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“いつでも・だれでも・どこでも”使えるICT整備を目指す。東京都墨田区ICT導入事例【前編】

2016年04月21日 記事

 2014年度から「学校ICT化推進事業」を本格始動した東京都墨田区。“いつでも・だれでも・どこでも”をICT活用のコンセプトに掲げる墨田区では、教員の授業改善を目指してICTを生かす。一方で、墨田区は同事業が本格始動する5年も前から、管理職向けのICT研修会を定期的に実施し、現場でICTを推進できる人材育成にも注力してきた。前編では、そんな墨田区の取り組みについてICT整備を中心にレポートする。

話を聞いたのは、墨田区教育委員会 庶務課教育情報担当の渡部昭氏だ。

タブレットを持ち出して使えるICT環境

 東京都墨田区では、教員の授業改善を目指して、2014年度より「学校ICT化推進事業」を本格始動した。

児童生徒がより能動的に学べる学習環境の構築を目指して、ICTを積極的に生かしていく。

墨田区教育委員会 庶務課教育情報担当  渡部 昭 氏
墨田区教育委員会 庶務課教育情報担当  渡部 昭 氏

 

計画を実行するにあたり墨田区では“いつでも・だれでも・どこでも”をICT活用のコンセプトとして掲げた。墨田区教育委員会 庶務課教育情報担当の渡部昭氏は、「教室に行ってスイッチをつければ、すぐにICT機器を使えるような環境づくりを目指している」と語っている。特別なものでない、当たり前のように使えるICT環境を築くことで、教育現場でのICT活用を広げていきたい考えだ。

 墨田区は計画を本格実施した前年の2013年度から、ICT環境の整備をスタートした。当時、コンピュータ教室の機器の入れ替えに伴い、区内の小学校3校、中学校4校においてWindowsタブレットを各学校に40台ずつ配備。その後、コンピュータ教室の机を備え付けのものから、移動しやすい一人用の机に変更し、それぞれの机に、タブレット、マウス、キーボードを揃え、学習に合わせて机の配置を変更できるようにした。

今までのコンピュータ室は、幅広い学習シーンでICTが使えるような多目的な教室に変わった。

 また、墨田区では2014年度に区内の全小中学校において無線LANも完備。コンピュータ室に配備したタブレットを持ち出して、普通教室や特別教室でも活用できる。今後は、このような多目的教室とICT機器の整備を区内の全小中学校に進めていくという。

ICT整備の2つの特徴「ICTの常設化」と「iOSとWindowsの共存」

 墨田区が2014年度から実施した学校ICT化推進事業では、区内の小学校3校、中学校2校の計5校をモデル校に設けて、実証研究もスタートした。モデル校では、簡単に使えるICT機器を各教室に常設化することで、ICTの活用頻度を高め、授業改善につながる取り組みを実施する。

 

モデル校の普通教室や特別教室に常設化されたICT機器は、左右にスライド可能な常設型の電子黒板機能付きプロジェクター、実物投影機(小学校のみ)、マグネットスクリーンの3つだ。渡部氏は、「ICTの整備として、最初は教室の黒板に大きく投影できる環境を整えることが重要だと考えた」と語る。教員が板書計画を変えず、教科によってどこから書き始めても支障がないように、黒板の上にレールを設置し、プロジェクターはレール上を左右スライド可能にした。

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 また、墨田区ではモデル校の全教員に対してiPad Airを1人1台分整備した。2014年の初年度は、モデル校5校の全教員に対して、137台のiPad Airを配備している。教員用のタブレットにiPad Airを選択した理由について渡部氏は、「iPad Airであれば、ICTをそれほど意識せずに楽しんで使えるから」と語る。iPadは操作性が優れており、ITが不得手な教員にも使いやすい。教育用途として使えるアプリも多く、教員自身がタブレットの活用を楽しむことで、ICTのメリットを授業に生かしやすいと考えた。遊び心を持ってタブレットの活用範囲を広げることができるように配慮している。

 

一方で教員用のコンピュータといえば、Windowsが主流であろう。墨田区でも、校務用PCは、引き続きWindowsマシンを採用している。渡部氏は「今までWindowsマシンで蓄積した教材や資産を生かせるように校務用PCはWindowsを選択した。iOSとWindowsのどちらかにこだわるのではなく、両方が共存することで誰もが使いやすいICT環境を目指す」と渡部氏は語る。

 

 墨田区は、今後このようなICTの常設化と教員へのiPad Airの配備を他の小中学校にも拡大する。2015年度には区内の残りの中学校8校と小学校3校の教員に対してiPad Airを407台配備し、2016年度は区内の全小学校の教員に完備することを目指す。

モデル校におけるタブレット活用事例とICT常設化の効果

 墨田区のモデル校では、実際どのようにICTが活用されているのか。

 

小学校においては、実物投影機や教員のiPad Airを利用して、教室前の黒板に教材や児童のノートを投影する活用が多い。見本を見せたり、家庭科などで先生の手元の作業を大きく映し出したりなど、児童生徒の理解を促すことを目的とした拡大表示の利用が多い。渡部氏は、「このようなICT活用であれば、教員自身の授業スタイルを大きく変えることなく簡単にICTを取り入れやすい」とメリットを語る。

 

そのほかの活用として、前時の振り返り、動画を用いた指導、リアルタイムの意見共有などさまざまな事例をあげる。教員によっては、プレゼンテーション作成アプリ「Keynote」で簡単なフラッシュ教材を作り、基礎・基本の定着に取り組む者もいる。いずれも、今までの授業スタイルの中で、ICTをワンポイントとして活用しているのが特徴だろう。渡部氏は「今あるICT機器をどのように授業で生かすことができるのか、それぞれで試行錯誤して教員同士で情報共有をしてほしい」と語った。

常設して1カ月後の活用の変化
常設して1カ月後の活用の変化

 電子黒板をはじめとしたICT機器を各教室に常設化したことの効果は少しずつ表れている。

モデル校全ての学校において、ICT機器を常設化してから活用頻度が大幅に向上しているというのだ。2014年9月、各教室にICT機器を常設化する前では、電子黒板の利用率は「ほぼ毎日・週1回の利用」は約3割だったのに対し、同年10月のICT機器常設化後においては、その値が90%にまで伸びた。同時にICTを使っていない教員数も減ったという。

渡部氏は「ICTを常設化し、日常的に使える環境が出来上がったからこそ、教員たちは使うようになったと考える」と語る。

 

 各教室にICT機器を常設化し、学校のどこへいってもタブレットが使える環境を目指す墨田区。

教員に対しても、iPadを一人1台導入し遊び感覚を重要視しながら取り組みを進めることも印象的だ。

墨田区の取り組みは、多くの教員を巻き込んでいくだろうか。今後の広がりに期待したい。

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