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School Innovation セミナー in 大阪レポート(前編)~これからの学校教育に必要なICTとは?~

2016年03月28日 記事

授業におけるICTの活用や、それに伴う環境整備。関心は高まっているものの、まだまだ実際の取り組みに至っていない自治体や教育機関は多い。今後、ICTの環境整備や活用を進めて行く中で、成功のポイントはなにか?2月2日に開催された「School Innovation セミナー in 大阪」(日本教育情報化振興会主催)のイベントの模様をレポートする。

 

これから先の学校教育はICTの活用が不可欠

セミナーの最初に登壇したのは、文部科学省 生涯学習政策局 情報教育課 課長の磯寿生氏。磯氏は、国が進める教育の情報化の政策について改めて概要に触れたのち、今後の教育政策のポイントを述べた。

平成29年度までに6,712億円の予算措置。コンピュータ整備は3.6人に1台を目指す

学校でICTを活用するには、現場の環境整備が欠かせない。文科省は現在、第2期教育振興基本計画を進めているが、その中で平成26〜29年度の4カ年にわたり総額6,712億円(単年度1,678億円)の地方財政措置が講じられている。平成27年度に児童生徒6.4人に1台であった教育用コンピュータを、29年度までに3.6人に1台を目指すなど、さまざまな整備目標が掲げられている。しかし、この予算措置は使途を特定されない地方交付税であるため、自治体によっては教育ICTの環境整備に使われるかは分からない。ゆえに、ICT環境整備は地方間格差が大きいと磯氏は指摘する。「ICTが普段使いできる環境整備を自治体は進めてほしい」と語った。

校務支援と授業支援システムを連携した「新 堺スタイル」とは?

堺市教育センター 主任指導主事      浦嘉太郎 氏
堺市教育センター 主任指導主事      浦嘉太郎 氏

続いて登壇したのは、平成25年度よりタブレットの本格導入を実施した堺市教育センター 主任指導主事 浦嘉太郎 氏。同市では授業改善を目的に、教員一人1台の指導用タブレットを2000台整備しました。堺市がICTの環境整備で重要視したことは、今までの授業スタイルを変えずにICTが活用できること。また、市内の全小学校の普通教室で一斉にタブレット運用を開始したことから、教員向けのICT研修会も積極的に開催した。

では、タブレット導入後 教員は本当に授業で活用しているのか。浦氏は教員の使用状況を集計したデータを公開した。浦氏は、「調査期間中に教員がタブレットを1回以上使用している割合は、年々増加している」と手応えを語る。

教員たちは何のためにタブレットを活用しているのか。堺市では自作教材、デジタル教材など5つのカテゴリーに分けて調査を実施。その結果、デジタル教科書やカメラ機能の利用が多いことが分かった。また、タブレットの効果についても、教員らから一定の手応えは得られたものの、「教材のデジタル化が負担軽減につながるという項目については、教員たちはそれほど効果を実感しておらず、今後の課題でもある」と浦氏は指摘した。

 

タブレット活用調査の結果
タブレット活用調査の結果

堺市の取り組みの中で、もっとも注目したいのは校務支援システムと授業支援システムの連携だ。同市では教師一人1台のタブレット環境を生かして、出欠情報、忘れ物チェック、発表回数、授業中の気づきなど、教師がタブレットに入力したデータを教育活動に活用している。

 

例えば、出欠情報の場合、出欠、早退、遅刻、健康観察など教室で教師がタブレットに入力したデータが校務支援システムにも反映される。校務支援システムと授業支援システムでは、児童生徒の学籍情報を一元化し、これまでの転記作業もなくした。
堺市立の全小学校では、2016年4月からこれまでの冊子型式の出席簿を廃止し、校務支援システムから印刷されたデータを公文書として扱う。このような校務システムと授業支援システムを合わせたものを、
「新・堺スタイル」 と位置づけ、堺市ではさらに校務の効率化を目指していく。

 

 

普通教室におけるICT活用と整備のポイント


和歌山大学 教授 豊田 充崇 氏は、普通教室におけるICT環境の整備について「タブレットの一人1台体制を一気に進めるよりも、段階的に整備をしていくことが重要だ」と語る。そのポイントとして、下記4点をあげる。
 

1、大型提示装置の普通教室への常設は必須(なによりも先決)
2、教員用→児童用へシフトするプロセスが必要
3、児童生徒による自主管理体制
4、学習ニーズの見極め

豊田氏は、まずは大型提示装置を普通教室へ常設し、教員が教材を提示するなどの活用を通して、ICTの効果を見極めることが大切だと説明した。児童生徒のICT活用は、その後でも遅くない。教員と生徒、同時にICT活用を進めてしまうと、現場では混乱を生じかねないだろう。一方で、豊田氏はICT環境整備は“常設”することが大切だと強調した。「常設状態になければ“毎日活用”は有り得ず、共有・整備だけでは“週1”程度がほぼ限界ラインではないか」と指摘している。

教員のICT活用から、児童生徒がICTを活用する局面に入ったときは、手の込んだ使い方でなくとも良いと豊田氏は語る。「実物投影機で自分の書いたものを見せる」「画面に大きく写して発表する」などの簡単な使い方でも、十分に子供の変容が見られるというのだ。むしろ、ICTで凝ったことをするよりも、日々の活用頻度を高めていく方が大切だと指摘。「毎日使う方が、学力効果が見られる傾向もあることから、ICTの整備としては手の込んだものよりもシンプルに使えることが大切だ」と語る。

また、児童生徒がタブレット端末を使用する際は、“何か悪いことをしたら困る”という発想で、規則を設けたり、厳しい管理下で使わせるのではなく、ある程度子供たち自身に責任を持って機器を管理させたり、自由度を与える事も大切だと豊田氏は指摘している。具体的には、ICT係りなどを作って役割を与えるのが良いだろう。さらにICT活用だからといって、必ずしもICTを使うことにこだわる必要がないと指摘。豊田氏は「紙やデジタル、どちらか好きな方を子供が自由に選べる環境も望ましい」と語る。

ICT環境の整備と併せて、従来の学習スタイルも変えていく必要があるのはいうまでもない。目指す学習スタイルがあってICTの導入をしているのか。学習ニーズを見極めることが重要だと豊田氏は指摘している。

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