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5年間のICT活用。挑戦から見えたものとは_佐賀市立若楠小学校【後編】

2016年06月06日 記事

ICTとは縁がなかった佐賀市立若楠小学校。しかし、同校では2011年に、タブレット、電子黒板、無線LANなどのICT環境が一気に整備されたのを機に、本格的なICT活用をスタートした。児童の思考力・表現力・判断力を伸ばすツールとしてICTを活用するとともに、同校が積極的に取り組んだのが協働学習だ。ICTのメリットを活かした協働学習とはどのようなものか。その効果はなにか。

若楠小学校の取り組みについて、同校の音成 隆校長と内田 明教諭に話を聞いた。

佐賀県佐賀市立若楠小学校 音成 隆校長、内田 明教諭
佐賀県佐賀市立若楠小学校 音成 隆校長、内田 明教諭

写真共有サービスを活かし、家族や地域も巻き込んだ協働学習

 若楠小学校ではICTを使ってどのような協働学習が実践されているのか。内田教諭が取り組んだ授業事例を紹介しよう。

5年生の家庭科では「スペシャルサラダづくり」をテーマに、児童が自分で考えたサラダづくりに挑戦した。でき上がったサラダは、各自のタブレット端末で撮影し、撮った写真をオンラインの写真共有サービス「Picasa」(ピカサ)にアップロードして情報共有。もちろん、外部からはアクセスができないよう制限されているが、内田教諭は保護者や授業に協力してくれる地域の人に対しては写真へのアクセスを可能にした。

児童がつくったサラダの写真を見て、感想やアドバイスをコメント欄に書いてもらい、そのフィードバックを活かして児童がもう一度サラダづくりに挑戦するという取り組みだ。

内田教諭は「ICTを使えば、家庭や地域とつながりやすく、学校外の人ともコミュニケーションを取りやすい。また、多様な情報が早く集まるメリットもあり、それらを基にグループで話し合いをすれば、児童同士の話し合いにも多様な視点が入る」とICTを活用するメリットを語る。

保護者にとっても、普段は知ることが難しい学校での子どもの活動を知る機会になるだろう。

実体験とICTを結びつけたクラス全員参加の協働学習

3年生の算数では、円の性質について学ぶ単元でICTを活用した協働学習に取り組んだ。この授業では、“クラス全員で玉入れをしよう”をテーマに、中央のカゴに向かってクラス全員が同じ距離から玉を投げるにはどうすれば良いかを考えた。

児童は、カゴを中心に等間隔の位置にマークをつけ、玉を投げる位置を決める。最終的にそのマークをつなげれば、円ができ上がる仕組みだ。

児童たちの一連の作業は、ICT支援員によって屋上から撮影された。児童たちは教室に戻ってから、早送りで再現された動画を見て、自分たちがマークした点がつながり、円ができる様子を振り返った。音成校長はこの授業について、「時間を超えて過去を振り返ることができるICTのメリットを活かし、実体験を伴った学びを実践することができた」と語った。

 

シミュレーションを使い、同じような方法で円の性質を学ぶこともできるが、この授業では実体験を通して、円の半径はどの位置からでも等しいことを体得できたことに価値がある。また、全体を俯瞰的に見ることで児童たちの作った大きな円の全体が見られ,さらに理解度も高まった。ICTがあるからこそできた協働学習だといえるだろう。

ICTを活用した協働学習の効果とは?

 音成校長はICTを活用した協働学習の効果について、「協働学習はICTがなくてもできる。しかし、ICTがあることで、より多様な学びを実現することができる」と語る。もちろん、教科の単元やねらいに有効な使い方でなければならないが、ICTは教師の引き出しを確実に増やしてくれるというのだ。 

そう話した上で音成校長は、「ICTの活用が直接的に影響しているわけではないが、結果としてICTを活用した協働学習では児童の話し合いを活性化させ、互いに協力することが増えている」と語る。要因としては、ICTを使うことで自由に試行錯誤できる環境が、児童のコミュニケーションを豊かにしているからだと音成校長は説明する。

調べること、表現すること、編集することなど、ICTを使えばさまざまな試行錯誤ができる。こうした手段を児童が持てることが話し合いの活性化や協力し合うことにつながるというのだ。

 一方で、ICT活用の効果を出していくためには、教師のやり方や発想を押し付けず、子ども目線が重要であることを音成校長は強調した。例えば、体育の授業でフォームをビデオに撮影する場合、教師は悪いフォームを改善するために撮影を行うが、子どもたちは、一番上手にできた自分を動画に撮りたがるという。

 

つまり、大人が考える使い方と、子どもが使いたいタブレット用途は、そもそも異なるというのだ。ゆえに、子どもたちが自然に使える環境の中で、どのような時に使いたいと思っているのかを注意深く見ていく必要があるといえるだろう。若楠小学校でもICTを活用した当初、この視点に気づくことができず、子どもの想いと違ったICT活用をしてしまっていたと音成校長は当時を振り返る。

 

協働学習など授業でICTを活用する際は、単元のねらいや学習活動の目的に合ったものでなければならない。

しかし、児童がICTを使いたいと思った時に、使える環境を用意しておくことも重要だといえる。

児童に委ねて使わせてみることで、本当に有効な活用シーンが見えてくるのかもしれない。

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