第3回、第4回でタブレットの種類や教員用コンピュータについて学んだわか子。とはいえ、普段からスマートフォンは使っているものの、タブレットを実際に触ったことがないわか子にとっては、本当に自分が授業で使えるのかどうか不安…。そこで、だったらものは試しと思い、教育委員会にお願いしてタブレットを借り、授業をやってみることにしたのです。ところが、新しいチャレンジを始めたわか子に降りかかった次なる課題が、「Wi-Fi」だったのです。

Wi-Fiって何?

わか子:としお先生!! 教育委員会からタブレットをお借りしたまではよかったのですが、ネットにつながらないのです~。助けて!

としお:そりゃそうだよ~。Wi-Fiにつなげないとネットは使えないよ。

わか子:わいふぁい、ですか…。うーん、私、そもそもネットとか回線とか、正直、よくわかりません。ウチの学校にはその「わいふぁい」がないのですか? パソコン教室のコンピュータでインターネットが使えるから、タブレットでも使えるのかと思っていました。

としお:わか子先生はタブレットを使う前に、Wi-Fiがどういうものかを知っておいたほうがいいね。

「Wi-Fi(ワイファイ)」とは、ケーブルを使わず無線通信を利用してデータをやりとりできる仕組み(規格)で、一般的には「無線LAN(Wireless-Local Area Network)」とも呼ばれています。パソコンやスマートフォン、タブレット、テレビ、音楽プレイヤーなどWi-Fiに対応した機器であれば、ケーブルなしで機器同士を接続することが可能です。

教員用コンピュータを用意しよう!

Wi-Fiはアクセスポイントと呼ばれる機器が設置された環境において、電波が届く範囲で利用することが可能です。一般家庭やオフィスなどの屋内はもちろん、近年は駅や地下街、街の店舗、空港などさまざまな場所でアクセスポイントが設置されるようになり、スマートフォンやタブレットなどから、いつでもネットにアクセスしやすいインフラ整備が進められています。

わか子:でも、としお先生。Wi-Fiとかネットとか、正直いって何だか心配です。個人情報漏えいのニュースも聞きますし、本当に大丈夫でしょうか? 学校でWi-Fiを使うのって、そんなにメリットがあるのかなあ?

としお:おお、いい質問だね! 確かにわか子先生のいうとおり、パスワードやIDが盗まれたり、通信内容を覗かれたりすることも時にはあるよ。でも、こうしたトラブルは適切なセキュリティ対策をしておけば、十分に防げるものだ。それよりも、Wi-Fiは先生方や子どもたちにとって大きなメリットがあると思うよ。実際にどのようなメリットがあるのか、総務省に聞きに行ってみようか!

Wi-Fiのメリットを活かした教育活動とは?

そんな経緯で総務省を訪れたとしお先生とわか子先生。同省は情報通信や地方活性化などさまざまな分野を担当しており、教育分野でもつながりの深い機関です。総務省 情報流通行政局 情報通信利用促進課長 御厩祐司氏にWi-Fiのメリットについて話を聞きました。

総務省 情報流通行政局 情報通信利用促進課長
御厩祐司氏

御厩さん:Wi-Fiのメリットとしてまず挙げられるのは、配線(ケーブル)から開放されることです。コンピュータやタブレット、プリンタなど機器どうしをケーブルでつなぐ煩わしさがなくなりますし、児童生徒がつまずいたりすることもなく、メンテナンスも楽です

わか子:確かに、それはメリットですね! 私、ケーブルをつなげたり配線がごちゃごちゃしているのって、どうも苦手なもので…。

御厩さん:ケーブルが不要になれば、電波が届く範囲で自由に移動して、機器をネットワークにつなぎながらアクティブに活用できます。例えば、個別、ペア、グループなど机のレイアウトを自由に変えながら、ネットを使った協働学習や調べ学習などをスムーズに展開できます。先生が自由に机間巡視しながら児童生徒のノートを撮影し、電子黒板や各自のタブレットに転送して共有することなども簡単です。教室以外でも、例えば図書室にWi-Fiを完備し、室内の好きな場所でネット情報と紙の本を比較・対照できるようにしている学校もあります

わか子:なるほど! ケーブルがなくなると、子どもたちや先生の「可動域」が広がり、学びがより自由に、活動的になりますね!

御厩さん:あと、Wi-Fiは携帯電話回線に比べ、高速・大容量で通信を行うことが可能です。写真や音声が含まれた教材を児童生徒に配布したり、回収したりするなど、データのやりとりが容易になります。また、タブレットを導入すると、カメラや録音機能を使うシーンが増えますが、Wi-Fiを使えば、画像や音声データを共有し、共同で編集してスライドにまとめることも簡単です。プレゼンテーション活動が活発になりそうですね。

わか子:そっかぁ。逆にいえば、タブレットのメリットは、Wi-Fiと結びつくことによって最大限に発揮できるのですね。

このように学校でWi-Fiを使うメリットは、機器同士をケーブルでつなぐ煩わしさがなくなり、教師と子どもとの間でデータのやりとりがスムーズに行えたり、多様な情報に触れられたりすることなどです。これにより、主体的、協動的で深い学びやコミュニケーションが促進されるなど、大きな教育的効果が期待されます。

学校でWi-Fiを使うメリット

Wi-Fi環境の整備状況と構築する時の注意点とは?

わか子:すでにタブレットを導入している学校はすべて、Wi-Fi環境が完備されているのでしょうか?

御厩さん:そうとも限りません。コンピュータ教室のパソコンがタブレットに置き換わっただけで、Wi-Fiが整備されていない学校もあります。これでは宝の持ち腐れになりかねません。政府では、「第2期教育振興基本計画」において、平成29年度までに普通教室の無線LAN整備率を100%にすることを掲げており、地方財政措置もしています。これをもとに、各自治体で整備を着実に進めていただきたいですね

教育機関におけるWi-Fi環境整備の全体的な傾向としては、ここ数年増加傾向にあります。文部科学省が発表した「H27年度 学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果(概要)」によると、全体的に見れば、普通教室の無線LAN整備率や超高速インターネット接続率は上昇傾向にありますが、自治体間で大きな格差が生じています。

御厩さん:さらにWi-Fiには、災害に強いという特性もあります。災害時に固定電話や携帯電話が利用しにくい状態になっても、Wi-Fi経由でインターネットにアクセスすることにより、情報のやりとりを継続的に行うことが可能です。学校の多くは避難所に指定されていることから、Wi-Fiの整備は、地域の防災力を強化するうえでも大変重要です

わか子:なるほど~~。Wi-Fiは地域住民にとっても重要なインフラなのですね。

御厩さんWi-Fiは、教育だけでなく防災面でも大事な役割を担っており、安全かつ確実につながるように構築していくことが不可欠です。そのためにも、ICTのプロによく相談しながら整備を進めてください。ただし、Wi-Fiを使って、どのような教育活動を展開したいのかという点は、あらかじめ先生方のほうでしっかりと考え、共通認識を持っておいていただきたいですね。

わか子:そうですね。インフラ整備は自治体が行うわけですが、それを活用していくのは私たちですものね!どう使いたいのか、先生どうしでしっかり話し合っていきます!

「Wi-Fiってなんだかよくわからない…」と話していたわか子。総務省へ伺って、教育機関でWi-Fiを使えるメリットやそれを活用した教育活動の話を聞いて、タブレットを授業で使う具体的なイメージが広がってきました。次回のわか子は、ここからさらに前進し、“クラウド”について学んでいきます。

<プロフィール>

わか子:小学校教員3年目。教員という職業に少し慣れてきたところで校長先生からICT担当に任命される。子どもたちのためにICT環境を整えようと奮闘中。先日、体力作りで始めたテコンドーの大会に出場。実家の母との電話が長引き、決勝戦は不戦敗。準優勝となった。

としお:小学校教員25年のベテラン。趣味はコンピュータ製作で、ICTにも詳しく、各地に専門家の知り合いがいる。わか子先生の影響を受けてホラー小説を読むようになり、最近何かを感じるようになった。

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