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実証研究から本格導入へ、ICT活用継続を決断した理由【前編】

2016年02月10日 記事

秋田県にある大潟村立大潟小学校は、八郎潟を干拓して造った日本最大の干拓地の中にある。大潟村は国の干拓事業モデル農村として、全国から多くの入植者が移住した地域で、世界各地から視察団も多く訪れる。地元では、英語を話す人材も多く、多様な文化交流が行われており、グローバル社会を身近に感じることができる環境下で子どもたちは学んでいる。そんな環境に恵まれた大潟小学校では、ICTの取り組みにも積極的だ。2013年に2年間のICT実証研究校に応募し、授業改善にICTを活かそうとさまざまな実践と改善を繰り返してきた。その後、2年の実証研究が終了した後も、子どもの変容に確かな手応えを感じた大潟小学校はICTの本格導入へと舵を切っている。2年間の実証研究で現場の先生たちが感じた手応えとは何か。本格導入につながったICT活用のメリットとは何か。大潟小学校においてICTの取り組みに関わる今田校長、前年度までの研究主任 鈴木先生、今年度からの研究主任 菅原先生に話を聞いた。

「とりあえずやってみよう!」からスタートしたICT活用

そもそも大潟小学校でICTに取り組むきっかけは何だったのか?それまで抱えていた課題などを聞いてみた。

「ダイワボウ情報システムで募集をしていた「産学官による普通教室でのICT活用推進実証研究事業"DIS School Innovation Project"」に応募したことがきっかけです。当時、本校では授業改善に取り組む中で、子どもの興味・関心を高めていくためにはどうすればよいかが課題でした。子どもたちは全体的に落ち着いた態度で学び、学習自体にも熱心に取り組むことができていましたが、アンケートを実施すると学習内容への関心が低いことが分かりました。子どもがより主体的に学ぶためには、興味・関心の向上に取り組むことが重要だと考え、ICTの活用はそのひとつの手段として有効ではないかと思ったのです。また子どもの「話す力」「聞く力」を高め、子ども同士の話合いをICTで活性化させたい狙いもありました。子どもたちは発表する意欲は高いのですが、自分の考えを表現するのに苦手意識をもっていたり、友だちの意見に対して発言する力が弱いと感じていたからです。ダイワボウ情報システムの実証研究校に選ばれて、1クラス40台分の子ども用タブレットや電子黒板など必要な機材を一式貸与してもらい、ICT活用がスタートしました」(鈴木先生)

話を聞くと、ICTを活用した教育に抵抗がないように感じる。しかしながら、最初から全ての先生がICTの取り組みに積極的だったわけではないという。また、当時研究主任であった鈴木先生自身もICTに明るい人間ではなかったというのだ。ICT活用が進んだ要因とは何だったのか。

「意欲的な先生が多かったので「ともかく一度取り入れてみよう」というスタンスでスタートすることができました。というのも、先生が事前にあれこれICTの効果を考えて、それに見合った授業をするよりも、子どもたちがタブレットを使える場面を増やし、その姿を見ながら先生が学びの中でどのように活用できるかを考える方が良いものが出てくるのではないかと思ったのです。子どもたちは既に家庭でIT機器を使用していますので、覚えるのも早いし、なによりもIT機器が好きです。そんな子どもたちがどんどん興味を示していく学びの姿を見て、私たち先生もやる気を出して進めていったのです。実際に取り組みを始めてみると、多くの先生が子どもたちの変容を知ることになりました。子どもたちが楽しく学ぶ姿を見て、ICTのよさに気づき始めました。そのうち“他にもこんな場面でICTが使えるのではないか”と先生の方からアイデアが出てくるようになり、学校全体で取り組んでいこうという雰囲気につながっていきました」(鈴木先生)

実証研究1年目。初めてICTを取り入れた教師たちが感じたメリットとは?

「とりあえずやってみよう!」というスタンスで始まった大潟小学校のICT活用だが、どのような活用からスタートしたのだろうか。

「最初は簡単なところからスタートしました。例えば、体育のマット運動の際に、子どもの演技を動画に撮ってグループで改善点を話し合ったり、理科のヘチマの観察で、カメラ機能で写真に撮って記録するなど写真や動画の活用が中心でした。そのうち、タブレットに搭載された授業支援ソフトを用いるなど活用範囲が広がっていきました。例えば、図工の時間には授業支援ソフトを使って、子どもが描いた絵の鑑賞会を行いました。タブレットで互いに描いた絵を共有しながら、付箋機能を使ってコメントを書き合い相互評価をする活動ですが、今までも紙の付箋で同じ活動を行なっていました。しかしICTを活用することで、より活発な交流が生まれたと思っています。このような授業実践は、他の先生にも広がるように校内研修会を設け、学校全体として授業の中でICTを生かせるように努めていきました」(菅原先生)

ICTの導入において、先生方の不安の多くは、授業での活用方法だろう。いきなり授業デザインを考えるのではなく、大潟小学校のように今までの授業の中でICTをワンポイント的に活用することから始めていけば、先生や生徒も次のステップが見えやすいのかもしれない。こうして少しずつ授業の重要なツールへとICT活用を発展させた大潟小学校。実際にICTを活用してみて、どのようなところがメリットだったのだろうか。

「私が感じるICTの一番のメリットは、子どもの考えを瞬時に発信できて、それを共有できることです。しかも、どのように解決まで辿り着いたのか、その思考過程が見えることもメリットです。例えば、算数の授業では、子どもがどこで間違ったのか、どこでつまずいたのか、デジタルは作業の履歴が残るので、そこから子どもの思考過程に気づくことができます。授業中に解き方を発表するときも、ノートに書いたものを黒板に書き写したり、画用紙に書いて発表したりする手間なく、タブレットに書いた内容を瞬時に全員に共有することができます。時間短縮にもつながり、その分、子どもの解答を比較・検討することに時間を費やせます。また、デジタル教科書や資料をカラーで大きく表示できるのもICTのメリットでしょう。ただひとつ、個人的な反省点としては、タブレットを機械として扱うのではなく、ノートとして扱っていればもっと活用範囲が広がったと考えています。例えば、グループ学習の際にグループ内での情報共有や編集作業に終わらず、グループ間の交流にも積極的に使うなど、ノートと捉えていればもっと発展的に活用できたのではないかと感じています」(菅原先生)

使ってみたからこそ実感したICTの手応えと課題。こういった使い方ができるのではないか、初期段階で子どもたちの変容が見える取り組みを続けたことが、先生のICTに対する意識やモチベーションに影響を与えたのかもしれない。後編では実証研究2年目、研究終了後本導入を決めた経緯を聞いていく。

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