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チョークと黒板を大切する先生のためのアプリ「Kocri(コクリ)」【後編】

2016年04月18日 記事

 授業の中で黒板を大切にしている教師は多い。学校にどれだけICTが導入されても、子どもを前に自由自在に書き込める黒板は、今も授業を支える重要なツールだ。そんなチョークと黒板のスタイルを変えずに、授業の中でICTを活用できるのがハイブリット黒板アプリ「Kocri(コクリ)」だ。後編でも、授業での活用事例や開発経緯について株式会社サカワ 常務取締役 坂和寿忠氏に話を聞いた。

株式会社サカワ 常務取締役 坂和寿忠氏
株式会社サカワ 常務取締役 坂和寿忠氏

Kocriを使った先生の評価

 iPadやiPhoneから地図、図形、写真、ガイド線などを黒板に映写できるハイブリッド黒板アプリ「Kocri(コクリ)」。2015年7月に正式リリースしてから、3カ月で約6000件のダウンロード数を突破。「2015年度グッドデザイン賞」「第12回日本e-Learning 大賞」を受賞するなど業界での評価も高い。一方、実際にKocriを授業で活用する教師たちの反応はどうか。

「授業自体がすごく楽しくなったと生徒から評価を得た」「今までパソコンで準備していた作業時間が減った」「授業で板書を書く負担が減った」「生徒が板書待ちをする時間が減った」など好意的な意見が多い。株式会社サカワの常務取締役 坂和寿忠氏も「教育委員会や多くの教育機関に出向いてKocriを紹介しているが、ほぼ100%の割合で“良い”と言ってもらえる。否定的なことを言われたことは一度もなく、Kocriだったら使うと言ってもらえることがほとんどだ」と話す。

 教育関係者にKocriが高い支持を得ている要因としては、今までの授業を変えなくてもICTを活用できることが大きい。また、板書自体の効率化や表現豊かに見せられることも魅力だろう。電子黒板のようなUIが複雑な機器ではなく、iPadやiPhoneといった馴染みのある端末で操作できることもICTへのハードルを下げている。

導入しても使われない電子黒板、その問題意識から生まれたKocri

 Kocriを手掛けた株式会社サカワは、1919年創業の老舗黒板メーカー。2010年頃から電子黒板を製造・販売しているが、そもそも、なぜKocriの開発に至ったのか。

 

これについて坂和氏は、「電子黒板を導入しても先生たちに使われていない実態を知り、問題意識を持った」と語る。下記の資料(=写真)によると、2014年、全国の小中学校における電子黒板の導入率は、全46万教室のわずか19%。そのうち活用されている電子黒板は34.3%だ。つまり、導入された電子黒板の約65%は、使用されておらず埃をかぶった状態といえる。にもかかわらず、国は平成29年度まで推奨事業として小中学校の全教室に電子黒板の導入を予定している。単年度1,678億円の地方財政措置がとられ、平成26年度~29年度で総額6712億円が投入される見込みだ。

日本教育情報化振興会(JAPET)第9回「教育用コンピュータ等に関するアンケート調査」報告書より
日本教育情報化振興会(JAPET)第9回「教育用コンピュータ等に関するアンケート調査」報告書より

 坂和氏はこのような実情の背景にあるのは、電子黒板の使いにくさだと考えた。電子黒板は導入しても1台で完結せず、アナログの黒板も必要である。また教室間の移動も大変だ。「先生は電子黒板とアナログ黒板の間を行ったり来たりする。この動線が授業の中では合わないのではないかと思った」と坂和氏は語る。もちろん、電子黒板特有の多機能で複雑なUIも使用を遠ざけている一因であろう。

 

一方で坂和氏は、「電子黒板の利用がどのような状況にあっても、黒板自体の有効性がなくなるとは思えない」と語る。黒板が授業で占める重要性は今でも高く、電子黒板が導入されたからといって黒板の使用を辞める教師もいない。そうであれば今までの黒板を生かすソリューションを開発する方が、先生も使いやすい製品ができると思い手掛けたのがKocriだった。

開発は面白法人カヤック!スマホに踏み切るまでに時間がかかった

 Kocriの開発にあたっては、面白法人カヤックの協力を得た。当初は、スマートフォンから黒板にプロジェクションマッピングを映写できるプロトタイプを制作していたが、これがKocriの原型になった。

 

 

坂和氏はKocri の開発について、「スマートフォンに踏み切るのが一番大変だった」と明かす。Kocriは当初から、スマートフォンで操作できることにこだわっていたが、授業中に教師がスマートフォンを使って操作をするKocriのスタイルには、開発サイドからも否定的な意見が挙がったという。

しかし、坂和氏は「新しい文化を作るつもりで開発した。スマートフォンやタブレットのような生活に馴染みのある端末を使うからこそ、教育現場で使ってもらえるサービスになると信じている」と語る。PCでしか操作できないサービスや、教室内を自由に動かせないICT機器は限界に来ている。誰もが使いやすいICT環境であるためには何が必要か。

そこにこだわって開発をしてきたのが、今のKocriの姿だ。

 Kocriの今後の展開として坂和氏は「Windows版にも挑戦していきたい」と話している。また、Kocriを活用する教師同士の意識や知識の共有にも積極的に取り組む考えだ。

 

使われない電子黒板への問題意識から生まれた新しいハイブリッド黒板アプリKocri。

教師が授業で大切にしてきた黒板にデジタル技術を吹き込むことで、新たな付加価値をつけたともいえる。

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