流できる時間が確保されていることがメリットだといえる。

 

研修の最後に朝倉氏は、以下のメッセージを受講者に贈った。

 

「自分の知っている授業にICTを当てはめて考えるのではなく、子どもたちに必要な資質・能力を伸ばす授業デザインを意識しながらICTを有効活用してほしい」

※手書き入力やタイピングの入力など、さまざまな方法で意見を書き込む参加者たち。リアルタイムの意見共有をしながら「視覚的な情報が得やすい」「児童が考えていることの根拠を伝えやすい」など、ICT活用のメリット・デメリットについても意見交換を行った。右は朝倉氏が説明した協働学習におけるICT活用のメリット。

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