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教育の在り方を丸ごと考えた、大阪府河内長野市 私立清教学園の学習環境整備【前編】

2016年11月11日 記事

2020年へ向けた「教育の情報化ビジョン」推進に関連し、プログラミング教育の必修化やデジタル教科書の導入など、その内容について具体的な方針が打ち出されている。待ったなしの状況に限られたリソースで対応を迫られる中、現実的な対応策の一つとして注目されているのが私物端末使用だ。しかし、混在環境でのデバイス管理やセキュリティ対策など、実現までの課題は多い。

大阪府河内長野市にある中高一貫の私立清教学園は、来年度より私物端末使用で1人1台ネットワーク端末を導入する方針を決めた。なぜこの方法を選び、どのように課題解決を図るのか、同校理事・総合企画部長の小林直行氏、法人事務局 ICTコーディネータ高橋安史氏にお話をうかがった。

時間をかけたICT推進

 同校は1997年、最初のPCルームを設置した。その管理者に任命されたのが、当時同校の数学教諭であった小林氏だった。独学でプログラミングやネットワークなどを勉強し、学校で教務にも活かしていたことが評価されてのことだったが、ふたを開けてみれば非常に難解で非効率な設計になっており、小林氏自身がUNIXサーバを用いネットワークを再構築するところから始まったという。

学校法人 清教学園 理事・総合企画部長     小林 直行氏
学校法人 清教学園 理事・総合企画部長     小林 直行氏

その後、99年には校内のICT専従となり、新校舎建設に伴い新たに情報科室を設ける際には設計段階から任されることになった。

これを機に、いくつもの学校を見学しながらICT活用の形を勉強するようになったと小林氏は語る。

「ある学校で、ノートPCを導入することで、使用しない時は収納して教室を多目的に使えるスタイルを見せてもらい、これだと思ってノートに切り替えました。本校で本格的にICT環境が活用され始めたのはここからです」(小林氏)

一方、インフラ面ではまず小林氏が自力でUNIXサーバを構築し、サーバ室から校内教員室までの全てのデスクにLANケーブルを敷設。2006年に初めて業者発注工事で全教室にLANコンセントを整備し、2008年にはWindowsサーバを導入、2014年には校内全館へのWi-Fi環境を構築と、段階的に整備が進められた。

 

現在は情報科教室を含め3つの教室に合計150台のノートPCを配置。2012年には情報科教室にタブレット50台も導入された。タブレット単体で使用するだけでなく、PCで作業をしながら調べ物をしたり、ソフトウェアのマニュアルや教材を閲覧する、といった併用にも活用されている。

 

また、教職員へは2004年より1人1台のPCが貸与され、2013年には教務システムを導入。現在はこれに加えてタブレットも貸与され、PCルームの端末入れ替えで出た“お下がり”も併用している人もいるそうだ。

 

「学校では教職員が生徒に指導をしますので、手順としては教職員の環境を先に整備し、使いこなせるようになってきたところで生徒にも広げていきます。ここ20年、こうして時間をかけてやってきたことが本校の特色だと思います」(小林氏)

私物端末使用の実現へ向けて

 同校が次に目指したのは、「1人1台」を私物端末使用で実現することだ。

 

ネットワーク端末は"文房具"であるという考え方から、配布ではなく私物の端末持ち込みという形にこだわりました。学校を卒業したら使わなくなるのではなく、ますます必要になるモノですから。ネットワークを正しく利用できるユーザーを育てることも教育のひとつと考えています」(小林氏)

 

学校指定の端末を配布すれば、充電環境の整備やメンテナンス対応など現実的な問題ものしかかる。統一環境でないことに不安の声も上がったが、「そこは引かずに」(小林氏)十分な情報収集と調査の上で確信を持って提案し、理解を求めたという。

 

技術面でいえば、私物端末使用でもMDM(Mobile Device Management)ソフトを使用しほぼ統一環境と同じように管理が可能だ。

学校法人 清教学園 法人事務局            ICTコーディネータ 高橋 安史氏
学校法人 清教学園 法人事務局            ICTコーディネータ 高橋 安史氏

同校では米VMware社が提供する「AirWatch」「MobiConnect」を併用している。

AirWatchの選択理由としてマルチOSを同時に管理でき、かつ各デバイスがどのOSであっても使用できる柔軟なライセンス形態が一つあげられると高橋氏は話す。

MobiConnectについては情報科教室のタブレット管理などに使用し、OSが固定された環境へはより低コストに使いわけている。コストだけでなく、細かな要望にフットワークよく対応してくれるなど、国内ベンダーの良さもあるというのが高橋氏の評価だ。

機器導入の先にある目的へ

 同校では授業にeポートフォリオを導入している。これは生徒の学習履歴や成果物の蓄積・整理、自己評価やルーブリック登録による観点別評価など、学習記録を総合的にサポートするシステムだ。同校では平成25年度より2年間、文部科学省の「多様な学習成果の評価手法に関する調査研究」の研究団体に採択され、開発会社と共同でシステムの開発に参加した経緯がある。

生徒画面。自分が提出した成果物の評価やまだ提出していない課題などを閲覧することができる

教員画面。週ごとに成果蓄積のグラフなども教師画面では閲覧可能
教員画面。週ごとに成果蓄積のグラフなども教師画面では閲覧可能

 現在は校内のPCやタブレットから使用しているが、これを本当の意味で活用するには1人1台端末を持つ環境が望ましい。

 

「これを使うことを目的に1人1台の端末導入を目指し、そのためにWi-Fi環境を整備し、という形で時間をかけて計画的に進めてきました」

 

だが、それが実現すれば完成というわけではない。eポートフォリオの補助になるLMS(学習進捗管理)や、コミュニケーションのためにセキュアなSNSも必要だと両氏は語る。

生徒の将来にどんな力が必要なのか、それを身につけるために何を用意すべきか、先を見据えた視点でICTの環境整備と活用が行われている。

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