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桃山小学校が実践する「効果的ICTの活用+α=集中力と理解力の向上」【後編】

2017年04月20日 記事

文部科学省の研究開発校教育課程特例措置校に指定され、知識基盤社会を生き抜くために必要な資質や能力を育成する新教科「メディア・コミュニケーション科」を開設している京都教育大学附属桃山小学校。前編では同校のICT教育への取り組みについて話を聞いた。後編ではICT導入に対する保護者の声や、効果的なICT教育実現のための課題、これからの展望などについて聞いていく。

部分的にBYODを採用

京都教育大学附属桃山小学校の児童は、メディア・コミュニケーション教科でICT機器の活用から情報モラルまでを学習していく。このため児童の情報リテラシーは高く、校内で自由にiPadを利用できる環境であっても学習以外に使おうとする子どもたちはほとんどいないという。一方で保護者に対しては、テーマを設定したうえでの教育的な使用に留めていること、子どもたちの情報モラルを高めてから使わせていること、そして大学のセキュリティを通しているため危険なサイトへのアクセスがブロックされることなどを説明し、保護者の理解を得ているという。

 

ちなみに、同校の教師陣が授業で使っているスマートフォンといったICT機器は、教師陣の私物だ。管理者の許可申請をしてから校内のWi-Fiに接続しているという。一般的には企業や学校、公的機関などで私物のICT機器を業務で利用する「BYOD(Bring your own device)」は許されないケースが多いが、同校では教師陣のBYODが許可されている。現在は、児童にBYODを許可する予定はないが、保護者の理解や児童の高い情報リテラシーを考えると、今後はBYODを導入することも不可能ではないだろうと同校教諭・木村明憲氏は語る。

授業に使われるiPhoneとiPad。さまざまな授業で「Kocri」が活用されていた。

1人1台のタブレット環境を予定

桃山小学校では将来的に児童1人に1台のタブレットを配付する環境を実現する計画だ。それに合わせて導入しているICT機器の管理は、より安定した体制を構築すべく準備中だという。

 

「いままではICT管理を担当する先生がいて、基本的に内部で管理していたのですが、このやり方では先生の異動などがあった場合に問題が生じます。これからタブレットやPCを1人1台体制で導入していく予定ですから、今後はどこかのタイミングで信頼の於ける業者の方に保守をお願いしようという話になっていて、現在選定を進めています」(木村氏)

 

また、タブレットの1人1台体制実現にむけ、Wi-Fi環境のテストも進めている。

「最初は4年生の70人くらいでタブレットを使った授業をして、どれくらいの速度で動いているのかを試してきました。うまくつながっているときもあれば、ちょっともたつくときもありましたが、まあ、いけるかなという感触を得ました」(木村氏)

現在は生徒用に40台のiPadが用意されている。生徒がいつでも利用することができるようになっており、本取材中も何人もの生徒が持ち出し、返却に来ていた。

校内各所にシスコシステムズの無線LANアクセスポイントが設置されており、どこからでもネットワークに接続することが可能。数十台の機器を1つのアクセスポイントでつなぐケースも検証しているという。

ICT教育の課題は機器やアプリの使い方にある

効果的なICTの活用を実現するための課題は、機器やアプリ(ツール)の選び方や使い方にあるという。「わかりやすい」「学びやすい」「理解が深まる」といったICTに期待する効果は、使用する機器やアプリによって変わる側面は大きい。機器によって特性があり、効果も異なるため、一括りに善し悪しを決めることはできない。

 

1つ1つのアプリの効果的な活用方法を教師陣が考えて使っていかねばならない時代になりました」(木村氏)

 

「ICTを取り入れても、効果的ではない授業になってしまう場合があります。たとえばベテランの先生方には、これまで黒板だけを使った効果的な授業の経験と実績があります。そのスタイルを変えて無理矢理ICTを取り入れても、授業の質が下がってしまうのであれば本末転倒です。ICT導入はそういったリスクを伴うため、普及が難しいという面は出てきます。ただ、いままでのスタイルを変えずにICTを取り入れる場合や、スタイルは変わるが効果的なことが明らかな場合ならば、スムーズに導入を進められると思います」(木村氏)

 

教育ICTにはさまざまなベンダーから多種多様なアプリが提供されている。前編でも触れたが、たとえばハイブリッド黒板アプリ「Kocri」は、先生たちがわかりやすい授業を行うためのツールとして活用できる。これに対して「ロイロノート」アプリは、カードをつくって関連づけを行うことで、子どもたちの思考力を育む。このように、選んだアプリによってその効果は大きく異なるため、どのような機器、アプリを選択し、それをどのように使いこなすのかが重要になってくるのだ。

一貫したICT教育の実現と今後の展望

幼稚園から小中学校、高等学校までの附属校がある京都教育大学では、園児、小中学生の異校種、異年齢の子どもたちが同じ教室で学習するといった連携プログラムを進めているが、ICT機器の導入に関してはまだ連携が取れていない。たとえば桃山小学校では40台のiPadを導入して活用しているが、中学校ではそれほど多数のタブレットは導入されておらず、当然ながら授業での使われ方も異なるという。とはいえ、ICT機器の整備は各学校それぞれで進んでいく予定となっており、「どのように活用し、コミュニケーションをどう取るのかといった点を連携させていければ、うまくつなげていけるはず」と木村氏は話す。

 

最後に、同校におけるICT教育のこれからについて聞いたところ、若松俊介氏はこう答えてくれた。

 

「ICT教育は、僕ら教師陣が子どもの頃に体験していないということが、難しさを生んでいると思います。我々も、これからもっともっとICTの効果的な使い方を知っていく必要がありますが、最初から難しいことをしようとするとダメで、Kocriなどの使いやすいツールが良いスタートになるかと思います。現在も子どもたちと一緒になって模索しているところなので、より良いあり方を見つけていければいいのではないでしょうか。新しい機器やツールはこれからも増えていくでしょう。先走りすぎずに、大事なものを見つけていくことが重要だと考えています」

 

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