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子どもが頑張れる環境を - 継続できるメソッドを提供する『つながるドリル』

2016年07月25日 記事

FLENS株式会社 代表取締役 大生 隆洋氏
FLENS株式会社 代表取締役 大生 隆洋氏

 これまで何度声をかけても騒がしかった子どもたちが、タブレットの「3・2・1・スタート」の合図で一斉に集中してタブレットに向かい計算問題を始めた。それを見た担任の先生が驚きの声を上げたそうだ。タブレット教材『つながるドリル』を提供するFLENS株式会社 代表取締役 大生隆洋(おおばえたかひろ)氏は、その反応に手応えを感じたという。

 

『つながるドリル』は、手書き文字認識や自動採点、ネットワークでつながるなど、タブレットの特性を活かした学習システムだ。例えば、クラス全員のタブレットを同期して進行する「みんなでモード」では、3分間の演習と3分間の結果確認・解き直しを繰り返すことで短時間に集中して学習ができる。スムーズに手書きできるため操作が学習の妨げにならず、演習後にはすぐに採点結果が出るため子どものやる気にもつながる。

 

だがそうした個々の機能はこの教材の本質を説明するものではない。最も大きな特徴は、学習へのモチベーションを引き上げ、継続させる教材であるということだ。そこにはどんな狙いがあるのか、大生氏にお話を聞いた。

課題解決の可能性をタブレットに見いだして

 大生氏がデジタル教材の開発に取り組み始めたのは、氏が大手学習塾で経営企画に携わっていた2010年。学習指導要綱の改定に合わせ、それまでに蓄積した膨大な教材をICTを活用したものに作り変えようと考えていたタイミングで、AppleからiPadが発売された。

FLENS 株式会社 代表取締役 大生 隆洋氏
FLENS 株式会社 代表取締役 大生 隆洋氏

「当初、タブレットは動画や写真を閲覧するデバイスという受け止め方が中心でしたが、教育現場であれば、それならプロジェクターでもパソコンでもできます。しかし、私はタブレットは入力デバイスであると考えました。キーボードではなくペンで直接書き込めることが、小中学校の教育現場における課題解決に大きな可能性を持つと感じたのです」(大生氏)

先生方が授業以外での児童・保護者への対応や事務作業に追われ、子どもの頑張りに気付いたり、躓いているところを助けたり、新しい興味への取り組みをサポートするなど、本来求められる教育者としての役割を十分に果たせない状況が常態化していることが、現場の抱える課題の一つ。

子どもにとってモチベーションの上がらない反復練習や、先生にとっても時間と労力の必要な宿題の管理や反復学習の管理といった部分をタブレット教材がサポートしたり、テスト用紙の準備や採点といった作業をシステム化できれば、その負担軽減に寄与できる。

 

大生氏は子どもの学力が伸びやすい環境づくりにも注目した。教室という限定された関係の中で、子どもは先生以上に同じ子ども同士から大きな影響を受けて成長する。遊び方や人間関係もそうだが、学習においても「あの子に追いつきたい、自分も負けたくない」といった憧れや競争心がモチベーションになる。大生氏は学習塾で壁に張り出されたテストの結果をじっと見つめる子どもたちの姿から、それを実感したという。

 

また、クラスに活気のある子が数名いるだけで雰囲気が良くなり、他の子どもたちもそれにつられて学習が進むようになることも経験した。それが難しい環境にある学級や、少人数の学校でも、他の学級や地域・全国の学校とつながることができれば、オープンに切磋琢磨できる学びの場にいつでも参加することが可能になる。大生氏はこうした着想を基に教材の開発を進め、何度かのトライアルを経て2012年にFLENS株式会社を設立。教材の販売を開始した。

アプリトップ画面
アプリトップ画面
「ひとりでモード」と「みんなでモード」  
「ひとりでモード」と「みんなでモード」  

子どもが学び、先生が輝ける場に

 これらの考えを教材の中で実現していくにあたり、大生氏が最も大切にしたのは「先生が輝ける仕組みにする」ということだ。先に述べた反復練習や基礎の向上がある程度システムを活用して行われることにより、先生は本当に教えたい部分に集中して授業を行うことが可能になる。一方で、子どもが分からなかった問題について説明し教えることはシステム上で行わず、先生の領域として残しておくのだという。

 

「動画などを使ってシステム上に解説を入れることも技術的には可能ですが、そこは先生がやりたい部分なのであえて踏み込みません。一方でシステム化したほうが効果的な部分もあるので、その線引きが難しいのです。生徒の気持ち、先生の気持ちの両方に着地させるバランスが、『つながるドリル』の鍵だと考えています」(大生氏)

 

先生に教えてもらうところまでを学習の過程として子どもの体験に組み込む。大生氏自身が先生として教壇に立った経験に加え、塾経営で培われた先生の魅力を最大化するという視点があってこそ考え出された価値観だと言えるだろう。

"つながる"機能のほんとうの意味

 『つながるドリル』の「みんなでモード」では、自分と同じ習熟度のライバル10名と対戦形式で学習し、ドリルが終わるとすぐに採点が集計され、順位などの結果が表示される。これは今の学校現場には馴染みにくいのではないかと考える人もいるだろう。実際に、教員向けに行った教材の研修において明確な反対意見が上がる自治体もあったという。順位付けがいじめにつながっては困るなどの懸念から、ある学校ではドリルとして使いながらも順位は見ない・言わないという"お約束"で運用が開始された。

 

ところが半年後には、その学校でも本来の機能を積極的に活用するようになった。運用する中で順位が元で問題が起きる様子はないことが分かり、何より子どもたちが嬉しそうで学習に活気が出るという理由からだった。

 

「子どもにとって、ちょっとしたゲーム要素が加わればゴミ拾いだって遊びになります。教育現場ではそれを経験的に分かっているものの、こと勉強になると過度に競争を避ける傾向があります。しかし、適切に運用すれば子どもの意欲を引き出すきっかけになり、学級運営の効率化にもつながるはずです」(大生氏)

 

かつての極端な偏差値教育の反省から、逆に極端に競争を避ける方向に振れてしまった現在。大生氏は『つながるドリル』を足がかりに、それを子どもたちにとって適切な形に少しずつ戻していきたいのだと述べた。

ドリル学習中の画面
ドリル学習中の画面
ドリル終了後すぐに採点が行われ結果が表示される
ドリル終了後すぐに採点が行われ結果が表示される

教材の機能でなく、メソッドが学力を高める

 ここまで語ってきた大生氏だが、「タブレットで成績は上がらない」という。タブレットが得意なのはモチベーションを引き上げること。そのモチベーションが継続し、子どもが頑張ってくれるから学力が向上するのだ。紙の教材であってもやれば伸びるのは同じだが、苦手な子、継続できない子ほど、集中して取り組めた時の伸びしろは大きくなる。タブレットが効果的といえるのはその部分である。

 

「教材を納品して終わりという商売ではなく、使い続けてもらってこそ価値のあるものを提供することに軸足を置いています。我々が提供しているのはタブレット用の学習アプリではなく、基礎学力や反復学習が身につく学習のメソッドなのです」(大生氏)

 

大生氏が目指すのは、ただ点数を取るという意味での学力をつけることに留まらない。

 

「家庭でも学校でも、今の教育の場はクローズドな環境であり、子どもはその狭い環境の中で影響を受け自分の評価を定めてしまいがちです。でも、外を見れば別の価値観で自分を評価してくれる人がいるかもしれない。オープンな学びの環境は、子どもたちの成長を飛躍的に高めてくれるはずです」(大生氏)

 

 日々忙しい中で児童一人ひとりに触れ合う学校の先生と同じく、大生氏もまた子どもたちの成長と将来の幸せを願うひとりの教育者なのだ。

教育への強い想いが込められた「つながるドリル」は子どもたちだけでなく教員にも変化をもたらすだろう。

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