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教育の在り方を丸ごと考えた、大阪府河内長野市 私立清教学園の学習環境整備【後編】

2016年11月17日 記事

大阪府河内長野市にある清教学園は、来年度より私物端末使用で生徒1人1台のネットワーク端末導入を予定している。前編ではその経緯や導入のための課題解決について、同校理事・総合企画部長の小林直行氏、法人事務局 ICTコーディネータ高橋安史氏にお話をうかがった。

後編では、教育の形が大きく変わりつつある現在、ICTを含めた学習環境の整備をどのように行っているのか、その取り組みを聞いた。

(左から)私立清教学園 高橋 安史 氏、小林 直行 氏
(左から)私立清教学園 高橋 安史 氏、小林 直行 氏

学ぶ姿勢に応える学習環境

 取材のために同校を訪れた際、最初に案内されたのが数日後のオープンを控えたラーニング・コモンズだ。

取材時、まだ完成はしていなかったが机や椅子などにもこだわりを感じられる教室につくられていた

もともと3つの教室だったものをひとつにつなげて改装した広い部屋で、壁面に設置された幅7.2mものスライドレール「AOI-SPCM」とウルトラワイド超短焦点プロジェクタ「ワイード」の組み合わせがひときわ目を引く。可動式テーブルと椅子、カーテン、スライドパーティションを使ってフレキシブルなレイアウトが可能だ。壁際の保管庫には計200台のChromebookが用意されており、生徒ができるだけ手軽に使えるよう運用方法を検討中だという。

 

ラーニング・コモンズは生徒の自主的な学習や研究会・発表などの場として、大学を中心に導入が進んでいる施設。同校では授業時間外に生徒の自習の場として解放されるだけでなく、授業でも使われる予定だ。

 

ディベートで使いたいという先生もいらっしゃいます。二手に分かれた時に近すぎるとお互いの話が聞こえてしまい、教室を分けると一人では手が足りない。ここなら広さがあるので一部屋で距離を置いて相談ができます」(高橋氏)

一般教室では、中学は全教室に大型の電子黒板を設置。高校にも電子黒板機能付きのプロジェクタが設置されているが、最近は手持ちのタブレットを投影する先生も多いそうだ。またチョークで書く伝統的な黒板の良さも好まれる傾向があり、昨年それをより幅の広いものに更新したという。

 

前編で紹介した私物端末使用導入へ向けた取り組みや、教職員へのPC・タブレット支給なども含め、充実した環境が日々の教育に根付いて活用されている様子がうかがえる。特にICT機器は「無理強いすると失敗する」(高橋氏)と強要はしないが、自然に価値が理解され定着するようになるという。

 

「道具ですから、手札は多い方がいい。使わなければいけないものではありませんが、使って何かが良くなるならどんどん使って欲しいと思います」(高橋氏)

ラーニング・コモンズには導入したばかりのChromebookも。生徒全員がGoogle アカウントを持っているので効率的に学習を進めることができる

先生の在り方が変わっている

 教育の形が変わりつつある現在、必然的に学習教育環境も変化に対応したものであることが望まれる。それは施設設備やICT環境といったハード面だけに限った話ではない。同校ではこの8月、21世紀型スキルを育成する「学習者中心の学びの実現」をテーマにDISが提供する「教員向け研修サービス」http://sip.dis-ex.jp/news.html?id=65)でセミナーを開催した。

 

「近代まで"先生"といわれるのは情報的に優位な人であって、情報を授けることが教えることでした。昭和になってもその名残がありましたが、現在は打って変わって、情報格差で先生が優位に立てる時代はとうに終わっていると言えます。そうなった時、先生の役割とは何でしょうか。生徒たちが自ら動機を持って課題を見つけ、それを解決していく行動をファシリテートする人に変わってきているんです」(小林氏)

 

教育の目的そのものが変われば、身につけるべき内容もその方法も変わる。では具体的にどんな授業作りをすればいいのか、それを学ぶことがこのセミナーの目的だ。夏休み中で部活動の合宿や試合のため出席できない先生も多かったが、できれば計画的に全員を対象に実施したいと小林氏は考えている。

 

「21世紀型スキル」や「アクティブ・ラーニング」など、言葉だけがお題目として一人歩きをしがちだが、「"教える"から"学ぶ"というイメージに転換していきたい、という考えが根本にあると思う」と小林氏は語る。「ゆとり」「生きる力」など様々な言葉が出ては入れ替わる中でも、その本質にある"人を育てる"ことの大切さを追求してきた姿勢が感じられる。

新しい学習環境の中のICT

 新しい教育の形の中で、生徒は座って教えを受け取るのではなく自ら取りに行くことが「学び」の当たり前の姿になる。これに対して先生には主体的な学びをサポートする役割が求められる。そこには、情報やコミュニケーションを効率化・円滑化するための道具と環境が必要となる。これが小林氏らが考える「学習環境整備」だという。

 

「ICTは特別なものではありません。文字通りテクノロジーですから、情報やコミュニケーションを効率化・円滑化するための、人間の外側にあるものです。ナレッジやスキルは人が身につけるものですが、インフォメーションやテクノロジーは人の外側にあって、どんどん更新されて行くものです」(小林氏)

 

1人1台の環境を間もなく実現しようという同校だが、決して前のめりに進めているわけではない。将来を生きる生徒たちに必要な力は何か。それを支える教職員であり、学習環境であり、そのひとつとしてのICTである、という考えのもと、必要となるものを考え、取り組みが進められている。小林氏は最後にこう締めくくった。

 

「私たちの気付いていない部分がたくさんあり、先生方からこんなことができないかといろいろな注文をもらいます。そうやってICTのおいしいところを上手に取って、活用してほしいと思います」(小林氏)

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