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レゴ社のロボットキット、マインドストームが教育現場で注目される理由とは?【後編】

2017年01月13日 記事

教育現場への教育版レゴ®マインドストーム導入でどんな効果があったのか - 相模原市立小山中学校

プログラミング教材として世界で圧倒的なシェアを誇る教育版レゴ®マインドストーム(以下、マインドストーム)。国内では正規販売代理店として株式会社アフレル(以下 アフレル)が販売を行っており、導入する学校も着実に増えつつある。もっとも、そう簡単に全国の学校に行き渡るわけではない。予算の問題はもちろん、マインドストームを教える側である教師自身をどう育成するのかなど、課題はまだまだ多い。そんな中、マインドストームをいち早く導入し、活用を進めている自治体が神奈川県相模原市だ。相模原市立小山中学校の佐藤修校長になぜマインドストームを導入することにしたのか、どんな成果が出ているのか、話を伺った。

備品用の予算と教材費でマインドストームを購入

現在、相模原市立小山中学校の校長を務める佐藤修先生がマインドストームに出会ったのは8年前。まだ他校で教科を受け持っていたときのことだった。いろいろな人からマインドストームの話を耳にした佐藤校長は、「これを使って授業をやってみたい」と思いたち、当時在籍していた相模原市立相原中学校への導入を検討することにした。

 

最初の壁となったのは予算だった。マインドストームは当時の価格で1台約4万円。だが、学校で教材にかけられる予算は年間に40万円しかなかった。

 

「だからといって、マインドストームを少しだけ入れても仕方ない。生徒2人につき1台を目標にしていたので、20台入れたいと考えました。」

 

そこで佐藤校長はまず、学校の予算でマインドストームを10台購入することを申請。その代わり、それ以外の備品は一切買わないという理由で購入許可を取り付けた。

 

残りの10台は保護者へ事情を説明し、教材費として集金した。当時、佐藤校長が受け持っていた技術科では、もともと生徒が製作物をつくるための材料を購入する費用を保護者から集めており、これをマインドストームの予算にあてたわけだ。

 

しかし、保護者が教材費を出すのは、「技術科でつくるものは最終的に生徒が家に持って帰ってくる。」という前提がある。

 

マインドストームのように持ち帰ることができないものを購入するために集金するのは、大変だったのではないだろうか。

 

「マインドストームを使って、こういう授業をすると、こういう力が身につきますということを、シラバスに記載。題材ごとに授業前に保護者の方に説明して納得していただきました。」

マインドストームの導入で生徒に明確な変化が起きた

無事、20台のマインドストームを導入することに成功した佐藤校長だが、そもそもなぜそこまでマインドストームに惚れ込んだのか。

 

「マインドストームには正解がありません。何かものをつくって完成したら終わりというのではなく、できあがった後も常により良いものを目指して試行錯誤します。そこに学びがあるのです。また、自分だけの考えではなく、チームで考えることにより、コミュニケーション力も磨かれます。」

 

実際に導入してみると、思った以上の成果が得られたという。

 

「目に見える効果として、それまで授業では寝ていたような生徒の顔が上がりました。授業に遅れてきていた生徒も遅刻しなくなり、もう時間だから終わりと言っても夢中になってマインドストームを触っている。常に自発的に学習するようになったのです。」

 

いままでの教育にないものを導入しチャレンジを続ける。その背景には佐藤校長の強い想いがあった。

 

変化の激しい社会に生きていく子どもたちのために、これからの学習があります。そのための思考力・判断力・表現力等の育成が必要です。主体的・対話的で深い学び(アクティブ・ラーニング)がマインドストームで可能となるのです。」

相模原市立小山中学校 校長 佐藤 修 氏
相模原市立小山中学校 校長 佐藤 修 氏

重要なのは「課題の与え方」

マインドストームで生徒の変化を実感したという佐藤校長。しかし、単にマインドストームを与えておけばいいというわけではない。重要なのは「課題の与え方」だという。

 

「今までの技術科の授業では、生徒全員に「本立て」「飾り棚」などを製作しなさいというように同じ課題を与えていましたが、『身の回りを整理整頓する収納物をつくりましょう』のように、生徒に考えさせるような課題を与えることが大事です」

 

たとえば、マインドストームの初歩的な課題として「カラーセンサーを使ってライントレースする」というものがあるが、それをそのままやらせるのではなく、「相模原市で震災が起きた場合のライフラインを確保せよ」というように設定を工夫してやるだけで生徒の熱中度が変わってくるのだ。

 

ユニークな例として佐藤校長が挙げるのは、相模原市立上溝中学校でのマインドストームの授業である。JAXAが近いこともあり、「月面基地からローバーを走らせる」や「宇宙ローバーを制御せよ」といった課題が出されているという。

 

 

授業風景。模型とレゴマインドストーンを組み合わせ、月の表面をイメージしながらプログラミングを行った
授業風景。模型とレゴマインドストーンを組み合わせ、月の表面をイメージしながらプログラミングを行った

教材として大きな成果を上げているマインドストームだが、予算以外にもまだ課題は多い。その一つが授業時間の問題だ。現状ではマインドストームを使った授業は技術科の扱いとなるが、中学校における技術の授業は1年間で合計17.5時間しかとれず、そのうちマインドストームを使った授業ができるのはせいぜい10時間程度。「もう少し時間がとれないとマインドストームの効果を100%出しきれない」と佐藤校長は頭を悩ませる。

変化の激しい時代に求められる教材とは

公立の学校にマインドストームのようなIT教材が普及するにはまだ時間がかかりそうだが、教育の未来には絶対に必要なものだと佐藤校長は断言する。

 

「現代は変化の激しい時代で、今ある職業が将来まで存在しているかわかりません。そうした状況で生徒に身に付けさせるべきは"考える力"です。また、時代と共に求められるスキルも変わります。これまでプログラミングといえばコードを書くことでしたが、今のコンピュータは中身がブラックボックスになっていますし、コードとなると生徒の好き嫌いも出てきます。「プログラミングを学ぶ」のではなく、「プログラミングで学ぶ」(目的や条件に応じた動作を最適にさせる命令をどう組み合わせていくかを考える)べきだと私は思います。」

 

10年前にはまったく普及していなかったスマートフォンが現代人の必須アイテムになっていることを思うと、10年後に何が普及しているかは想像もつかない。そうした時代に学ぶべきは何か。その答えの一端を担っているのが、マインドストームなのかもしれない。

関連リンク

株式会社アフレル

教育版レゴ® マインドストーム® EV3の販売代理店、株式会社アフレル様のホームページです

教育版レゴ® マインドストーム® EV3製品紹介ページ

教育版レゴ® マインドストーム® EV3の製品紹介ページです

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