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どの先生でも使えるICT活用を目指して 〜山江村立山田小学校 ICT活用事例【後編】〜

2016年03月10日 記事

熊本県の山間部に位置する山江村立山田小学校。平成23年度から教育の情報化を本格的に始めた同校は、教育現場におけるICT定着を目指して、当初から10年間のICT研究期間を設定して取り組みを進める。その結果、同校のICT活用は授業改善や学力向上につながり、平成27年、日本教育工学協会(JAET)主催の「学校情報化認定」において“学校情報化先進校”に選定され、一般社団法人 日本教育情報化振興会(JAPET&CEC)主催「ICT夢コンテスト」では、総務大臣賞を受賞した。

後編では、ICT活用の効果を出すまでに至った取り組みを掘り下げる。

明確な目的を持ってICTを活用できることが大切!

平成23年度にたった3台の電子黒板からスタートした山江村立山田小学校。同校では、段階的にICT整備を進め、現在ではWindowsのタブレットPCやiPad Airなど約230台の端末を218名の児童が1人1台環境で活用している。

 

ICT活用の目的は、児童の学力向上だ。そのための授業改善の手段としてICTを活かす。同校では、週1回の校内研修会を実施するなど、日頃から活発に授業研究が行われている。

 

山田小学校は、ICT活用の軸として“デジタルとアナログの融合”を重要視してきた。従来から大切にしてきたもののなかにICTをどう活かしていくか、そこに軸足を置いて活用範囲を広げてきた。例えば、「めあて」「まとめ」など、授業の一連の流れが一目でわかる黒板は、ICTを取り入れても大切にする。一方で、授業の足あとが残りづらいタブレット端末は個人思考の場面で活用する。板書、ノート指導、発問など従来から授業のなかで大切にしてきたものとICTを組み合わせながら、「なぜ、ここでICTを使うのかを考えることが重要だ」と藤本誠一校長は語る。

 

ICT活用が多い問題解決型学習のパターン化にも取り組んだ。授業の流れを課題提示、個人思考、集団思考、まとめ、振り返りに大別し、それぞれの過程でICT活用の目的や用途をパターン化した。これを見れば、ICTに不得手な教員や山田小学校に転勤してきた教員も、タブレットや電子黒板をどのように授業で活かせばいいのかわかりやすい。藤本校長は「どんな教員でもICTを活用できる土台をつくることが重要だ」と話す。

ICT活用、その成果とは?

山田小学校のICT活用における成果はどうか。3年間にわたる熊本県学力調査の結果を示した資料(平成27年12月に行われたICT教育活用研究発表会で配付された資料からの抜粋)を紹介しよう。下記の資料からはICT導入後は、全観点・領域で学力の向上が見られ、ICT活用による授業改善が成果に結びついたと言えるだろう。

続いて、平成27年度全国学力学習状況調査の結果(下図)を紹介しよう。山田小学校は、知識力を問うA問題、知識活用力を問うB問題ともに全国、熊本県の平均を大きく上回っている。この調査の対象となった学年は、ICT活用5年目で活用能力も高かったと言う。

藤本校長は、「タブレット端末や電子黒板の活用が着実に効果をもたらすために、学習規律や学級づくりなども同時に力を入れてきた」と語る。そうした背景も学力向上が見られた要因であろう。また、教育現場でもしっかりエビデンスを取ることを重要視している。

「数字がすべてとは言わないが、ICT活用において効果を示す数字がなければ、取り組み自体が広がらないことも事実。ICTを教育現場に浸透させ、周囲を動かしていくためには数字も必要だ」

山田小学校では、さらに学力向上を図る新しい取り組みとして、5・6年生にタブレットPCの持ち帰りを試験的に実施している。6年生は与えられた課題の調べ学習、5年生は基礎・基本の定着を目的としたデジタルドリルでの宿題に取り組む。どの家庭にもインターネット環境があるわけではないが、学校で必要なデータをダウンロードして自宅に持って帰ることが可能だ。デジタルドリルに関しては、児童のデータを見て教員が指導に活かす研究も進めていると言う。

JAET認定「学校情報化先進校」に選定。今後の課題は中学校との連携

このような山田小学校のICT活用は、2015年、日本教育工学協会(JAET)主催の「学校情報化認定」において、教科指導におけるICT活用の部門で“学校情報化先進校”に選定された。評価のポイントは、村全体で教育の情報化を推進していることや、10年間のICT研究期間を設定し、継続的な研究、研修を実施していること。タブレット端末をはじめとするICT活用レベルが教員と児童ともに高く、学力向上の成果につながっていることが理由だ。

また今後の課題として藤本校長は、「中学校との交流を増やすことだ」と語る。山江村では小学校間の交流は積極的に行われているが、中学校とは少ない。ICTを地域で推進していくためには小中学校の連携を増やして、ICT活用を互いに高め合っていくような取り組みが重要だといえる。今後は、中学校だけでなく周辺の地域における先進校としての役割も山田小学校は問われるだろう。

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