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一人1台のタブレット整備前に考えたい、教員用タブレットの重要性_柏市立柏第二小学校【前編】

2017年03月22日 記事

子どもがタブレットを授業で使う前に、まずは教師自身が使えなければならない。そう考える教育機関は多い。しかし、実際は学習者用と教師用のタブレットは同時期に整備されることが多く、教師が十分な準備期間を持てないままタブレット活用がスタートしている。こうした状況を避けるためにも、教師がいつでも使える教員用タブレットを整備するのはひとつの解だろう。教員用タブレットの有効性について実証研究を実施した柏市立柏第二小学校の事例を見てみよう(前編)。

タブレットを使いたい意欲はあるが、ためらいも多い現場感

公立の小中学校におけるタブレット導入で、もっとも多いパターンはコンピュータ教室のPC(パソコン)とタブレット端末を置き換えるケースだろう。児童生徒用に40台、教師用に1台という形で整備され、コンピュータ教室と普通教室、そのどちらでも学校共有で使えるような青写真が描かれて導入される。

 

しかし、「その環境だけではタブレットを活かせない」と話すのは、千葉県の柏市立柏第二小学校 西田光昭校長だ。普通教室でタブレットを使うためには、プロジェクタやデジタルコンテンツなど、タブレットを使うための環境が整備されていることが重要だ。柏市の場合は、平成24年度より市内の小中学校すべての普通教室に対して、電子黒板の機能を内蔵したプロジェクタの常設化を進めており、普通教室で“いつでもICTが活用できる”環境構築を目指してきた。そうした動きのなかで、柏第二小学校にもタブレットが40台整備されたという。

※資料提供:柏市立柏第二小学校
※資料提供:柏市立柏第二小学校

「タブレットが40台整備されたときは、すでに普通教室でICT機器の常設化が完成していたので、教室での実物投影機やPCを使っての提示はかなり行われるようになりましたが、当初、タブレットの利用はあまりありませんでした」と西田校長は振り返る。ほかにも、同校はiPadを8台導入しており、普通教室における利用は高かったと話す。ただし、校内にはWi-Fi環境が整備されていなかったためネットワークが課題であった。教員がAP(アクセスポイント)を持ち運びして使えるような形を整備することで、普通教室でのタブレット活用を実現していた。

 

とはいえ、普通教室へタブレットを持ち出して使う教員はいたものの、実際の授業ではまだまだその活用に戸惑いが見られたと西田校長は語る。そもそもタブレットは学校共有のため教員一人が使える時間も限られていたり、その一方で、子どもは教員の予想以上にタブレットに慣れるのが早かった。この様子を見て西田校長は、「授業のなかで教員がタブレットに戸惑い、引き気味になってしまう部分をなんとかしたいと思いました。もっと教員が自信を持ってタブレットを使える環境が必要だと考えたのです」と語る。このような課題解決に向けて、柏第二小学校は「教員用タブレット」の有効性を探る実証研究に乗り出したのだ。

※資料提供:柏市立柏第二小学校
※資料提供:柏市立柏第二小学校

教員用タブレットとして、WindowsのLTEタブレットを整備

「教員用タブレット」の実証研究は、柏第二小学校の全担任教員に対して平成27年10月から29年3月の1年半で実施されている。この取り組みでは、教員がタブレット端末を日常的に活用することを通して、校務と学習指導におけるICT活用に教員が馴染み、児童の学習活動に違和感なく活かせる体制を築くことがねらいだ。

 

教員用タブレットとして配備されたのは、LTEモデルの東芝Windowsタブレット「dynabook Tab S80」で、計28台導入された。またSIMカードは日本通信株式会社の回線を借り受け、ダイワボウ情報システムが提供する「DIS mobile powered by JCI」を選択。この取り組みでは教員用タブレットの有効性を探るとともに、LTE端末の教育的利用の可能性にも研究範囲を広げる。「今まで使っていたパソコンがすべてWindowsだったのと、すでに校務用パソコンで教材づくりをしている教員も多くいたので、教員用タブレットにはWindowsが望ましいと考えました」と西田校長は語る。

 

実証研究の実施にあたり、教員側からも要望があがった。ひとつは「Microsoft Officeを使いたい」ということだ。柏第二小学校の教員たちは、これまでもPowerPointとWordの利用率が高く、教員用タブレットからもそれらのデータをプロジェクタで映写したいリクエストが寄せられた。そこで「Office 365」を導入し、教員一人ひとりにアカウントを配付して整備した。

 

もうひとつの要望としてあがったのが、「紛失や盗難などのトラブルが心配」という声だ。この実証研究では、教員用タブレットを学校だけでなく、教員の自宅に持ち帰って使うことも想定していたため、何らかのトラブルに巻き込まれることを教員たちは不安視していた。これについては、「LanScope Cat」(エムオーテックス)のMDMを導入し対応した。起動時にパスワードを入れるシステムで3回間違えると使用できないなど、万が一のトラブルに対して、教員が安心してタブレットを使える環境を整備した。

東芝Windowsタブレット「dynabook Tab S80」
東芝Windowsタブレット「dynabook Tab S80」

全教員がICT活用に慣れるため、授業で使えるパターンを確立

教員用タブレットを導入した柏第二小学校であるが、すべての教員がより日常的に活用できるよう、ICT活用をパターン化することに重きを置いた。“教員にタブレットを渡して終わり”ではなく、いかに運用できるかは現場の課題だ。

 

教員用タブレットを含むICT全般の活用についてもっとも重要視したことは、従来の授業スタイルを変えない方法でICTを活用することだった。柏第二小学校では、これまでにも電子黒板機能を内蔵したプロジェクタを利用し、デジタル教科書やフラッシュ教材の利用率も高く、まったくゼロからICT活用をスタートさせるわけではなかったからだ。西田校長は「これまでやってきた授業スタイルの良さを壊さず、アナログとデジタルが共存できる環境づくりに注意しました」と振り返る。

 

そうした背景を踏まえ、柏第二小学校では算数の時間におけるICT活用のパターン化を目指した。具体的には、デジタル教科書を使う前提で、「問題把握」「自力(個別)解決」「話し合い」「発表する」といった学習場面でICTを活用するものだ。この方法なら全学年を通して、どの教員もICTを使う場面が明確になる。結果として、「教師間のコミュニケーションが増え、授業づくりの話が増えた」と西田校長は語る。

※資料提供:柏市立柏第二小学校
※資料提供:柏市立柏第二小学校

教員用タブレットを導入してからは、日々のタブレット活用時間が増え、教員自身も慣れたことで、「授業で児童がタブレットを使うときでも、物怖じせずに活用できるようになってきた」と西田校長は語る。以前は、校務用PCを普通教室に持ち込んで授業をする教員もいたが、タブレットは操作性が優れており、教員がPC操作に付きっきりにならず教室内を自由に歩き回ることができるのがメリットだという。現在は普通教室用に別途48台のタブレットの貸し出しを受けており、教室での利用はますます日常化している。

 

後半では、さらに教員用タブレットの具体的な活用事例について見ていこう。

柏市立柏第二小学校 校長 西田光昭氏
柏市立柏第二小学校 校長 西田光昭氏

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