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袖ヶ浦高校ICT活用の真髄に迫る。3年間の学びの集大成はICTで社会の課題解決を目指す「課題研究」_千葉県立袖ヶ浦高等学校【後編】

2017年04月05日 記事

学習や学校生活など日常的に生徒がICTを活用する袖ヶ浦高校・情報コミュニケーション科。同校では、“ICTを使いこなす”だけに終わらず、3年次にICTで社会の課題解決を目指す研究活動「課題研究」に取り組む。テクノロジーやツールをなんのために使うのか。また、それらを使って生み出されたソリューションにはどのような価値があるのか。この問いかけに向き合った生徒たちの成果発表が2016年11月に開催された課題研究発表会だ。本稿ではその様子をレポートするとともに、同校が目指すICT活用の真髄に迫る。

情報コミュニケーション科3年間の集大成、課題研究発表会とは?

袖ヶ浦高校・情報コミュニケーション科(以下、袖ヶ浦高校)では、毎年11月に成果発表の場として、ポスターセッション形式の「課題研究発表会」を開催している。3年生の「課題研究」という授業の一環で、生徒たちはこれまで学んだ内容やスキルを活かし、社会のさまざまな問題に対してITを用いた課題解決に挑む。同科の集大成ともいえるプロジェクトで、永野氏は「これからの社会をどのような姿勢で生きていくのかを学ぶ、袖高の最終的なねらいを体現化したものだ」と語っている。

 

自分の中の問題意識や社会の中の課題を見つけるところから始まる課題研究の本質的な狙いは、“自分たち提案がどのような価値を与えるのか”を問いかけ考えることだ。生徒たちはグループワークで取り組みながら、メンバーと話し合い、協力し合って、ひとつの形にしあげていく。

 

研究テーマや研究ツールにiPadを使う決まりはなく、どのようなIT製品やサービスを使うかは生徒たちが決める。課題解決の手段として、プログラミングを用いてアプリを制作するグループもあれば、3Dプリンタを使うグループもあるなどさまざまで、取り組む課題の内容を見ても、いかに同校の生徒が3年間で幅広い知識や経験を身につけたのかがわかる。

 

3年生が取り組んだ課題研究の内容

・最先端の教材の形!3Dプリンタ教材作成

・Blenderと自作VRゴーグルを利用した疑似体験型教材

・ポイ捨てを減らせ!センサーボードを使った面白ゴミ箱

・テスト前の生徒と先生をサポート!対話形式の解説動画配信

・チャットボットを利用した食材管理とレシピ紹介

・歩きスマホ防止のCMとGPSを活用したアプリの作成

・おもしろそう!書き込めるデジタル地球儀と体を使った学習ゲームの作成

・プロジェクションマッピングを用いた絵本型学校紹介

 

ちなみに2016年11月の課題研究発表会では、2年生も学校設定科目である「情報コミュニケーション実習」で取り組んだプログラミング学習の成果を発表した。同発表会には例年多くの来場者が詰めかけ、生徒たちは自分の取り組んだ作品や研究内容について、来場者らに直接話しかけるという実践を通して“価値を伝える”ことを学ぶ。

3Dプリンタを使った自作教材に、ゲームができるゴミ箱も作成!

3年生が取り組んだ課題研究の内容を詳しくみていこう。

 

3Dプリンタを用いて教材制作に挑戦したグループは、アクティブ・ラーニングにおいて生徒の学ぶ意欲を高めるためには、手で触ることが可能な模型の教材が効果があるのではないかと考えた。そこでどのような教材が望ましいのかを教師らのニーズを調査し、“実際に手にとって触ることができないものを作ってほしい”という声のもと、地球や細胞などの模型を3Dプリンタで制作した。

生徒たちはもちろん、3Dプリンタについては初心者であるが、何度も試行錯誤を重ねて完成に近づけていったという。特に材質や微妙な温度設定の違いで表面にコブができてしまったり、空間を埋めるための補助が取れなくなるなどのトラブルが発生したようだ。完成品は中学生に触ってもらい、“実際に使って勉強してみたい”という回答を81%の生徒から得た。グループのメンバーは「3Dプリンタで教材をつくること自体は簡単ではないが、教材をつくるという活動が知識を深めるのに役に立った」と感想を述べた。教材をつくるというアウトプットこそが、実は主体的な学びにつながっているという気づきを得たようだ。

 

「ポイ捨てを減らせ!センサーボードを使った面白ゴミ箱」に取り組んだグループは、毎日の通学路で見かけるポイ捨てを減らすべく課題解決の方法を模索した。そこで海外と日本のポイ捨て対策を調査した結果、海外では、ゴミを捨てると音がする、噛んだ後のガムをボードにくっつければ絵になるなど、ゴミ箱自体に仕掛けが施されている事例を発見した。これを参考に、同グループは「Scratch」と「nekoboard2」を用いたゲームで遊べるゴミ箱の制作に挑んだのだ。

仕掛けとしては、ゴミをゴミ箱に入れるとセンサーが反応しゲームが開始される。ゴミ箱に設置されたディスプレイにゴミのイラストがランダムに表示され、カメラで取り込んだ人の動きを読み取って、いくつ取れたかを競うというもの。同グループはゲーム性をゴミ箱に追加することで、“ゴミ箱に捨てなければならない”という義務感を育てるのではなく、楽しくゴミを捨てる行為がポイ捨て対策につながることを提案した。中学生によるアンケートは好評であったが、「もっとゲームの種類がほしい」「デザインを工夫してほしい」「夜でも見やすくしてほしい」などの意見があがったという。

他者とのつながりの中で、自分の価値と役割を見つけてほしい

永野氏は課題研究発表会の活動全体を振り返り、「最初から最後まで、なんのために課題研究に取り組むのか、生徒たちに問いかけ続けることを大切にしています」と語る。生徒たちはどうしても、プログラミングや3Dプリンタの操作など目先のやるべきことや、作業をこなす方に集中してしまい、自分たちが考えたソリューションを使う相手は誰なのか、その対象者の存在を忘れてしまうことがあるというのだ。

 

しかし、テクノロジーやツールは本来、独りよがりの世界で使うものではなく、なにかを表現したり、なにかを課題解決したりなど、世の中を一歩でも前進させるために活かすものだ。伝える相手によってツールを選んだり、使う人によってUIを変えたりと、相手を意識しているかどうかが、その人の社会的価値をも高める。高校生は学校が中心で、教員や友達など限られたコミュニティーの中にいるが、そんな環境下でも他者とのつながりの大切さを実感できる場をつくるためには、課題解決型の学習は欠かせない。この学習活動を通して、「自分にできること、みんなと協力してできること、社会に対してできることを見つけてほしい」と永野氏は語る。

発表するだけでなく、発表後生徒一人ひとりが卒業論文を書く。論文まで書き終えることが最終的なゴールなのだ

“つながりの中で、自分の価値や役割を見つけてほしい”という情報コミュニケーション科設立の時に秘められた永野氏の思いがまさにここにあるのだ。

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