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課題に主体的に取り組む力。これからを生きるためのICT活用_大熊町教育委員会【後編】

2016年06月27日 記事

 平成25年DIS Innovation Projectに参画しWindowsタブレットPC60台を導入。2年間の実証研究後、大熊町教育委員会は全小中学校に1人1台のタブレットPCの導入を決めた。東日本大震災による東京電力福島第一原子力発電所事故により、大熊町は全町避難を余儀なくされ、地域や教員たちによる子どもの心のケアが重要な課題となっている。その中で、タブレットPCがどのような影響をもたらしたのか。後編では本導入にあたりタブレットPC活用の方針、ICT機器への期待について、前編に続き大熊町教育委員会 教育長 武内敏英氏に話を聞いた。

大熊町教育委員会 教育長 武内敏英氏
大熊町教育委員会 教育長 武内敏英氏

社会的な背景から見る思考力の必要性

1人1台タブレットの導入を決めた大熊町教育委員会。教育長 武内敏英氏に本導入にあたりどのような方針を掲げたのか話を伺った。すると武内氏は20年後の働き方へと考えをめぐらせた。

大熊町教育委員会 教育長 武内敏英氏
大熊町教育委員会 教育長 武内敏英氏

 

「最近の研究だと20年後、今の職業の半分はコンピューターでできるようになってしまうといいます。つまり、プログラミングでできる仕事、単純な仕事というのはロボットに任せたほうが早いということ。これから人間が人間として働いていくためには、コンピューターにできないことをしていく必要がある。そうすると、やっぱり考え抜いて新しいものをつくるだとか、コミュニケーション力を活かしていくことになると思います。思考力がなければ豊かなコミュニケーションはできませんよね。思考力を核にしてコンピューター、ロボットができない、持てない能力を人間はさらに伸ばしていかなければいけない」

“核となるのは思考力”。実証研究で確かに思考力を鍛えることができると判断したからこそ、踏み出した1人1台のタブレット導入だ。方針も思考力を核とした判断力・表現力の育成だと武内氏は話す。実際には、どのような活用で思考力を伸ばしているのだろうか。

 

「実証研究の頃からアプリとしては『コラボノート® for School』を活用しています。ノートをネット上で共有することができるシンプルなアプリです。子ども一人ひとりが何を考えているのかすぐわかる。教師が児童の考えを知ることで発言や発表を促すことができますよね。また、子どもたちもお互いの考えを知れることで、より深く自分の考えを見つめることができます。効率的な面からも時間がかからないということは、それだけ子どもたちに考える時間を与えられるということです」

 

タブレットを使うことで、思考の共有は従来よりも早く簡単に行うことができる。その”簡単”を実現させるために、校舎のアクセスポイントを増やし教室だけでなく、校舎全体でタブレットPCをインターネットに繋げられるようにしていくという。

 

「教員や児童・生徒が、今使いたいというときに使える環境を整えていくのが我々、教育委員会の務めだと思います」

情報リテラシー、デジタルを使いこなす大人へ

ネット環境も充実させることで、教室だけでなく校舎全体で活用できるように整備を進めている大熊町教育委員会。1人1台のタブレットPC、充実したネット環境。そこで不安になってくるのが情報リテラシーの問題だ。武内氏は以下のように語った。

 

「これは意図的に指導する必要もある。けれど、授業を通して絶えず指導していく問題です。そういった積み重ねで自律性が生まれてくると思います。自分を律する。」

学びの中で社会で生きる術を身につけていく。それは、今までの教育でも行ってきたことだ。情報リテラシーが特別なわけではない。あくまで、主体性を持って児童・生徒自身が考えて行動する力が重要なのである。

 

また、校務支援ソフトウェアを導入したという。教育機関向けのグループウェアだ。これによって、授業だけではなく、教員同士の情報共有もスムーズに行うことが可能になる。

 

 

「これからの教員はICT機器に慣れていかなければならないが、少しでも先生方の授業以外の負担を軽減させたい」

 

ICT機器が導入されて試行錯誤を繰り返してきた現場の教員たち。積極的な姿勢が子どもたちにタブレットが活きる授業を行うことができる。しかし、タブレットが導入されても従来の校務が減るわけではない。子どもたちの学習を支える教員たちを教育委員会で支えていきたいとした。最後に武内氏は、これからを生き抜く子どもたちがどう育ってほしいか、熱く語った。

 

「これから世の中は急激に変化していきますよね。絶えず、その変化に負けないで課題に主体的に立ち向かう力が必要です。立ち向かうときには、周りの人と力を合わせて協働できる人間性を持ってほしい。そして、自律性を身につけた大人になってほしい。もうデジタルを使い込んでいくというのは珍しいことではありません。デジタルに振り回される人にはなってほしくない。デジタル機器にも主体性を持って対応できる大人に育っていってほしいです」

 

実証研究を行うことで見えたタブレットの効果。本導入でより強く描けた”教育”の形。

子どもたちの未来を想うからこそ走る大熊町教育員会のこれからの施策にも期待したい。

 

前編はこちら

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