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JAET認定「学校情報化先進校」に選ばれた 熊本県・高森中学校のICT活用とは?【後編】

2016年03月11日 記事

熊本県にある高森町立高森中学校は、県内だけでなく全国的にも知られた教育ICT先進校。高森町教育委員会のリーダーシップのもと、行政・地域・学校が一丸となってICT化を進めている。高森中学校の取り組みは平成27年、日本教育工学協会(JAET)主催の「学校情報化認定」においても“学校情報化先進校”に選ばれ、教員生徒ともにICT活用能力が高いと評価された。高森中学校ではどのようにICT活用を進めているのか。同校の古庄泰則校長に聞いた。

熊本県高森町立高森中学校 古庄泰則校長
熊本県高森町立高森中学校 古庄泰則校長

“とにかく使ってみよう”からスタートした高森中学校

高森町では、町内の小中学校の教員全員が参加する研修会を定期的に行うなど積極的にICTの取り組みを進めている。一方で、実際に学校現場で遂行していくためには、学校単位の努力も欠かせない。高森町立高森中学校(以下、高森中学校)では、どのようにICT活用を進めてきたのだろうか。

高森中学校の古庄泰則校長は、「最初の1年は“とにかく使ってみよう”というスタンスで取り組みを進めた」と語る。ICT活用はこれからの教育を考えても、いずれ使うことが主流になるのだから、今のうちから取り組んでおこうと教員間の共通意識を広げていった。高森町教育委員会が目指すビジョンを、古庄校長は現場の教員にも浸透させる。

その後、高森中学校ではICT活用が進むにつれて、「タブレット端末の使い方やICTを使う場面に課題が出てきた」と古庄校長は話す。なぜ黒板に書かないのか、なぜ電子黒板やタブレット端末を使う必要があるのか、授業におけるICT活用について教員は課題を感じるようになる。そこで校内研修会や少人数による勉強会などを実施し、教員同士が互いに意見交換やアドバイスをしながら、ICT活用のレベルを高めていった。

デジタルとアナログの両方を活かす、高森中学校のICT活用とは?

校内研修会などを通してICT活用が進む高森中学校。昨今では「ICTを使う必要がない場面では無理に使わず、逆に使える場面ではICTのメリットを存分に生かす活用に変化している」と古庄校長は語る。例えば、以前はクラスで意見共有をする際に、学習支援システムの一斉表示を多用していたが、今はA4サイズのホワイトボードに生徒が直接書き込んだものを黒板に貼って共有することもある。また学習場面に応じて実物投影機を使わず、タブレットのカメラで生徒のノートを撮って映写する教員も見られる。デジタルとアナログ、両方のメリットやデメリットを知ることで、授業におけるICT活用は場面を選ぶようになってきたといえる。

とはいえ、高森中学校ではかなり日常的にICTが活用されている。数学でイメージを使って理解を促したり、美術ではあらかじめ塗る色のイメージをタブレット端末で試行錯誤したりもする。技術・家庭や体育では、動画で手本を見たり、自分のフォームを撮影して比較もする。修学旅行ではiPad miniで動画を撮ってその夜に発表会を行うなど、いずれもICTのメリットが活かせる場面では積極的に利用している。

 

高森中学校の新しい取り組みとしては、平成27年度から文科省の委託事業として町内の山間部にある中学校と遠隔授業に取り組んでいるテレビ会議システムを利用して、多様な意見に触れることが重要な教科や単元で遠隔授業を実施。古庄校長は「生徒同士は、同じ高森町の中学生である意識が高まっている。また教員同士も一緒に授業を進めていくので授業力の向上が見られる」と手応えを語る。一方で課題もある。高森町では同じ町内の中学校といっても、朝の開始時間や一日の時程が異なる。古庄校長は「両校で遠隔授業の日を設定するなど運用面で工夫すべき点がある」と指摘する。

ICT先進校へ躍進した、学校運営3つのポイント

古庄校長はICT活用の効果として、「生徒が自分から主体的に動くようになった」と話す。例えば、休み時間に電子黒板を利用して調べものをするなど(※高森中学校では、休み時間に生徒が自由に電子黒板を使える)、学校生活の中で生徒同士が教え合い、自分から課題解決のために動く姿が見られるようになったという。実際に、高森中学校ではICTを導入してから、生徒の提案でノーチャイム制情報委員会も取り入れた。

一方で、ICTの効果だけが生徒の変容につながったわけではない。古庄校長も「学校としてはICTだけに特化して取り組んできたわけでなく、教員にはすべてのことにおいて“共有化・教材化・焦点化”の3つを大切にして学校運営に関わってほしいと言い続けてきた」と話す。そうした取り組みの姿勢が、結果として学力向上やICT先進校への躍進につながったと分析している。

 

共有化とは、情報共有はもちろん、その裏にある思いや願いも皆で共有することを意味する。例えばICT担当者が情報を共有する際には、担当者がどういう思いで発しているのかも共有する。教材化とは、成功例も失敗例も教材にして教員間で共有することを目指す焦点化とは、やるべきことを絞ること。学校はやらなければいけないことが多いが、それらすべてを全うするのではなく優先順位の低いものは捨て、やるべきことにより力を注ぐという考え。高森中学校が大切にしてきたこれら3つのポイントが、ICT活用を成功させる素地になったのは間違いないだろう。

 

高森中学校がICT先進校に選ばれた背景には、ICT活用のレベルを互いに高め合っていった教員同士の日頃の積み重ねがあったといえる。一方で、結果として教員間のICT活用におけるレベルの差を生まなかったことも評価されるべきだろう。ICTは全員で取り組む。高森中学校ではICT導入当初から、教員全員が参加感を持てたことが、のちの取り組みを左右したのかもしれない。

(取材・文/神谷加代)

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