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2年間のICT実証研究から実感した子どもの変容とは?【後編】

2016年02月12日 記事

大潟小学校では、ICTの取り組みに積極的だ。2013年に2年間のICT実証研究校に応募し、授業改善にICTを活かそうとさまざまな実践と改善を繰り返してきた。その後、2年の実証研究が終了した後も、子どもの変容に確かな手応え感じた大潟小学校はICTの本格導入へと舵を切っている。前編では導入後のICT活用について話を聞いたが、後編では実証研究2年目、1年経過してなにが見えてきたのか。そして、本導入を決めた考えなど、前半同様に大潟小学校においてICTの取り組みに関わる今田校長、前年度までの研究主任 鈴木先生、今年度からの研究主任 菅原先生に話を聞いていく。

実証研究2年目。日常的なICT活用から、“子ども主体”の授業へ挑戦

実証研究が2年目に入ってから、ICTの活用が大きく前進したという。その背景にあったものとは何だったのだろうか。

「実証研究1年目と2年目の大きな違いは、先生方の意識でしょうか。1年目は、ICTに不慣れな先生が多い中、“とにかくやってみよう!”というスタンスで始まりましたので、なかには消極的な先生もいました。しかし、ICTの活用範囲が広がるにつれて、子どもの変容を先生自身が実感していたので、2年目ともなるとICT活用に取り組む先生もかなり増えました。さらに2年目には、先生方のタブレット操作もかなりスムーズになってきて、より発展的な取り組みができるようになりました。ICTスキルに関しては当初個人差がありましたが、タブレットを日常的に使っていくうちにその差が埋められていくことを実感しました。一方で、ICTを使う機会が月に数回しかなければ、その差を埋めることが難しいのではないかと経験から思います。日常的に使える環境にあればこそ、先生方のICTスキルも上がると考えており、2年目はそうした先生方のICTスキルの向上にも支えられて、学習者を全面に出した「子ども主体」の授業デザインにも挑戦していくことができるようになりました」(鈴木先生)

現在、大潟小学校で校長を務める今田校長は、実証研究2年目(2014年度)に着任した。大潟小学校でのICTを使った授業を見て、子どもたちの取り掛かりがICTを活用しない授業に比べ格段に違うことを実感したという。

「自分のイメージや考えなど、学びのプロセスを簡単に共有できることは、教師にとっても、子どもにとっても、次の段階に進みやすいのだと思いました。実証研究の1年目の様子を私は知りませんが、子どもたちがICTを使って学ぶ様子を見ていると、学びの意欲を高めるためにICTが活用されていることがよく分かりました。一方で、タブレットを使った学習は、勉強をしたような気になって終わってしまうことがあるのではないかと懸念もしています。基礎基本の定着や先生の授業力向上など、ICT活用を進める中で同時に意識していかなければならない部分もあるでしょう。なかでも学力の定着は大切で、最後は紙を使って確認するなど既存の学力の定着に気をつけながらICTの取り組みを進めていきたいと考えています」(今田校長)

子どもの“思考を深めるためのツール”としてICTを活かす!

大潟小学校はICTの実証研究校として2年間取り組みましたが、その成果発表として公開研究会が2年目に開催された。公開研究会ではどのような授業が披露されたのだろうか。

「平成26年度に開催したICT活用推進実証研究の公開研究協議会では、ICTを“思考を深めるためのツール”として、「瞬時の共有化」「思考の可視化と共有化」「思考の繰り返し」「思考の焦点化」をテーマにした授業に取り組みました。例えば、4年生国語の授業においては、「写真と文章で説明しよう」という単元で、大潟村50周年を記念するデジタルブックの作成に取り組みました。この授業では大潟村についての調べ学習や、デジタルブックの文章入力や編集作業にICTを活用するだけでなく、作成したデジタルブックをグループで話し合う際にもICTを活用しました。デジタル作品を作るメリットは、消したり、切ったり、貼ったりの作業が簡単なので失敗を恐れず、子どもたちが取り組めることが挙げられます。子どもたち同士で編集内容を添削していく活動も、いままではとても難しかったのですが、ICTを使うことで瞬時に共有できるので話し合いの活動が活発になるのもメリットです。このような活動は、今までの授業の中でもやっていることで、授業の流れそのものは変わらないですが、ICTを使うことで、それに費やす時間や時間の使い方に変化ができてくるのではないかと思います」(鈴木先生)

実証研究が終了後、ICTの本格導入へ舵を切った、その理由は?

2年間の実証研究でICTの手応えを感じた大潟小学校の先生たちは実証研究が終わった後も、学校独自の取り組みとしてICT活用を継続すべく、ICTの本格導入へ舵を切った。実証研究から本格導入を決めた理由、そして本格始動した今年度の取り組みとは?

「実証研究の間、ICTを活用した授業を見て感じたことは、ICTがあることで双方向性のある学びが成立すると思いました。21世紀型スキルの育成が言われているなかで、子どもたちが自分の考えを持ち寄ってより質の高い解を求めていく、そうした学びの姿勢を子どもたちが身につけるためにはICTが必要だと考えています。ですので、本格導入へ移行する際も、迷うことなく「やっぱりICTは必要だ!」と確かな実感をもって進めました。もちろん、公開研究会などを通して、村長はじめ、教育長、研究会に参加してくださった方々、村の方々にICTを活用して学ぶ子どもの姿を見てもらい、同じ感想を共有できたこともあります」(今田校長)

「実証研究が終わって“これで一旦ICTは終わりにする”という選択肢もあったのでしょうが、子どもたちの意欲が全然違うことを知っていたので、“終わる”という選択肢はありませんでした。これまで助けて頂いたDISさんの協力なしで、本校独自でICT活用を進めていくためには、まずインフラを整備する必要があったため、今年はタブレットの配備を優先できる状況ではありませんでした。それでも2年間の実証研究で得た手応えから、子どもたちの思考の比較・検討をさらに深めたいという要望があり、80インチの大きな電子ボードを入れることを優先しました。タブレットの機種選定に関しては、パソコンとタブレットの両方が使えるものを希望しました。スクリーンキーボードでは使いにくい子どももいますし、低学年にもタブレットだけでなく、パソコン操作にも慣れてほしいと考えていたからです。今年は、80インチの電子ボード、WindowsのタブレットPCを10台(うち教師用2台・子ども用8台)、4教科のデジタル教科書を導入しました」(鈴木先生)

「本年度は、実証研究の時と比べてタブレットの台数が減ってしまったので、以前のような使い方ができているわけではありませんが、実証研究で得た知見を生かして普通教室だからこそ効果的に使えるICTの活用を試みています。一番多いのは、調べ学習です。調べ学習は通常、パソコン室で行いますが、その場合ですと1時間費やしてしまいます。しかし、普通教室でタブレットを使えば、10分で済みますし、いろいろな教科にも調べ学習を組み込むことができます。そのような形で、普段から使えるICTの活用を中心に使っています。また、今年は80インチの電子ボードが2台導入されたので、こちらをメインに活用しています。高学年、中学年のフロアにそれぞれ1台ずつ配備し、必要な時に移動して使用するのですが、大画面に板書や資料を投影できるのはとても便利です。先生によっても使い方は異なりますが、パワーポイントのスライドを写したり、NHK for Schoolの映像を写したりしています」(菅原先生)

2年間の実証研究で子どもたちがいきいきと学ぶ姿を見てきた教師たち。確かに、先生の方がICTに対してハードルを感じてしまうのは無理もないが、今まで確立した授業力がICTの活用でかき消されてしまうことはないと知っただろう。子どもたちにICTを活用した授業を届けられるのは先生しかいない。今田校長は最後にこう話してくれた。

「ICTの本格始動となる今年、タブレットを1人1台の環境で整備することはできませんでしたが、村では今後も継続的にタブレットを整備して頂けるとのことです。これは地域としても、ICTを活用しながら、未来を切り開いていく人材育成が期待されているのだと考えています。大潟小学校の子どもたちには、他者と意見を交換しながら互いに高め合えるような、今よりも高みにいくような学ぶ姿、生きる姿に期待したいです。今後、タブレットが1人1台整備されれば、教室の中だけでなく、学校外でも多様な学びが実現できると考えます」

「とりあえずやってみよう!」先生のその一歩が子どもたちの未来をまたひとつ切り拓くのかもしれない。

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