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小学校の創造表現活動を子ども目線で支援する「ピッケのつくるプレゼンテーション」【前編】

2016年03月04日 記事

考えて表現することの楽しさをサポート

情報化社会と言われるようになって久しいが、90年代後半以降から続く「日本の国際競争力の低下」に歯止めがかかるにはまだ至っていない今日、21世紀の知識基盤社会で求められる能力「21世紀型スキル」の育成を目標とする学校教育の実現が大きな注目を集めている。

 

21世紀に入って16年。日本の子どもたちは、他の先進国と比べて基礎的な学力は高いものの、いまなお自らの考えをまとめて言葉として発することが苦手だと言われる。小学校でも、作文などがうまい児童はいるが、その内容をクラスの前で発表することになると尻込みしたり、原稿なしではうまく話せなかったり、文章の棒読みになってしまうケースが多々あるのが現実だ。

 

しかし、子どもには本来的に想像力や創造性が備わっている。また、論理的思考力、問題解決力、コミュニケーション力といった言わば「人間力」の育成も、適切なツールと環境さえ与えられれば、それらが一気に噴き出してくる可能性を秘めており、日本の教育業界ではこの21世紀型スキル」をどうすれば子どもたちが身につけられるのか、さまざまな取り組みが行われ始めているのも現実だ。

 

ちなみに、欧米では小学生でも積極的に発言の機会を得ようと競って手を挙げ、自分の体験などをストーリー仕立てで話したりできる場合が多いと言われる。また、授業の中に"Show & Tell"(何かを「見せ」ながら、その出自やいわれなどについて「話す」)というアクティビティーを組み込むことにより、積極的に説明の方法や話術を磨く支援が行われている。これがコミュニケーション能力のアップにつながり、ひいては国際社会における個人の存在感にも関係してくるのである。

特に、アメリカの初等・中等教育現場では現在、STEM(ステム)あるいはSTEAM(スティーム)と呼ばれる統合的な教育のあり方が注目されている。STEMとは、Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Mathematics(数学)という理系4分野の頭文字から名付けられたものであり、STEAMの場合にはそれに文系のArt(芸術)が加わるが、どちらも、それらの教科の垣根を越えた課題と向き合うことで、広い視野で物事を考え、工夫する力を身につけさせることが目標だ。

それらの名前には、これからの国づくりの幹(Stem)となり、かつての産業革命の原動力だった「蒸気機関」(Steam engine)のように新たな産業を推進するパワーになってほしいという思いが感じられる。オバマ大統領も、STEMやSTEAMの普及が今後の国づくりには不可欠と考えており、それを受けて教育の現場でもさまざまな取り組みが行われるようになってきた。そして日本でも、21世紀型スキルの育成観点と通ずるSTEMSTEAMの概念が徐々に重要視される流れも見え始めている。

 

さて、前置きが長くなってしまったが、Windows用文教向けプレゼンテーション作成ソフトの「ピッケのつくるプレゼンテーション」は、こうした観点が注目される以前から、子どもの生来の力を引き出せるようにと開発された製品だ(同製品はインテル株式会社の協力を得て開発された)。

「ピッケのつくるプレゼンテーション」は教科の枠に囚われず、しかも、子どもたちの成長や学習段階に応じた発表資料を自分たちで作成できることを目的としている。そして、学びが決して退屈で苦しいものではなく、「自分の考えをまとめて発表し表現することが、こんなに楽しいものなんだ」と実感してもらえるようデザインし、改良が加えられてきた背景を持つ。

教育者とデザイナーの視点でICTをとらえる

「ピッケのつくるプレゼンテーション」を生み出した株式会社グッド・グリーフ 代表取締役 朝倉民枝氏。実はこのシリーズは社長自らが企画・デザイン・制作を手がけ、開発パートナーと連携しながらテストを何度も繰り返し、あるべきソフトに仕上げていく手法を採っている。

その根底には、つくることへの情熱と、その思いを子どもたちに届けて、楽しく学べる環境を提供したいという強い気持ちがある。そして、他のソフトハウスの代表の方には見られないユニークな経歴をお持ちだ。それは、教育についての知識とデザイナーとしての素養である。

 

大阪教育大学出身の朝倉氏は教員免許も取得しており、学習とは誰かに強制されるものではなく、自ら進んで学びたいと思えるようになることが理想と考えている。また、社会に出てからは株式会社ファミリアで子ども服のデザイナーをしていたり、コンピューター・グラフィックスの黎明期にはテレビ番組やPCコンテンツのための3DCGの企画・ディレクション・デザインなどを行い、日本CGグランプリ・アニメーション部門の優秀賞をはじめとする数々の賞も受賞している。一方で、自身でコードを書かないにもかかわらず、IPA未踏ソフトウェア創造事業の「スーパークリエイタ」の称号も有する。

 

そんな自らの経験の中で、朝倉氏はテクノロジーの難しさとともに、それが人々に創造のための力を与える可能性を感じていた。そして、子どもたちにコンピュータとの幸せな出会いをしてもらえるようなソフトウェアの開発にとりかかったのである。

 

「子どもたちが、ゲームなどを通じてテクノロジーを単に消費していくだけではもったいないと思いました。また、コンピュータに依存することを危険視する方もおられますが、コンテンツのデザイン次第で、安全で、子どもの生来の力をエンパワーするものになるのです」と朝倉氏は語る。

 

個人事務所開設をきっかけとして、2001年に、まず、未就学児を対象に親子であそぶインタラクティブ絵本のWEBサイトの開発に着手し、それは、こぶたの男の子ピッケをシンボルキャラクターとしたピッケシリーズの第1弾となる「ピッケのおうち」として公開した。

 

次に開発されたのは、パソコンとiPadのためのおはなしづくりソフト「ピッケのつくるえほん」であり、ここから、子どもたちに何かをつくることの楽しさを知ってもらえる環境づくりが本格的にスタートした。 

それを発展させて、小学校の低学年児童でも使えるやさしさはそのままに地図記号やグリッドなどの文教向け要素を多く盛り込み、Windowsタブレットでの利用に最適化したものが「ピッケのつくるプレゼンテーション」である。ピッケシリーズの集大成ともいえるこのソフトには、ICTを活用して子どもたちの創造表現活動を支援する目的のために、朝倉氏が培ってきた教育やデザインの知識がすべて注ぎ込まれており、さまざまな学校で、絵本はもちろん、地元の特産品紹介や動物図鑑などのコンテンツを児童自らがつくって楽しむ動きが広がり始めている。

 

小学校の創造表現活動を子ども目線で支援する「ピッケのつくるプレゼンテーション」(後編)では、開発にあたって重視された点、機能的側面を取り上げる。

学校向けプレゼンテーション作成ソフト「ピッケのつくるプレゼンテーション for Windows」。ライセンス購入はダイワボウ情報システム経由となる。

アメリカの初等・中等教育現場で提唱されているSTEM(ステム)は、Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Mathematics(数学)という理系4分野の頭文字から名付けられたもの。

「ピッケのつくるプレゼンテーション」の企画・デザイン・制作を手掛けた、株式会社グッド・グリーフ代表取締役の朝倉民枝氏。教員免許を持ち、子ども服デザイナーだったという経歴が、ソフトウェア開発にも活かされている。

朝倉氏はデジタル技術が万能と考えているわけでなく、同じ時計の読み方にしても、画面内での説明とともに、印刷された模型を手で動かしながら覚えるような両面性も大切にされている。

「ピッケ」は、株式会社グッド・グリーフの登録商標です。その他、記載されている会社名、商品名は、各社の商標または登録商標です。

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