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協働学習を豊かにするICT活用とその効果_佐賀市立若楠小学校【前編】

2016年06月02日 記事

ICTとは縁がなかった佐賀市立若楠小学校。しかし、同校では2011年に、タブレット、電子黒板、無線LANなどのICT環境が一気に整備されたのを機に、本格的なICT活用をスタートした。児童の思考力・表現力・判断力を伸ばすツールとしてICTを活用するとともに、同校が積極的に取り組んだのが協働学習だ。ICTのメリットを活かした協働学習とはどのようなものか。その効果はなにか。若楠小学校の取り組みについて、同校の音成 隆校長と内田 明教諭に話を聞いた。

佐賀県佐賀市立若楠小学校
佐賀県佐賀市立若楠小学校

電子黒板、タブレット、無線LAN、一気に整備されたICT環境

 佐賀市立若楠小学校は、2010年に総務省が実施した事業「ICT絆プロジェクト」の採択校に選ばれ、ICT活用をスタートした。それまでICTとは無縁だった若楠小学校であるが、このプロジェクトに選ばれたことを機に、4年生以上の全児童・全学級担任に1人1台のタブレット端末が計250台配備された。加えて、それらすべての教室に電子黒板、実物投影機、無線LAN環境、全教科の指導者用デジタル教科書も一気に完備された。ICTが何もなかったところに、ある日突然、大規模なICT環境が生まれたような格好だ。

内田 明教諭
内田 明教諭

 

若楠小学校の内田明教諭は、「正直なところ、最初は“児童用タブレットってどうやって使うの?”という状態だった。誰も授業でどのように使うのか分からなかった」と当時を振り返る。あくまでもICTはツールにすぎないから、必要な時に使えばいい。しかし、そんな状態では、ほとんど誰にも使われず、「結果として1年目は活用率が低かった」と内田教諭は語る。

そこで2年目からは、校内研究にICT利活用を位置づけて“とにかくいろいろ使ってみよう”というところから再スタートを切った。内田教諭は「色々な事例が生まれるようになり、教員間で良い使い方や、使う必要がない部分について意見交換が活発になった」と語る。

 

3年目になってからは、タブレットや電子黒板などツールの研究ではなく、”協働的な学び”の研究にシフトした。この頃には、低学年にも指導者用デジタル教科書と電子黒板が整備されたため、1年生から6年生まで、特別支援を含む校内全ての教員がICTを活用した協働学習の研究を行うようになったというのだ。

 

その後は現在まで協働学習の研究を続けると共に、2015年度からは、全教師に対して1人1台のタブレットを配備。

教師1人1台環境で何ができるのか、その可能性を探っているという。

3年生以上でタブレット1人1台。日常的に活用できるICT環境

 ICTの導入から5年が過ぎた若楠小学校。現在は、3年生以上の学年でタブレットの1人1台環境を整備し、日常的にICTを活用している。

実際、どのような活用をしているのか。また教師や児童の様子はどうか。

 

内田教諭は「教師は毎日のようにタブレットを活用しており、なかでもカメラとビデオの使用頻度が高い」と話す。卒業式の練習風景や体育の授業でマット運動を撮影するなど、後から児童が振り返りをしやすいように動画を撮る機会が多いという。音楽では、合唱のパート練習の際に、それぞれのパートの音源をタブレットに入れて練習した。

タブレットの1人1台環境が整備された学年では、個別のドリル学習を朝学習の際に活用したり、図形の問題ではシミュレーションソフトを用いて試行錯誤をしたりする学習も行う。6年生を送る会では、5年生がプレゼンを用意し、披露する一幕もあった。

高学年については、教師の方から何も言わなくても「ネットで調べていいですか?」「写真を撮っていいですか?」と尋ねてくる児童も多く、わからないことや自分たちが考えたアイデアに対して、タブレットを課題解決に生かす行動が見られる。

音成 隆校長
音成 隆校長

 

若楠小学校の音成校長は、同校におけるICT活用について「最初は、教師の負担が大きかった」と語る。というのも、若楠小学校では、教師用タブレットと児童用タブレットが同時に導入されたからだ。一方で、児童はタブレットに慣れるのが早かった。今では、児童は紙の良いところ、タブレットが便利なところを見極めるようにもなり、状況や目的に応じてメディアを選ぶことができるようになったと音成校長は評価している。

教員が共通認識を持ち、児童のICT活用を指導できるのが強み

 若楠小学校では、児童の思考力・表現力・判断力の育成を目指し、授業におけるICTの有効な活用について、校内研究会を積極的に実施している。また、若楠小学校独自の情報リテラシーや情報モラル指導のカリキュラムを作成しているのも特徴的だ。

 

学年に応じてどのようなICTスキルを身につける必要があるのか。育成すべきICTスキルを学年ごとに設定し、教員が共通認識を持って、児童の情報リテラシー育成に取り組んでいる。例えば、児童は肖像権があることを知らずにネット上の写真を使ってしまうことが多い。

写真を使う時にはどのようなルールがあるのか、タブレットを日常的に使う中で学んでいけるように教師が指導をする。

 

一方で内田教諭は、「教師が先にルールを決めてしまい、“これはダメ、あれはダメ”という環境でタブレットを使わせるのは避けたい」と語る。むしろ、子どもには適度な自由を与えて、子どもたちが失敗したり、自分の判断を試したりすることができる場が必要だと内田教諭は語る。問題なくICTを活用できることが良いことではない。子どもたちの将来にとって必要な力は何か。その問いかけの中でICTを活用することが重要であるといえるだろう。

 

後編では、若楠小学校の協働学習の授業例について紹介する。

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