DISの教育ICT総合サイト

子どもたちの心に寄り添うICTの存在_大熊町教育委員会【前編】

2016年06月23日 記事

平成25年DIS Innovation Projectに参画しWindowsタブレット60台を導入。2年間の実証研究後、大熊町教育委員会は全小中学校に1人1台のタブレットPCの導入を決めた。東日本大震災による福島第一原子力発電所事故。大熊町は全町避難を余儀なくされ、地域や教員たちによる子どもの心のケアが重要な課題となっている。その中で、タブレットがどのような影響をもたらしたのか。

実証研究から本導入の経緯について、大熊町教育委員会 教育長 武内敏英氏に話を聞いた。

福島県大熊町教育委員会 教育長 武内 敏英氏
福島県大熊町教育委員会 教育長 武内 敏英氏

心のケアから学習意欲の向上へ

「避難してきた子どもたちにも、主体性を持って勉強してほしいという想いがあった」

 実証研究開始にあたり期待したことはと聞くと武内氏は開口一番、上記のように話した。震災から少し時間がたったとはいえ、平成25年当時でも避難した児童の半数が会津若松市に再開した学校に在籍していたという。教育委員会は子どもたちの心のケアをしていこうと体制を整え、授業は1クラスに教員2名体制で行ったという。

福島県大熊町教育委員会            教育長 武内敏英氏
福島県大熊町教育委員会            教育長 武内敏英氏

「子どもたちは、大変な思いをしてきたので、心のケアは非常に大事だと考えています。子どもたちの心の中に不安や心配ごとがあれば勉強どころではないですよね。子どもたちの顔色を見ながら、いろいろな悩みを聞いたり、心の安定を図って授業をやるということを徹底しました」

教員が毎日児童たちの変化に気を配りながら悩みをすくいあげていく。そういった環境の中で、タブレットは児童の学習にいい効果をもたらした。

「教科書と黒板だけより、ICTを活用した授業のほうが子どもたちの食いつきがいい。こうした授業の展開は、子どもたちの希望でもあるのです」

タブレットの導入を考える学校は導入したことでどういった効果が得られるか。はっきりと「費用対効果」を求められるケースもあるだろう。しかし、まずは児童の興味関心を深めるというところに重点を置く。”学習が楽しい”と感じられることで理解が深まることは少なくない。わくわく感が主体性を生むのだ。また、デジタルが生活の中に入ってきたという背景を考えて学習の中にも必要だと考えたという。

 

「学習で何を勉強して、どんな方法をとって、どんな力をつけるか。それを考えたとき、これからの人間に必要な能力はやはり思考力・判断力・表現力だと思いました。今までの"覚えて再生する"だけの学習ではコンピューターには敵わない。そうすると特に核になるのは思考力ですよね。そういった能力を伸ばすためにはICTが有効だと考えました」

 

実証研究1年目、教員たちは機器に慣れるのが大変だったというが、それでも成果はあった。子どもたちが積極的に授業に参加するようになったという。

体育の授業でタブレットを活用。跳び箱を飛ぶフォームを撮影し、すぐに確認。児童たちで「こうやったらもっときれいに飛べるのではないか」と話し合う
体育の授業でタブレットを活用。跳び箱を飛ぶフォームを撮影し、すぐに確認。児童たちで「こうやったらもっときれいに飛べるのではないか」と話し合う

手を取り合う、2人体制の仕組み

タブレットPCが導入されたことにより、まず、教員は機器の操作を覚えなければならない。さらに、どうやって活用していくかという授業デザインも考えなければいけない。手探りの状態で、大熊町では教員2人体制が活きていく。

 

「若い先生もベテランの先生も全員がタブレットPCを使わないといけないとなるとかなり抵抗がありますよね。ですから、まずはできるところからやっていこうと考えました。若い先生とベテランの先生でペアをつくるようにしたのです。若い先生が機器の操作を担当し、授業の進め方はベテランの先生が担当するようにしました。自分はできないからと跳ね除けるのではなく、こういった形であれば関われるという仕組みが良かったと思います。ベテランの先生と若い先生は互いに話し合いながら授業をつくることができました」

 

2人の先生が自分の得意な分野を教えあう。そして、授業をどうつくっていくのか。ベテランはベテランのいいところを活かして、若い先生は柔軟な発想でこの場面で機器を使えばこうなるという提案をする。やらなければならないという義務ではなく、こうしたらタブレットPCが活きてくるのではないかと考える。子どもだけではなく、教員たちもまた新しいスキルが必要となってくるのだ。2年の実証研究を終え、見えてきた課題もこういったタブレットPCの最適な活用方法をもっと考えることだと武内氏は話す。

 

「タブレットPCはいろいろな機能を持っていますよね。その多様な機能を、どの授業でどの場面でどんな風に使えば有効かということをもっと考えなければいけないなと感じました。タブレットPCをさらに有効活用するための勉強が必要だと考えています」

 

そして、平成27年度の予算で全小中学校に1人1台のタブレットPC導入を決めた。

 

「課題はある。けれど、2年間実証研究をやって、子どもたちが主体的に学習するためにこのツールは間違いないと思いました。思考力を中心として表現力もつくことがわかってきていたので、1人1台の導入に踏み切りました」

 

後編では、本導入について詳しく話を聞いていく。

ページトップに戻る