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クラウド、SNS、プログラミング、袖ヶ浦高校の多様なIT活用の中身と、それを支えるネットワーク_千葉県立袖ヶ浦高等学校【中編】

2017年03月31日 記事

2011年にBYODを実施してから6年が過ぎた袖ヶ浦高校・情報コミュニケーション科。同校では授業内におけるICT活用はもちろん、生徒たちに自由度の高い使い方を認めることで、他の教育機関には見られない先進事例を多く築いてきた。教育用SNSやクラウドサービスも早くから導入し、学習用途として活用しながら新しいコミュニケーションやコラボレーションの形に挑戦。そんな同校ではネットワーク環境も独自のシステムを築いていた。

千葉県立袖ヶ浦高等学校
千葉県立袖ヶ浦高等学校

iPadで完結する授業がゴールではない

千葉県立袖ヶ浦高等学校・情報コミュニケーション科(以下、袖ヶ浦高校)は2011年にiPadを導入しBYODを実施した。実際に授業ではどのようにiPadを活用しているのだろうか。

 

具体的なiPad活用範囲については、6年の経験と知見が活かされており非常に幅広い。Apple TVを活用した教材提示、教師が作成する自作動画教材、動画や写真などを活用したプレゼンテーションやデジタルレポートの作成・発表、教育用SNSを用いた意見交換や情報共有、クラウドサービスを利用したデータ管理やデジタルノートテイキング、授業支援システムによる教材配付、クイズの出題、アンケート集計などなど、さまざまな用途に広がっている。

 

新しい取り組みとしては、プログラミング学習の際にデジタル教材配信・管理サービス「iTunes U」を生徒との学習記録のやりとりに活用している点が興味深い。プログラミングの授業は一斉授業とは異なり、生徒一人ひとりが作品をつくるため、それぞれの進捗状況や質問内容も異なるのが特徴だ。

 

そのため授業中に教師ひとりで生徒からの質問に対応するのは時間的に厳しいが、永野氏はiTunes Uの「ディスカッション」機能を用いて、その日の進捗状況や質問を生徒から報告してもらうことでこの課題をカバーしているという。「ディスカッション機能を使えば一対一の対話が可能であるうえ、具体的なプログラムの動きについても生徒が実行画面を動画に記録して質問できるので、生徒の状況把握と各自に細かなアドバイスができるのがメリットです」と永野氏は語る。

画像出典:http://www.apple.com/jp/education/ipad/itunes-u/
画像出典:http://www.apple.com/jp/education/ipad/itunes-u/

このように多様な形でiPadを活用する袖ヶ浦高校であるが、だからといってiPadばかりを使っているわけではない。コンピュータを利用する授業もあれば、デバイスを一切使わずに進める授業もあるという。これについて永野氏は、「教科書やノートをなくしてiPadだけで完結するような授業を目指しているわけではありません。生徒には学ぶ内容やTPOなど、その時の状況に合わせて適切なツールや使い方を考えてほしいと思っていて、そうした気づきが得られる学びをつくることを大切にしています」と語る。

 

BYODの実施から6年が過ぎた袖ヶ浦高校。常に新しいICT活用を試行錯誤しつつも、ICTを活用する原点は忘れない、そんな姿勢が見られる。

生徒の変化と成長

iPadをはじめ、さまざまなデバイスやITサービスを活用する情報コミュニケーション科の生徒たち。このような学びを受けた生徒たちは、高校三年間でどのような変容を見せるのだろうか。

 

これについて永野氏は「全体的な傾向として1年生から3年生にかけて、“対話力”や“伝える力”が伸びていると感じます。3年生になって進学や就職のための面接練習の機会も増えますが、“情報コミュニケーション科の生徒は、自分の考えをしっかり話せている“と評価してもらうことが多いですね」と語る。同科では特にコミュニケーション能力の育成に力を入れており、1年生の頃から作文やレポート、プレゼンテーションなどの言語活動を多く取り入れている背景がある。ICTの活用にこだわらず、長い時間をかけて、自分の考えを話す・伝える訓練を行っているというわけだ。

 

一方で永野氏は、ICTを活用した授業では教師が予想もしない生徒の一面を見ることが多いと話す。一例として、ある国語の授業を挙げた。自作した短歌とそれに合うイメージを組み合わせて発表する授業において、多くの生徒が著作権フリーのサイトに掲載されているイメージを使用するなか、ある女子生徒は自分の使いたいイラストの作者に連絡を取り、授業での二次利用の許諾をもらったという。永野氏は「このような行動こそ、生徒が主体的に考えて課題解決をした理想の例で、情報コミュニケーション科が目指す学びの形です」と語る。

 

ちなみに情報コミュニケーション科におけるiPad活用は、普通科にも影響を与え始めている。袖ヶ浦高校の普通科は現在、iPadの導入やBYODを実施していないが、「ほぼ100%の生徒がスマートフォンを持っている状態」(永野氏)だという。この環境を活かして、生徒が授業中にスマートフォンを使って調べ学習をしたり、簡単なプレゼンテーションスライドを作成して電子黒板で発表するような活動も見られるというのだ。ICTを活用すれば生徒がより主体的に学習できることを、この6年間で多くの教員間に共有されたといえる。

袖ヶ浦高校のICT活用を支えるネットワーク環境

袖ヶ浦高校のこうしたICT活用を支えるネットワーク環境においても触れておこう。同校では有害サイトへのアクセス制限など最低限の規制は設けているものの、生徒たちは比較的iPadを自由に使うことができる環境にある。アプリのダウンロードも自由であり、休み時間の利用についても制限されているわけではない。こうした環境で使うからこそ、ICTを柔軟に活用する発想が生まれているともいえる。

 

基本的に千葉県の公立高校は、全ての学校に2種類のネットワークが整備されている。ひとつが生徒の成績処理や個人情報を管理するための「校務用ネットワーク」で、物理的に独立した完全クローズドなネットワークになる。もうひとつが「学習者用ネットワーク」で、コンピュータ教室や普通教室から校内LANを経てインターネットにアクセスが可能だ。学習者用ネットワークに関しては、千葉県で決められたフィルタリングで規制されている。

 

袖ヶ浦高校では、「校務用ネットワーク」と「学習者用ネットワーク」の2つに加えて、さらに情報コミュニケーション科の生徒と教職員が使用するための「iPad専用ネットワーク」を整備した。というのも、「学習者用ネットワーク」ではセキュリティが厳しいため、使用できないアプリが多かったからだ。

※出典:千葉県立袖ヶ浦高等学校
※出典:千葉県立袖ヶ浦高等学校

「iPad専用ネットワーク」には、校内のルーターにフィルタリングシステムが追加できるトレンドマイクロ社のウェブセキュリティーを導入した。以前はプロバイダーのフィルタリングサービスを使用していたが、それでは小学校から高校まで同じレベルで一律にフィルタリングが適用されてしまうという。袖ヶ浦高校の場合は、一般の教育機関では利用制限の対象になるSNSや動画サイトも学習用途として活用するため、独自のフィルタリングを構築する必要があるというのだ。生徒の自由度の高いICT活用を支えているのは、こうしたインフラ整備によるものだといえるだろう。こうした取り組みで生徒たちはどのように成長していくのか。その成果の発表を後編では紹介したい。

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