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千葉県松戸市立馬橋小学校 実証研究の経過取材【前編】

2016年03月30日 記事

1年目、最初の一歩は使い倒すこと。

 千葉県松戸市立馬橋小学校は長きに渡りICT機器を活用した学習指導について研究してきた。20141月からはiPad42台を導入し、ICT機器をより効果的に活用した学習指導について研究を始めている。

導入後の成果と課題など経過状況について、同校の石野 安秀校長、そして堤 由美子教諭、鎌田 歩教諭に詳しく聞いた。

松戸市立馬橋小学校 鎌田 歩教諭、石野 安秀校長、堤 由美子教諭
松戸市立馬橋小学校 鎌田 歩教諭、石野 安秀校長、堤 由美子教諭

コミュニケーションの活性化、ICT機器に求めるもの

 馬橋小学校がめざす児童の姿は「課題解決に向け、よく考え吟味しながら情報を活用し、学びを深め合える子ども」である。そのためにICT機器の特性を理解し活用する力を育成することが重要であると考えてきた。タブレットという言葉が出る以前から視聴覚教育という形でコンピュータや電子黒板、実物投影機などのICT機器を活用した授業を実施し、コミュニケーション力の高まりについて研究をしてきた。こういった背景の中、実証研究開始時にiPad 42台が導入された。導入にあたってどのような活用ルールを決めていたのだろうか。1年目に研究主任を担当した堤 由美子教諭は以下のように話した。

 

堤 由美子教諭
堤 由美子教諭

 「1年目はあえて特に細かい事は決めませんでした。まずは、とにかく使い倒してみる事が必要と考え、使いたい時に出来るだけたくさん使うという感じでした。ただ使いたいと思う先生は非常に多いので、管理の為に職員室に管理表を作って、いつの何時間目に誰が使いますということが分かるようにしていました」 (堤教諭)

 これからICT機器の導入を予定している学校の多くは不安を抱えていることだろう。長年研究を進めていた馬橋小学校でも不安があったようだ。実際にどのような不安を抱えていたのか聞いた。

「使い方がわからない、子どもたちに持たせた時に何かトラブルが起きるのではないか。そういった不安はありました。機器の扱いについて、子どもたちが分からなくなった時に教師側がそれに対応できるかという不安もありました。けれど、実際使ってみると杞憂でした。そういったことはほとんどなく、動き出せば早かった」 (堤教諭)

 iPadの使用にあたり、使わない時には机にしまうなどのお作法的なルールは決めたものの、子どもたちにも自由に使わせていた。

児童たちのほうが受け入れるのが早く、どんどん使っていき、教師に使い方を教える子もいたと堤教諭は当時の様子を話してくれた。

実際の活用と見えた課題

ルールを決めずに活用を始めた当初、どのような活用をされることが多かったのだろう。

石野 安秀校長
石野 安秀校長

 「写真、動画を撮るというのが主な活用方法でした。校外学習でとった写真を編集し、作文などを書いたりなどもしていました」 (堤教諭)

 “使い倒す”ために、まずは使える部分から使っていく。AppStoreにはさまざまな教育系アプリがリリースされているが、まずはiPadが持つ本来の機能を使ってみることでその利点を感じることができるだろう。石野 安秀校長は撮影機能について以下のように語った。

「写真や動画が見やすい大きさですぐに見せられることは大きい。デジカメだけだと何か媒体を通さないと見せられない。その瞬間にその場で振り返ることができると授業のスピード感が変わる。また、iPadは学習者と一緒に移動できる。iPadの機動性という利点だけでも授業は劇的に変わっていく」(石野校長)

馬橋小学校ではICT活用によるコミュニケーションの高まりを目指し、研究を進めている。実際に活用してみて、児童たちのコミュニケーション力はどのように変化があったのだろうか。

 「ペアトークやグループトークなど、全体共有の場面で、ひとつの画面を見て話し合ったりすることによってコミュニケーションは活発になりました。何もないより、目に見える、話している焦点が絞られるといろいろ意見も言いやすくなる。また、低学年はまだ言葉が豊富ではないですが、iPadを使うことで、話し手は画像を指しながら「これが~」や「あれが~」という指示語だけでも伝えることができるようになる。聞き手も相手が何を言おうとしているのか分かるので、そういう面でもコミュニケーションは活発になったと思います」 (堤教諭)

さらにiPad活用にあたり嬉しいことがあったと堤教諭は話す。

 「特別な支援が必要な子どもでも簡単に操作ができること。iPadで写真を撮影することはとても簡単なので、クラスのみんなが同じようにできる。そうすると、すごく嬉しそうに「できた!」と言うので、みんなと一緒にできる喜びを感じているのだろうと思います」 (堤教諭)

 

 今までの教育ツールとはまったく違うからこそ、新しい発見や喜びが学習の中で見つけられるのだろう。誰でも使うことができ、イメージの共有が簡単にできることによって意思疎通のレベルは格段に上がる。教員以上に児童たちが肌で感じているのかもしれない。また、シンプルに細かい準備や片付けが思った以上に楽だったと堤教諭は話した。使いたいときにぱっと使うことができるのもタブレットの大きな利点だ。しかしながら、使えば使うほど課題も出てくる。1年目で見えた課題とはどのようなものだったのだろうか。

 

 「運用する上での課題というと、42台と台数が限られているので、使いたいときに他のクラスが使っていたということがあります。上手く回せていなかった。」(堤教諭)

 

 1人1台を目指して国は導入を進めているが、まずは台数を絞り実験的にタブレットを導入する学校も多い。どんな活用をするかだけでなく、どんな運用をするかも重要になる。後編では、1年目の成果と課題を受けた2年目について詳しく話を聞いていく。

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