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子どもたちが学ぶ面白さを感じる国語の授業へ。光村図書出版のデジタル教科書

2016年06月09日 記事

小学校や中学校のICT整備は、電子黒板や実物投影機などと併せてデジタル教科書が導入されるケースが多い。一斉授業で大型提示装置を使って拡大表示や資料提示が簡単にできるデジタル教科書は、今までの授業スタイルを変えることがないからだ。小学校においては、国語のデジタル教科書のニーズは高く、光村図書の教科書を使っている学校の40%以上で導入されている。本稿では、光村図書出版株式会社 ICT事業本部 普及促進部長 森下耕治氏と同社 デジタル開発部 コンテンツ制作課長 中山愛氏に、光村図書の国語のデジタル教科書について、その魅力を聞いた。

光村図書出版株式会社 ICT事業本部 普及促進部長 森下 耕治氏、 デジタル開発部 コンテンツ制作課長 中山 愛氏
光村図書出版株式会社 ICT事業本部 普及促進部長 森下 耕治氏、 デジタル開発部 コンテンツ制作課長 中山 愛氏

2005年から国語のデジタル教科書を発売。その経緯は?

 光村図書におけるデジタル教科書の開発は何がきっかけになったのか。その発端は2000年に内閣府から発表された「ミレニアム・プロジェクト」にまで遡るという。

 

ミレニアム・プロジェクトの中に位置づけられた「教育の情報化プロジェクト」では、2005年度を目標に全ての小中学校の普通教室に教師用と児童用のコンピュータと投影機を整備する計画が掲げられた。当時、教育の情報化を通じて「子どもたちが変わる」「授業が変わる」「学校が変わる」という状況を目指し、全ての小中高等学校などからインターネットにアクセスできる環境を実現する計画も進められた。

光村図書出版株式会社 ICT事業本部         普及促進部長 森下 耕治氏
光村図書出版株式会社 ICT事業本部         普及促進部長 森下 耕治氏

光村図書出版株式会社 ICT事業本部 普及促進部長 森下耕治氏は、「普通教室の中でコンピュータや大型提示装置が使われる状況をイメージした時に、教科書を大きく提示できれば、先生たちが授業の中で使いたくなるのではないかと考えた」とデジタル教科書の開発当時を振り返る。

当時はまだ、教科書を大きく拡大投影する発想や使い方が現場では浸透していなかった。デジタル教科書が実現すれば、教科書紙面はもちろんのこと、資料などが提示しやすくなり、なかでも小学校の先生に喜ばれるのではないかと思ったと森下氏は語る。

小学校は「焦点化・共有化」、中学校は「思考する・深く学ぶ」を重要視

 光村図書では同じ国語のデジタル教科書であっても、小学校と中学校とで、そのコンセプトや方向性は少し異なる。

 

小学校においては、クラス全員で教科書を読み進める活動が多い。そのような授業では、“教師が今、何を指示しているのか”、“どの部分について話しているか”といった活動を、挿絵を拡大表示したり、デジタル教科書の本文を指して「ここ!」と示したりして明確に伝えることができる。「小学校の国語のデジタル教科書では、教師の指示や児童の意見を教科書上に焦点化して、それを全員で共有する仕掛けが施されている」と森下氏は語る。

挿絵のみを表示することが可能。本文がない状態で物語を振り返ることができるなど使い方は工夫次第だ。

 一方で、中学校においては、生徒一人一人の目的や意図に応じて、文章を評価しながら読むことが求められるため、教科書の本文を抜き出して整理したり、登場人物の相関図をつくったりできるコンテンツが搭載されている。また、中学校では教科の専門性があるため、教師の指導内容や方法を制限しないコンテンツを多く搭載している。生徒に作業させたり、考えを交流させたりしながら授業を進めていくことができるように工夫した。

 

さらに、中学校では古典の単元でデジタル教科書が重宝されていると森下氏は語る。今までは教師が自分で資料を探したり、便覧を使ったりすることが多かったが、光村図書のデジタル教科書では、豊富な資料を揃えており、デジタル教科書でより深い学びができるというのだ。国語のデジタル教科書の開発に携わる中山氏は「生徒は本文の読解だけで満足できているわけではない。現場の先生から“もっと資料を増やして生徒の興味を掘り下げられるようにしてほしい”と要望があり、今年度は大幅に映像や写真資料を増やした」と語る。厳島神社まで行って琵琶法師の動画を撮影するなど、映像コンテンツは本格的だ。

光村図書デジタル教科書
光村図書デジタル教科書

デジタル教科書のメリットとは?児童・生徒はどう変わる?

 デジタル教科書を実際に活用する教師たちの反応はどうか。児童・生徒の変容についてどのような手ごたえを感じているのだろうか。

 

森下氏は、「教科書を中心に、分かりやすい授業、意見が交流する授業ができるようになったという感想が多い」と話す。特に小学校では、デジタル教科書を子どもが指し示しながら発表ができるので、明確な根拠のもとに自分の意見を話すことができる。結果として、子ども同士においても伝わりやすく、「子どもたちの互いの意見が噛み合うようになった」と手応えを感じている教師が多いという。

中山氏は、光村図書が新たな試みとして進めている学習者用デジタル教科書の検証でも、子どもの変容が見られると話す。紙の教科書に比べて、線を引いたり、消したりするのが簡単なデジタル教科書では、子どもたちが気づいた点などをためらうことなくマークできるのがよいというのだ。

光村図書出版株式会社 ICT事業本部デジタル開発部 コンテンツ制作課長 中山 愛氏
光村図書出版株式会社 ICT事業本部デジタル開発部 コンテンツ制作課長 中山 愛氏

「登場人物の気持ちが表れている部分に線を引きましょう」という活動に、紙の教科書では全員で確認した最後の正解しか線を引かなかったと中山氏は話す。しかし、学習者用デジタル教科書ではためらうことなく線を引いて考えてみたり、友達と見せ合って意見を聞き合ったりする活動が増えてきている。

その結果、書き込んだデジタル教科書の画面に、子どもの思考過程が明確に見えるようになった例もあった。検証に協力したある教師は「学習者用デジタル教科書に考えたことのかけらを残す子どもが出てきて、それを見つけ、ひろいあげることが楽しくなった」と語っている。

学ぶことが面白くなるように

 今後の展開について森下氏は、次期学習指導要領がアクティブ・ラーニングを重要視していることから、さらに児童・生徒が主体的に取り組める教材が求められるだろうと語る。学習場面、学習方法も多様化し、それに対応するようなデジタル教科書にしていかなければならないというのだ。

 

一方で森下氏は「国語科として力をつけることはもちろんだが、多くの子どもたちに喜んでもらえる教材を開発していきたい」と語る。国語科は紙やデジタルを問わず、思考力育成や人格形成にも影響を与えやすい教科であるため、その責任を感じながらも“勉強して面白かった”、“もっとお話を読みたい”と思えるような教材をつくっていきたいというのだ。中山氏も同様に「子どもたちの嫌いな教科のトップに国語が挙がっている。この状況を重く受け止めて、国語って面白いと思ってもらえる教材をつくりたい」と語る。

 

確かに、国語は子どもたち自身が達成感を味わいにくい教科である。しかし、その場では達成感が得られなくても、なぜか印象に残った話のひとつは誰にでもあるはずだ。森下氏は「小中学校の国語の授業で出合った作品のひとつが、大人になってからもどこか心の中に残り、その人を支える場合がある。デジタルであれ紙であれ、それぞれのよさを活かしながら、子どもたちの心に訴えかけるコンテンツをつくっていきたい」と語る。

(取材・文/神谷 加代)

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